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ふたたび、文化のないたたかいなんてありえない!/2017「本の発見」を振り返る
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毎木曜掲載・第37回(2017/12/28)

ふたたび、文化のないたたかいなんてありえない!〜2017「本の発見」を振り返る

     志真秀弘

「本の発見」は、月二回ホームページ掲載で、2月にスタートした。その後、6月から週刊とし、現在まで、36回・36冊の本を紹介。レイバーネットTVは、昨年12月「2016わたしの1冊」でスタート。今年は「No.2 流言飛語の時代をみつめる」(4月)、「No3 2017 わたしの1冊」(11月)と2回「本の発見」を放映した。

 振り返ると、そこから、いくつもの大切な問題が浮かび上がってくる。以下カッコ内は書評した本のタイトル。

 第1は、女性と労働、生活の問題とくに保育所のことなど。(『子どもたちの階級闘争』『ワンオペ育児』『保育園を呼ぶ声が聞こえる』 『女たちの避難所』『N女の研究』『フェミニズムはみんなのもの』)

 第2は、労働運動の在り方――労働組合組織が、現在の労働形態の変容(非正規労働者の急増に対応できていないことなどからくる諸問題。(『劣化する雇用』『チャヴ』『労働者階級の反乱』『ユニクロ潜入1年』『市民政治の育て方』)

 第3は、日本の支配者階級のゆがんだ歴史認識批判。(『9月東京の路上で』『50年目の日韓つながり直し』『知らなかったぼくらの戦争』)

 第4は現代資本主義、とりわけ、資本のグローバリゼーションとそれを推進する新自由主義の引き起こす問題の指摘・解明。(『時間かせぎの資本主義』『これがすべてを変える』『AIの遺伝子』『スノーデン日本への警告』『戦争がつくった現代の食卓』『政府は必ず嘘をつく』『これからの日本、これからの教育』)

 そして、文学・芸術分野の仕事も取り上げた。(『俳句世がたり』『岩場の上から』『ペンとカメラ』『奈良少年刑務所詩集』『軟骨的抵抗者』『誰か故郷を想はざる』『キジムナーKids』『亡き王女のためのパヴァーヌ』『プリズンブッククラブ』)

 そして、古典ではあっても今に生きる本も紹介。(『日本唱歌集』『君たちはどう生きるか』『世界を揺るがした10日間』)  さらに、反体制運動における暴力・非暴力の問題。これは、レイバーネットTV〈本の発見No.3 〉でも議論になった。(『夜の谷を行く』『正義の人々』)

 まとめてみると、2017年の重要な問題のいくつもが、ここに反映されている。トランプ就任に始まった今年は、暴力的・強権的政治が世界中に拡大した年でもあった。国内では共謀罪の成立(5月)、辺野古の反基地闘争への弾圧などはその象徴であり、戦争を呼ぼうとする策動と一体にほかならない。排外主義、軍国主義の風潮が大手を振って罷り通る風潮が身近に浸透しつつある時代だが、同時にバーニー・サンダース、ジェレミー・コービン、文在寅といったリーダーを押し上げるような平和と変革を希求する波もうねり始めたーそれがいまだ。

 2009年にレイバーネット日本は、冊子『文化のないたたかいなんてありえない!』(写真)を発行し、労働者運動は、体制側の文化やイデオロギー(虚偽意識)を変えなければ前進できないことを主張した。

 戦前・戦後の労働者運動の歴史を振り返れば、それは自明のことだ。敗戦後、職場や地域に文化サークルの運動が広がる。読書会があり、あたらしい詩や小説・ルポルタージュ、演劇、そして歌が生まれていく。数えきれないサークル誌があった。映画や演劇の鑑賞団体も職場に根差して全国に組織されていった。それらを、いま見ることはほとんどできない。

 だが、眼をこらせば本に限らず、いろいろな媒体の中に、さらにたたかいの中に、そして生き延びているサークルの中にも創造の可能性を探すことができるだろう。レイバーネットには、その動きを見過ごさずに、創造力を探し出してネットワークを広げる大きな役割がある。

 来年(2018年)もホームページとTVの二つを柱にして、〈本の発見〉は、本を対象にこの役割の一端を担いたい、と考えています。あらためてみなさんの協力を切にお願いいたします。

 なお、現在の「週刊 本の発見」(毎週木曜日掲載)の執筆スタッフは、以下の通りです。大西赤人(第1)渡辺照子(第2)志真秀弘(第3)菊池恵介・佐々木有美(第4)佐藤灯・金塚荒夫(第5)


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