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原告、東部労組、弁護団の頑張りに心から敬意/メトロコマース高裁判決
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原告、東部労組、弁護団の頑張りに心から敬意〜メトロコマース高裁判決

   北健一(ジャーナリスト)


 *写真=報告集会で「勝利への道」を歌う原告たち

一時金をかちとった大阪医科歯科大裁判・大阪高裁につづいて、今度はメトロコマース裁判で退職金がかちとられました。原告、東部労組、弁護団の頑張りに心から敬意を表します。胸が熱くなります。

重要な前進ですが、私は「不当判決」とまでいうのはどうかなとも思いますが、手放しでは喜べません。この裁判は、東京メトロの子会社メトロコマースに雇用され、地下鉄の駅売店で契約社員Bとして働いてきた女性たちが東京東部労組に入って団交で格差是正を求めつつ、同じ仕事をしている正社員との賃金、一時金、手当等の格差是正を求めて起こしたものです。

判決が命じた「退職金の4分の1支払い」とは、正社員が1000万円なら250万円払え、という趣旨ではありません。正社員よりずっと低い賃金を基礎に、正社員と同じ計算式で計算して算出した額の4分の1、ということです。まったく同じ仕事をしている人について賃金格差を容認した上、低い賃金をベースに計算した額からさらに75%カットすることが法の求める「不合理でない労働条件」だというのは理解に苦しみます。判決文は未読ですが、「なぜ4分の1かの理由」は記載がないと聞きました。

基本給・一時金差別を容認した高裁判決は「有為な人材確保論」に立っています。有為な(役に立つ、才能のある)人材を正社員として確保するため、非正規に払わない一時金を正規にだけ払うのは「合理的」だというのですが、「正規だけが有為だ」との思い込みに客観的根拠はなく、この裁判にはまだ使えないものの「同一労働同一賃金ガイドライン」の趣旨にも反します。ちなみに、ハマキョウレックス事件・最高裁判決も「有為な人材確保論」は採用しなかったと、16日の権利討論集会で緒方桂子先生から聞きました。「有為な人材確保論」は定着した規範とはいえず、むしろ克服されるべき古い考え方といえます。

非正規に一時金支払い(6割)を命じた大阪医科歯科大事件とメトロコマース事件はともに「雇用管理のコースの違いを理由にした格差」を問うパターンなので、最高裁がこのパターンについて、2つの裁判の上告審で統一判断を示すとの見方も出ています。どっちに転ぶかわかりませんが、その面からも、今回の「一歩前進」判決は、まだファイナルアンサーとは考えにくいようです。

一歩前進が貴重なのは言うまでもありませんが、負けた部分も、たたかいがあったからこそ浮き彫りにされた不条理の壁であり、今後の社会的課題でしょう。多くの先人の努力によって肌の色や性別による差別が許されないことが規範として確立した(現実にはまだまだ差別はありますが)ように、雇用形態による差別も必ず打ち破りたい。この努力が、メトロの原告たちのような勇気ある当事者と、それを支える輪によって一歩ずつ進んでいることを感じつつ。
(同氏のFBより)


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