〔週刊 本の発見〕『ここからセクハラ!ーアウトがわからない男、もう我慢しない女』 | |||||||
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毎木曜掲載・第87回(2018/12/13) セクハラオヤジを徹底的に分析●『ここからセクハラ!—アウトがわからない男、もう我慢しない女』(牟田和恵、集英社)/評者:渡辺照子今年の流行語大賞のひとつに「#MeToo」が選ばれた。性被害やセクシュアルハラスメントにあった当事者が声をあげ、それに連なる人々の意思を表すポジティブな言葉だ。思えば平成最初の流行語は「セクシュアルハラスメント」だった。私は天皇制反対論者だし、元号に格別の感慨を持つ者ではないが、30年も経って、いまだにこの問題がはびこっていること、被害者が声を上げることの難しさを思うと暗澹たる思いだ。 毎週のようにセクシュアルハラスメントをテーマとした集会やシンポジウムが開催されているが、「日本では海外のように盛り上がらない」と言われてしまっている。セクシュアルハラスメント問題の当事者、中心になって果敢に活動する女性のせいではないのにその女性たちに責任があると語られているようで、その筋違いの「批判」は、セクハラ問題の二次被害の一種だと思えて仕方がない。要因は明らかだ。男性の側に当事者意識が希薄なせいだ。なんでも海外が良いという「ではの守(かみ)」になるつもりはないが、例えばイタリアでは「これ以上共犯者にならない」スペインでは「沈黙して共犯者になるのはもうやめだ」という運動のスローガンが男性の側から発信されていると本書で紹介されている。ところが、社会的に発信力が女性よりはあるはずの男性からの声が、日本では何ら発せられないことが、何よりの証左ではないか、残念だが。 それに流行語大賞まで受賞しながらも、盛んにイベントが開催されながらも、出版状況がそれに呼応していない。出版業界は文化事業であるが、それ以前にビジネスだ。旬のネタであり、売れるとあれば二番煎じでも柳の下のドジョウでも刊行するはずだが、驚くほどセクハラをテーマにした書籍の近著が少ない、というより皆無ではないだろうか。私が推測するに「セクハラネタは騒がれるほどには売れない」との上層部の判断があるのではないだろうか。恐らく、その「上層部」には男性原理が働いているのかもしれない。しかし、売るべきなのだ、読むべきなのだ。書評で「読むべし」と主張するほど無粋なことはないのをわかって、今回はそれを言わせてもらう。 各章のフレーズがどれもキャッチ―だ。「『美人だね』の何が悪い?」「天気の話しかできないじゃないか!」等、セクハラオヤジ(とあえて言う)の言い草を具体的に取り上げ、徹底的に分析・反論している。セクハラ発言の背後には、男性の支配欲があるという。会社で「出世」すると周囲から迎合され、相手の内心に配慮しなくなるのだ。一頃流行った「忖度」。あれはあくまで目下が目上におもねる片務的な行為だ。それを偉くなった男性は、目下の「女性」「部下」にはしなくなる。牟田さんは「空気を読むことに長けている日本のビジネスマンがなぜ部下の顔色を読まないのか」と鋭く指摘しているが、「上には媚びる、下には威張る、見下げる」のがお得意な「日本のビジネスマン」(と、あえて偏見に満ちた言い方をさせてもらおう。)だから、当然のことなのだ。 女性を性の商品価値の有無でしか評価しない、対等なビジネスパートナーとみなさないから、相手の容姿か若さにしか共通のテーマを見出せない貧困な発想なのだと、私なら一刀両断したくなる。だが、牟田さんは実に粘り強く、微に入り細に穿って懇切丁寧に「男性の側に立って」セクハラのおかしさを説明してくれている。 一方で、女性たちがいかにセクハラの加害者の男性から、その行為を受けながらも、相手のプライドを傷付けずに回避し、サバイバルしているかの具体的なケースを列挙している。「あるある!よくぞ言って下さった!」という女性たちの最高レベルの共感を得るだろう。その記述を男性はいかにとらえるか、感想を聴きたいものだ。 最後にまたもや野暮を承知で言わせてほしい。「一人でも多くの男性、企業、団体、必携の書、必読の書だ」と。 *「週刊 本の発見」は毎週木曜日に掲載します。筆者は、大西赤人・渡辺照子・志真秀弘・菊池恵介・佐々木有美・佐藤灯・金塚荒夫ほかです。 Created by staff01. Last modified on 2018-12-13 18:46:36 Copyright: Default |