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〔週刊 本の発見〕『考えるとはどういうことか―0歳から100歳までの哲学入門』 | ||||||
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対話の中で当たり前を疑う●『考えるとはどういうことか―0歳から100歳までの哲学入門』(梶谷真司、幻冬舎新書)評者 : 渡辺照子
それに「哲学入門」といっても、難解な理論を読み解くのではない。本当の意味で自分の頭で考えるということなのだ。となると学校教育があるではないか、との指摘も受けそうだが、著者は異論を唱えている。学校では「個々の場面で必要なルールを身に付け、その中で決まったことに適切な答えを出すことだけ」だと言う。「問い、考え、語り、聞く」という対話的な意味での「考える」ことではなく、その後の人生の会社等でも、私たちは驚くほどにその機会がなく、学ばないとしている。 では、なぜ考えることが重要なのか。著者は「私たちは考えることで自由になれる」からだと端的に述べている。そして、本書でいう「対話」によって他の人と一緒に自由になれるのだという。 私はこの点に強く惹かれた。労働運動の究極の目的はみんなで自由になることだからだ。私が取り組む労働問題の昨今の主要テーマは、多くの人といかにつながれるか、仲間になるか、ということだが、それには何らかのコミュニケーションが欠かせない。かつてはオルグ、最近はコミュニケーション・オーガナイジングが労働組合運動の必須のツールとなっている。そこには相手を「労働組合員にさせる」つまり「組織化する」という明確な目的がある。だが、私はその目的にこだわることなく、もっと本質的なコミュニケーションを求めていた。本書にある「対話の中で当たり前を疑い、自分の考えや見方を深め広めたりする哲学的体験」がそれである。それが結果的に仲間との自由の獲得になれば、社会もきっと変わる。 著者が対話で大切にしているのは参加者の多様性である。私としてはそこに対等性を見出す。著者は一言も著していないが、私の天敵、マンスプレイニングへの徹底的な回避も示している。対話において提示されるルールのひとつに「知識でなく自分の経験に即して話す」があり、それが多様性を保障する。一方で、知識に基づく話は自分の優位性を示すものだと指摘している。(これは私のもうひとつの天敵、マウンティングのことだ。)知識による話は「一般の人よりは専門家」が発言権を握り、他の人はただ聞くだけになりやすいという。おお、この問題提起は私がずっと言い続けてきた「労働問題の主人公は専門家ではなく労働者自身だ」に呼応するではないか。他方、経験に基づき話をすれば、年齢、性別、学歴等に関わらず対等に話ができるというのだ。経験はその人固有のものだからだろう。ここに私は民主主義の原型であり、完成型を見る。 「問い」の重要性も何度も語られる。「問い」が深い思考を生み、相手との真の対話をもたらす。対話の中では自分の疑問がきちんと受け止めてもらえることが大事なのだ。だからルールとしてはさらに「何を言ってもいい」「人の言うことに否定的態度を取らない」も設定されている。その中での疑問の共有化が人間関係を生むのだ。これらは、人とのつながりの重要条件ではないだろうか。 本書は具体的な哲学対話の実践方法も示してくれる。ワークショップ等をやっている人ならいつでも実行できる。つまり理念とノウハウの両方が書かれているお得版の書籍だ。 こういうことを言ってはお叱りを受けるかもしれないが、私は「古参の活動家」に「そんなことも知らないのか」と言われたことがある。それから私は二度とその人に相談はおろか、まともな対話を試みる事はなかった。自分もそのようなことのないよう自省しなければならない。 *「週刊 本の発見」は毎週木曜日に掲載します。筆者は、大西赤人・渡辺照子・志真秀弘・菊池恵介・佐々木有美・佐藤灯・金塚荒夫ほかです。 Created by staff01. Last modified on 2019-02-15 22:09:28 Copyright: Default |