周到に準備されていた「談合」への道〜リニア入札談合の真犯人は政府ではないのか?/安全問題研究会 | |
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2014年10月、全国新幹線鉄道整備法に基づいて事業計画が認可されたリニア中央新幹線建設工事は、大林組、鹿島、清水建設、大成建設の大手ゼネコン全4社関係者が東京地検特捜部から任意の事情聴取を受けるとともに、ゼネコン各社も強制捜査を受ける事態に発展した。
だが、認可以前からリニアの問題点を追ってきた安全問題研究会は「やはり来たか」という思いであり驚きはない。それどころかこの事態は起こるべくして起きたものだといえる。大手ゼネコン4社すべてに均等に仕事を割り振ることは事業認可当初からの既定路線であり、むしろこの談合はそれに沿って政府が周到にお膳立てした官製談合なのではないだろうか。もちろん現時点で確証があるわけではない。だが単なる憶測では片付けられない官製談合の「状況証拠」ともいうべき情報を当研究会は得ている。今日は、その驚愕すべき情報を皆さんにお伝えしておきたい。 ●WTO「政府調達協定」からの突然のJR離脱 1995年、それまでのGATT(関税と貿易に関する一般協定)に代わる国際間貿易ルールとして、各国間合意によってWTO協定(世界貿易機関を設立するマラケシュ協定)が発効した。そのWTO協定に基づいて締結された関連協定のひとつに「政府調達に関する協定」がある。加盟国の中央政府や地方政府、政府関係機関などが基準額以上の高額の契約を締結する場合、外国企業の参加も可能となるような形で国際競争入札により業者選定しなければならないことを定めたものだ。協定の内容を詳述する余裕はないが、基準額は物品調達・役務調達・工事など契約の種類ごとに決められており、工事の場合、それは日本円で20億円である。協定の適用対象となる「政府関係機関」も、加盟国間で紛争にならないよう、協定の附属書に名称を列挙する形で具体的に取り決められている。言うまでもないが、JR各社は旧国鉄を引き継いだ企業であり、民営化後もしばらくは国が全額を出資する国鉄清算事業団(その後の日本鉄道建設公団〜現在の独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構)が全株式を保有していたことから、政府関係機関として協定の適用対象になっていた。 このうち、JR東日本、東海、西日本の本州3社に関しては、2001年までに鉄建公団が保有していた全株式を放出し、完全民営化された。政府関係機関でなくなった本州3社は、本来であればこの時点で政府調達協定の適用から除外されるはずだった。だが、国内(域内)企業の日本の鉄道工事への参入を狙っていた米国、カナダ、EU(欧州連合)がWTOに対して異議を申し立てたため、JR本州3社は完全民営化後も政府調達協定からの離脱ができない事態に陥った。米国とカナダは2006年に異議を撤回するものの、EUはその後も撤回しなかった。異議申立の撤回に向けた日本政府からEUへの再三にわたる働きかけも実らず、JR本州3社の政府調達協定からの離脱交渉は暗礁に乗り上げたかに見えた。 ところが事態は急転する。2014年10月28日になって、EUが異議申立の撤回に同意したのだ。完全民営化から13年も経過して、ようやく「純粋な民間企業」と認められたJR本州3社は政府調達協定の適用から除外。20億円以上の大規模工事を発注する場合であっても、外国企業の参加も可能となるような形での国際競争入札により業者選定を行う必要がなくなったのである。総額9兆円ものビッグプロジェクトを推進する政府・JR東海にとって最大の障害が取り除かれたのだ。 日本政府はこれを「EUに対する長年の外交上の働きかけが結実した結果」(2014年10月28日付け外務大臣談話)と自賛した。だが、ここでもう一度皆さんには思い出してほしい。リニア中央新幹線計画が事業認可されたのは2014年10月17日。EUによる異議撤回の、わずか11日前の出来事だ。 あまりにも出来すぎたタイミングといえる。これを偶然の一致と思えるほど当研究会はお人好しではない。どこをどう見ても、外国企業を排除し日本企業だけで「談合」できるよう、日本政府が政府調達協定からのJR東海の離脱を待ってリニア中央新幹線の事業認可をしたと勘ぐられても仕方のないタイミングだ。談合へのレールは最初から敷かれていたのではないか。 李下に冠を正さずということわざもある。もしそうではないと言うのであれば、なぜ政府はわざわざ痛くもない腹を探られるような時期を選んで事業認可に踏み切ったのか。政府にはそのことに対する説明責任がある。そうでなくても、当研究会の活動拠点である北海道では、JR北海道が10路線13線区を「自社単独では維持困難」と公表、上下分離や路線廃止〜バス転換も含めた地元との協議が始まろうとしている。実際のところ、JR北海道が維持困難と表明している路線を守るためには年に数百億程度の国の支援があれば足りる。地方の生活のための路線が危機を迎えているのに見向きもせず、それより2桁も多い金額をリニアに投入、今でも十分便利なところをさらに便利にして地域間格差を広げた挙げ句、ゼネコンが談合でつり上げたリニアの建設費のツケを利用者が支払わされるのでは踏んだり蹴ったりだ。当研究会は、推進派からの反発も覚悟で今こそはっきり言う。「こんな馬鹿げたリニアはいらない」と。 (文責:黒鉄好) Created by zad25714. Last modified on 2017-12-19 01:20:18 Copyright: Default |