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ドキュメンタリー『沈没家族 劇場版』紹介
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3/20のレイバーネットTVで紹介する映画です。(笠原眞弓)

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穂子さんは今も沈没家族をやっている

ドキュメンタリー『沈没家族 劇場版』 監督:加納土 『沈没家族』は、見た後もそれ自身が「成長する」感じがした。そんな映画は、稀である 。はじめてかもしれない。  加納土監督の大学卒業制作だった。たまたま幼いころに保育をしてくれていた人に出会 ったことがきっかけで、自分が全く覚えていない時期のことに関心を持ち、卒業制作のテ ーマに選んだと本人が何かに書いていた。 私はなぜか卒業作品を、そして少しバージョンアップしたものを見る機会があった。さら に今回の劇場版である。見るたびに内容が充実し、「そこのところ知りたかったのよね」 的に満足度が上がった。ところが、そればかりではなかった。見た後にも妙に引っかかる のである。 見ているときから、これはなんだ?大丈夫かな?とかいろいろ頭のなかをめぐっていた。こ れは、一人の人間の育ちの新しい形態であり、それを育った本人が検証していくのだ。 加納土君の母親、加納穂子さんは土君の父親と別れ、生活費を稼ぐための仕事をする傍ら 、専門学校に通いたい。その間、誰かに土君を見てもらいたいと思う。そして、彼女は電 柱に「保育者求む」の張り紙を張り巡らす。保証するけど、私はそういう状況になっても 絶対にそんな張り紙はしない。 住所氏名電話番号丸出しである。でも、穂子さんはした。彼女にとっては、自然のことだ ったようだ。そこが肝なのでだ。 「沈没家族」の始まりである。父親は離れて暮らす週末に会う「おじさん」だった。保育 者は意外と若い男性が多かった。克明な記録ノートが穂子さんと保育者、そして彼ら同士 をつないでいた。 でも「大丈夫かな」はぬぐえない。どうして今の、いろんな意味でとても大きい感じのす る「加納土」君に育ってきたのか謎だった。 ある場面が謎を解いたのだ。保育者の一人が当時を述懐して「どんなに楽しく遊んでいて も、穂子さんが帰ってくると、自分らには見向きもせず母親のところにすっ飛んでいく」 と。母親として、この言葉は当然だが最高だ。その安心地帯があるからこそ、なのだ。そ してもう一つ、穂子さんは言う「一人で育児をすると支配につながると思った」と。私も 母親としてグウの音も出ない。思わず自分の子育てを振り返ってしまった。 この劇場版を見たのは1月下旬である。その後、道を歩いていてもボーっと電車の窓から 外を見ていても、さまざまな場面が浮かんでくる。そして、見た直後はわからなかったこ と、別の解釈をしていたことが、ある時「つまりこのことだ」と気が付いたりする。それ が、最初に書いた「成長する映画」ということなのだ。 例えば、ある時突然「穂子さんは今も沈没家族をやっている」と閃いた。それは、土君が 9歳の時穂子さんが八丈島に移住したのだが、ごく最近の映像に、ご近所が集まって食事 会のようなことをしているシーンがある。それを思い出したとたんに「あゝ、なぁんだ、 ここでも沈没家族、しているじゃない」と。 チェックどころ満載の見た後もいつまでも楽しめる映画なのだ。 4月6日よりポレポレ東中野ほか、全国順次公開 追記:3月20日レイバーネットTVで、監督と指導教授の永田浩三さん、木下昌明さんのト ークがあります。 ・日時/放送時間  2019年3月20日(水) 19.30一20.45(75分) ・視聴サイト http://www.labornetjp.org/tv ・配信スタジオ スペースたんぽぽ(東京・水道橋) ギャラリー開場19.00(どなたでも歓迎)映画紹介は7時40分ごろ http://vpress.la.coocan.jp/tanpopotizu.html

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