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大阪教育合同労働組合が「教育勅語」容認に抗議する声明

安倍政権・松井大阪府政の「教育勅語」容認に、断固として抗議する

 学校法人森友学園(以下、森友学園)に対し、不当に安い価格で国有地を売却した問題は、安倍晋三首相並びにその妻である安倍昭恵氏をはじめ、様々な政治家や行政の関与があったのではないかとして、野党・市民団体などからの追及が続いている。この問題を、曖昧なまま終息させてはならない。

 一方で、この事件を発端に、森友学園が経営する塚本幼稚園で、園児たちに教育勅語を暗唱させる様子や、運動会で、「安倍首相ガンバレ 安保法制国会通過良かったです」と選手宣誓をさせる様子が日本のみならず世界にも配信され、大きな衝撃を与えた。これを受け、塚本幼稚園並びに新設を計画していた瑞穂の國記念小學院への批判が相次いだ。新理事長に就任した籠池町浪氏は、前理事長である父・籠池泰典氏(以下、籠池氏)の方針を改め、今後は教育勅語の暗唱は行わないとメディアを通じて発言している。

【与党議員が教育勅語容認発言を連発】

 しかし、この批判に逆行するかのように、教育勅語を容認する政治家の発言が後を絶たない。

 3月8日、稲田朋美防衛相は参院予算委員会で、「教育勅語に流れている核の部分は取り戻すべきだ」と発言。3月14日には松野博一文部科学相が、「教材として用いることは問題としない」と発言。そして政府は3月31日、「憲法や教育基本法等に反しないような形で教材として用いることまでは否定されることではない」との答弁書を閣議決定した。これについて安倍政権最大の支持母体であり、憲法改正運動を推進している右派団体・日本会議からは、同団体の地方役員だった籠池氏が絡んだ森友学園問題が終息しないことに苛立ちながらも、閣議決定は「思いがけない成果だ」との声が上がっていると言う。

 続いて4月4日には、菅義偉官房長官が記者会見で、道徳を含めた学校教育の教材に教育勅語を使用することについて「憲法や教育基本法に反しない適切な配慮の下で取り扱うことまでも、あえて否定すべきではない」と発言した。4月7日には、義家弘介副文部科学相が衆院内閣委員会において、教育現場の朝礼で子どもたちが教育勅語を朗読することについて、「教育基本法に反しない限りは問題のない行為」と答弁。4月11日には、またしても稲田防衛相が教育勅語について、「親孝行とか、夫婦仲良くとか、友達との信頼関係とか、現代でも通用するような価値観」と発言している。

【松井大阪府政も教育勅語を容認】

 大阪教育合同労働組合は、3月17日、おおさかユニオンネットワーク主催の春闘総行動にて、大阪府教育庁私学課(以下、私学課)に対し、森友学園問題に関して、「塚本幼稚園は、失効・排除が国会で決議されている教育勅語を教えているなど、日本国憲法・教育基本法・学校教育法に違反していることが明らかなので、認可を取り消すこと」等の要求を行った。これに対し3月31日、私学課から『平成29年(2017年)3月に文部科学省に確認したところ、「教育勅語の効力は1948年に失われているが、道徳心を養うということは重要であり、目的や効果に照らして、幼稚園の設置者が十分に考慮して、建学の精神に従って活用してもらうことには問題はない」との回答がありました』と、文科省受け売りの回答が行われた。

【アジア・太平洋侵略をおしすすめた教育勅語】

 教育勅語は、明治天皇が教育に関して与えた勅語(天皇のことば)であり、第二次世界大戦後の1948年、国会が「主権在君並びに神話的国体観に基づいている」ことから、「明かに基本的人権を損い、且つ国際信義に対して疑点を残す」として、排除・失効の確認を決議している。

 教育勅語には、「我カ皇祖皇宗國ヲ肇ムル」(日本は天皇の祖先がつくった)、「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」(戦争が起きたら天皇のために命を捧げろ)と書かれていることは多くの人々が知るところであり、とりわけこの箇所にはこれまでも批判が集中してきた。しかしながら教育勅語を容認する政治家たちはそろって、この部分については触れない。

 第二次世界大戦では、多くの若者が「天皇のために」と戦地に駆り出され命を落とし、多くの人々が戦火の中で死んでいった。それと同時に、日本はこの戦争において、アジア・太平洋地域への侵略と殺戮を繰り返し、本土決戦を引き延ばすために沖縄を捨て石にしたことを忘れてはならない。これらの背景に、「戦争が起きたら天皇のために命を捧げろ」と書かれた教育勅語による軍国教育があったことは明白である。教育勅語教育による犠牲者は、日本国民あるいは日本の子どもたちだけにとどまらない。沖縄を含むアジア民衆もその多大な犠牲者であり、そこにおいて私たちは加害者でもあるという事実に真摯に向き合い続けなければならない。

【封建的家族制度への逆戻り】

 稲田防衛相をはじめ教育勅語を容認する政治家たちは、「親孝行し、兄弟姉妹仲良く、夫婦は仲むつまじく、友人とはお互い信じ合って」などの部分が、「現代にも通じる内容である」「道徳心を養う」などと言う。しかし、大日本帝国憲法・教育勅語が有効であった、1947年に大幅改正される前の民法は、戸主を中心とする封建的な家族制度を中心に規定しているのである。つまり、このときの家族関係を評価するということは、現在の日本国憲法第24条「個人の尊厳と両性の本質的平等」や現行民法をも否定し、安倍政権の家族政策(家庭教育に国家が介入できる)ことを支持・容認することを意味する。

【教育勅語の負の歴史を無視した政策展開】

 「教材として用いることまでは否定されることはない」などの一連の発言は、教育勅語を今後の教育活動の積極的理念として、肯定的に活用していく為に意図的に発言されたと言わねばならない。

 なぜなら、教育現場では、これまでも戦後教育の中で一貫して、教育勅語は教材として使用されてきた事実があるからだ。多くの中学校の歴史教科書、高校の日本史教科書、歴史資料集等にも教育勅語は掲載されている。教科書では「教育勅語」という言葉は重要語句として太字になっているほどである。つまり、これまでの戦後教育では、教育勅語とは、大日本帝国憲法下での民衆支配の手段として、いわば「とんでもないもの」という位置づけで積極的に教えてきたのである。今、ことさらに安倍政権が教育勅語の教材使用に前のめりになっているのは、明らかに教育勅語の負の歴史を無視して、そこにありもしない教材としての「歴史的正当性」を子どもたちに刷り込むための政策転換にほかならない。それは、塚本幼稚園のようなことがどこでもできるようにするためだ。現に、義家副文科相は、朝礼で子どもたちが朗読することも「問題のない行為」と発言している。

【道徳教科化の狙い】

 そしておそらく、この「教材としての使用」は、これまでのように歴史学習においてではなく、教科として新設される「道徳」において、より明確になってくるであろう。すでにこれまで「道徳」教科書検定のマスコミ報道でも明らかになっているように、安倍政権は教科としての「道徳」において「国家」「日本」「古来からの伝統」などが核心的価値観であることを隠していない。これらが教育勅語登場の露払いでなくてなんだろうか。

【国家主義・排外主義的な教育政策に私たちは抗う】

 これまで、戦前・戦中の軍国教育を否定し、戦後の民主主義教育は始まったとされてきた。しかし実のところ、当時の軍国教育を身にまとったまま戦後の教育は出発し、私たちはその矛盾を曖昧にしたまま、過去の過ちから克服したという思い込みを抱いてはいなかっただろうか。そのつけが、戦後72年を迎えようとする今、政治家による教育勅語容認発言という形で現れていると思われる。

 教育労働者が結集する大阪教育合同労働組合は、安倍政権・松井大阪府政による、教育勅語の容認・擁護を絶対に許さない。なぜなら、このような発言をてことして、国家主義的な教育政策が拡大されることが容易に想像できるからである。さらに、「道徳」の名を借りた思想統制、排外主義に対して、今後も教育現場で徹底的に闘い続ける。

 私たち教育合同は、これまでも、そしてこれからも、アジア各地の人びとと共存する社会をめざし、戦争につながる教育に荷担することを一切拒否する。   2017年4月20日

大阪教育合同労働組合
執行委員長 大椿 裕子


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