週刊 本の発見 : 『知らなかった、ぼくらの戦争』(アーサー・ビナード) | |||||||
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木曜掲載・第10回(2017/6/15) 戦争を背負って生きた人たち●『知らなかった、ぼくらの戦争』(アーサー・ビナード編著・小学館・1500円・2017年4月刊)このコーナーを担当させていただいて、本の読み方が変わった。取り上げる本を選ぶために、新聞・雑誌・ネット・ラジオなどに注意を払い、本屋に行けば夢中で棚を眺める。数冊を選んで読み始め、この本と決めたら、線を引き、栞をはさみ、ある時は、ページを折る。森の中に入って、いい木を探し回っている気持ちだ。というのも、最新の良い本を紹介したいと思っているから。 今回選んだ『知らなかった、ぼくらの戦争』で、アーサー・ビナードは、「本気で知りたくなると、どこかで知っている人とつながる道が、不思議と切り開かれる」といっている。「人」を「本」にすると、今の私の本選びにそのまま重なる。 この本は、文化放送「アーサー・ビナード『探しています』」で、一昨年4月(戦後70年)から一年かけて、各地の戦争体験者47人にインタビューした中から23人を選んで1冊にまとめたもの。ラジオ番組を、私は聞くことができなかった。隣にいて話を聞くような感じを体験できなかったことは、残念だ。 本書は、しかし、聞き手アーサーの言葉をゴシックにし、写真やカットを縦横に用いるなどして、視覚によって、語りを聞く雰囲気を再現している。 パールハーバーから敗戦まで、当事者が連なるように、つぎつぎと体験を語る。 日本語で詩を書くアメリカ人、アーサー・ビナードの、言葉への感性がそこに光る。たとえば、アメリカで、戦後といっても伝わらない。第2次世界大戦が終わった後5年で朝鮮戦争、63年からベトナム戦争が、10年続く。いったいその「戦後」はいつなんだ? 異邦人の眼を備えた詩人が戦争を体験した日系人や日本人に、アメリカや日本でインタビューする。語りは、ときに聞き手に導かれさえする。 ちばてつやは、満州から引き揚げるときに、中国人の徐集川さんにかくまわれ命を助けられた。アーサーは、『明日のジョー』のジョーは、「ひょっとして徐さんのジョだったりしますか?」と。これに、ちばは、言葉を失うほど驚き、作品に、ジョーという名前の主人公が多いのは、それほど「徐さんに恩を感じていた」んだと、述懐する。この本はそんな臨場感にあふれ、しかも発見に満ちている。 真珠湾攻撃に参加した一等飛行兵曹原田要さん。攻撃当日、米軍は航空母艦をすべて逃がしていたことを、かれは見てとり、事前に攻撃を把握していた直感する。ホワイトハウスとアメリカ陸軍省の「壮大な罠」が「開戦」のシナリオを整えたのではとのアーサーの仮説を、原田さんの言葉は裏づける。 6月12日、元沖縄県知事の大田昌秀さんが亡くなられた。『沖縄タイムス』『琉球新報』はそれを号外で伝えた。それほど大切な人だったことが、本書のインタビューを読むと痛いほどわかる。沖縄戦、広島、長崎も、通り一遍に知っていますでは済まされない。アーサーが、オバマ前大統領の広島演説、パールハーバーでの安倍演説を痛烈に批判するのに共感しながら、では自分はどうなのかを考えずにはいられない。 ここで、語っている人たちは、一人の例外もなく、戦争を背負って、戦後を生き続けた。それを、アーサーは、「戦後づくり」と名づけ、「戦後づくり」以外に、たぶん生きのびる道はないと。私も共感で胸がいっぱいになる。〔志真秀弘〕 *「週刊 本の発見」は毎週木曜日に掲載します。筆者は、志真秀弘・大西赤人・菊池恵介・渡辺照子・佐々木有美です。 Created by staff01. Last modified on 2017-06-15 10:04:21 Copyright: Default |