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アリの一言:辛淑玉さんの「亡命」の危機は絶対に傍観できない
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辛淑玉さんの「亡命」の危機は絶対に傍観できない

2018年03月05日 | 民主主義・人権

 
 東京MXテレビが「ニュース女子」で沖縄の基地反対運動をまったくのデマで中傷・攻撃した問題で、「扇動する黒幕」などと名指しされ右翼から標的にされている辛淑玉(シンスゴ)さん(在日コリアン3世、人権団体「のりこえねっと」共同代表)が、ヘイトクライムから身を守るため、ドイツに事実上亡命せざるをえなくなっていることが、4日の沖縄タイムスの報道(写真)で分かりました。

 同番組に対しては、辛さんがBPO(放送倫理・番組向上機構)放送人権委員会に人権侵害を申し立て(2017年1月27日)、同放送倫理検証委員会が「重大な放送倫理違反があった」と断定(同12月14日)、MXは謝罪も訂正もしないまま「ニュース女子」を今月末で終了すると発表(1日)しました。どちらに正義があるかは明々白々に決着がついています。

 しかし、問題はこれで終わったわけではありません。

 辛さんが沖縄タイムスに寄せた手記(全文)を同紙(4日付)から紹介します(太字は引用者)。

 < この間のMXの対応はひどいものでした。彼らは、一度として私に謝罪をすることも、ありませんでした。放送事業者としての責任を全く理解していないからです。これは番組を制作したDHCグループの問題ではありません。

 日本で進行している在日に対する迫害は現在、言論やメディアによる段階から、特定のターゲットに対する物理的なテロの段階へと移りつつあります。2月23日には、朝鮮総連に対する極右の銃撃事件が発生しました。

 私がドイツに逃れたのは、極右テロからの自衛であり、事実上の「亡命」です。旧大日本帝国は父祖の地を奪い、MXは私のふるさとを奪いました。帰れるところは無いのです。

 虚偽報道でその原因を作ったMXは1年以上もたって、DHCに逃げられ、番組中止を発表する。どれほどズレているのか、と言わざるを得ません。

 極右テロは、メディアがまずターゲットを指さし、極右のならず者が引き金を引く形で連携的に起こるのです。組織的でなくても、観念の連携があればテロは起こります。IS(イスラミックステート)の宣伝サイトをみて共鳴した人物がテロを起こすのと同じです。

 さらに、問題が深刻であるのは、メディアがターゲットを指さしたとき、テロを実行するならず者たちは、その情報の真偽をほとんど確かめないことです。こうして、フェイク情報がテロを誘発する。

 だから、たとえBPOがこの番組をフェイクで、辛淑玉に対する人権侵害だと指摘してくれても、極右のならず者たちがテロを思いとどまるという保障はない。まして、このフェイク映像は、この時点でもまだネットに垂れ流されている。きわめて危険な状態なのだと思います。

 「まさか自分は大丈夫。今回のできごとは辛淑玉という特別で例外的なケースに起こっていることだから」。そういう認識をもっている人はまだまだ多いように思います。
 
その壁もあっという間に超えると思います。>

 辛さんの恐怖・怒りはいかばかりでしょう。
 辛さんの指摘の通り、フェイク情報とテロの関係はけっしてひとごとではありません。「ナチスが最初共産主義者を攻撃したとき、私は声をあげなかった。私は共産主義者ではなかったから…社会民主主義者…労働組合員…そして、彼らが私を攻撃したとき、声を上げる者は誰も残っていなかった」というニーメラー牧師(ドイツ)の言葉を思い出します。最初に標的にされるのは、先頭に立ってたたかっている人びとです。

 在日朝鮮人などに対するヘイトスピーチ、ヘイトクライムと私たちの関係はもっと深刻です。なぜなら、ヘイト(民族憎悪)を生んでいる土壌は他民族・マイノリティーを差別する日本社会にあり、私たちはその主権者だからです。

 私たちは、右翼テロや国家権力による言論弾圧・思想信条の自由侵害を受ける被害の側の一員であると同時に、帝国主義・植民地支配の歴史を反省し教訓化することができていない加害の国の主権者として、辛さんの苦境・危機を絶対に傍観することはできません。


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