JR北海道、日高本線の一部廃止を提起〜半数の町長が欠席の中「説明会」を強行 | |||||||
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JR北海道、日高本線の一部廃止を提起〜半数の町長が欠席の中「説明会」を強行黒鉄 好*日高本線の列車(災害で不通になる前の厚賀−大狩部間) JR北海道は、12月21日、浦河町内のホテルで「説明会」を開き、日高本線鵡川(むかわ)〜様似(さまに)間(116.0km)について、災害からの復旧を断念し、廃止としたいとの意向を沿線市町村に伝えた。日高本線は、2015年1月の高波により不通となったまま、年明けには不通2年を迎える。 この日の説明会には、JR北海道側から島田修社長(写真下・中央)、瀧本峰男取締役・総合企画本部副本部長(線区経営改善担当)が出席。沿線自治体から川上満平取(びらとり)町長、三輪茂日高町長、小竹國昭新冠(にいかっぷ)町長(日高町村会会長)、竹中喜之むかわ町長の4町長が出席した。説明会会場のホテルがある浦河町をはじめ、新ひだか、様似の3町長は、JR北海道の一方的な廃線通告に抗議の意思を示すため欠席。えりも町長も「体調不良」を理由に欠席し、沿線8自治体首長のうち半数が欠席する異例の事態の中で行われた。 島田社長は、高波に今年夏の台風10号による被害も加わり、復旧費が86億円に上ると見込まれること、復旧費と別に「海岸浸食対策費」も必要で、これらを合わせると100億を超える費用が必要との社内試算を示した。また、JR側が沿線自治体に求めた13.4億円の費用負担に、沿線自治体側が難色を示したこと等、廃止を提案するに至った経緯を淡々と説明した。 もともと、この説明会は沿線自治体側が望んだものではなく、JR北海道が一方的に設定したものだ。むかわ町を除く沿線7自治体は、日高本線が不通となって以降、6回にわたって継続してきた沿線自治体協議会の場での協議続行を望んでいた。沿線自治体協議会のメンバーでないむかわ町長に至っては、今日の説明会にいわば呼びつけられた形になる。それだけに、この一方的で乱暴な説明会の強行に、沿線自治体側から次々と怒りの声が上がった。とりわけ、説明会終了後、ぶら下がり会見に応じた三輪町長、小竹町長の2人は怒りを隠さなかった。 三輪町長「これは私たちが求めていない説明会だと思っている。(JRからの回答は)沿線自治体協議会で求めていきたい。今日はそれについてはコメントしない。社長の話を聞き置くだけだ。(他の町長の)皆さんもそうだと思う。もう1回、第7回の(沿線自治体)協議会開催を求めていく」 小竹町長「大変厳しい説明内容だったと受け止めている。(バス転換では)利用者に負担がかかる。(バス転換は)想定しておらず、今日は説明を聞いただけだ。なぜ協議会の場で提案しないのか。今日はその旨を申し上げた。協議会がそのスタートになる」 この上で、小竹町長は「あくまで復旧を求めていく方針に変わりはないか」との記者の質問に、「初めからその気持ちであり、現在もそれは変わらない」「協議会はあくまでも復旧のためのもの。(再開されれば)復旧を目指していくことになる」と答え、あくまでも日高本線の復旧を求めていく方針に変わりはないと明言した。「JR北海道は今日の(説明会の)日程をあらかじめ決めていたのではないか。急に決めたようには思えない」とも述べ、初めに廃線通告ありきのJR北海道の姿勢に対し、不信感をあらわにした。 この日の説明会には、筆者もレイバーネット報道部として取材参加したが、「運輸交通記者クラブの加盟社ではない」という理由で質問は禁じられた。その場で「善処」を要望したが、JR北海道広報部は「記者クラブとの関係もあり、当社の一存で決められない」と回答。一方「会見終了後の個別取材には応じる」と譲歩してきたため、今後に向け、引き続き非加盟社の会見場での質問を認めるよう、改善を求めてゆくことにしたいと考えている。 会見終了後のレイバーネットの取材に対し、JR北海道広報部は以下のように答えた。 Q.過去の鉄道路線廃止では、沿線自治体の同意を得ずに廃止届けを提出した例はないものと理解している。今回の提案をもって「協議打ち切り、廃止届提出」でないと確約願いたい。 A.(鉄道事業法では、廃止届の提出は事業者の判断であり、沿線自治体の同意が条件とされていないため)手続上は可能だが、現実問題として、それ(廃止届の強行提出)はできないものと考えている。いずれにしても、沿線自治体と相談させていただくことになる。 Q.JR北海道は、維持困難13線区の発表の際、地元に上下分離の提案を行っているが、自治体とりわけ市町村にとって鉄道の下を負担することは財政上、不可能に近い。JR北海道として、「下」の保有を行うべき事業体として、どのような形のものを想定しているのか。また、国に下を保有するよう働きかける考えはないのか。 A.「下」は自治体を想定しているが、それは絶対ではなく、過去に(他地域で)そのような例があったためそうしているだけ。JR北海道から「下」を保有するよう国に求めていく考えはない。国は第三者に過ぎない。 ---------------------------------------------------------- 島田社長は、「(不通が2年近くになる日高本線については)そろそろ「現実的な解決策」を提示する時期」だと繰り返したが、廃線提起をすることが鉄道事業者として責任ある態度とはとても思えない。それは沿線町長らの声にも現れている。 北海道では、国鉄分割民営化の際、全体の3分の1にも及ぶ鉄道を失っており、沿線地域の衰退は加速した。今回、JR北海道が「単独では維持困難」とした路線はJR北海道全営業キロの半分にも及ぶ。この問題は分割民営化に端を発しており、北海道全体の総合交通計画を作成する責任は道にある。にもかかわらず、国も道もこの問題に主体的な関わりを避け、逃げている。こうした国や道の姿勢に対しても道民の不満は高まっている。「JR北海道から「下」を保有するよう国に求めていく考えはない」とする回答からは「当社の仕事ではない」という意識が透けて見えた。 原発と同様、責任の所在が曖昧な「国策民営」の弊害が噴出していることが、取材を通して見えてきた。JR北海道の100%株主である国も鉄道運輸機構も、総合交通計画を作成する責任を負う道も、会社の存在が法律(JR会社法)に規定され、決定権を持たないJR北海道も、全員が「自分の責任ではない」と考え、責任を押しつけ合っている構図だ。国交省も当事者意識がなく、やはり今後はJR北海道問題を中央での政治案件に引き上げてゆくことが必要だ。それなくしてこの問題の根本的解決はあり得ないというのが、会見場を取材しての感想だった。 この日の説明会は、沿線自治体側が「JR北海道側の説明を聞いただけ」で廃止、バス転換への同意でないことはもちろん、今後も日高本線の復旧を求めていく方針に変わりはないと明言したこと、筆者の取材に対してもJR北海道広報部が「廃止届の強行提出はできない」としたことは大きな成果である。浦河町など4町長が欠席したことも、この日の説明会を廃止同意の場にさせない上で大きな効果を発揮した。 「日高本線は維持困難13線区とは別」との島田社長の回答とは裏腹に、JR北海道がこの説明会を「維持困難線区各個撃破作戦」の第1弾と考えていたことは明白であり、ここで安易に沿線自治体が廃止や地元負担を受け入れれば、13線区沿線が総崩れになる恐れがあった。第1弾の日高本線をめぐって、JR北海道の思惑通りに事を運ばせなかったことで、今後の路線維持に大きな望みをつないだといえよう。 ---------------------------------------------------------- なお、廃線提案後の記者会見におけるメディアと島田社長とのやりとりは、以下の通り。 (朝日新聞) (島田社長) (毎日新聞) (島田社長) (NHK) (島田社長) (NHK) (島田社長) (NHK) (島田社長) (北海道新聞) (島田社長) (北海道新聞) (島田社長) (読売新聞) (島田社長) (共同通信) (島田社長) (STV―地元民放テレビ局) (島田社長) (STV) (島田社長) ●会見動画 JR北海道 日高線鵡川〜様似間廃線提案(その1/島田社長記者会見) JR北海道 日高線鵡川〜様似間廃線提案(その2/三輪茂・日高町長ぶら下がり会見) JR北海道 日高線鵡川〜様似間廃線提案(その3/小竹國昭・新冠町長ぶら下がり会見) Created by staff01. Last modified on 2016-12-25 20:06:01 Copyright: Default |