「崖から落とされた」ことが人らしく生きる契機に〜日立・朴鐘碩さんの職場挨拶 | |
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「崖から落とされた」ことが人らしく生きる契機に〜日立・朴鐘碩さんの職場挨拶2016年11月30日、正式に日立製作所を離れます。11月16日、5分の時間をいただきました。感謝を込めてお別れの挨拶をし、その後花束をいただきました。多くの体験をし、46年間過ごした日立の職場から「静かに」去りました。その挨拶文を公開します。 ●日立製作所を離れるにあたって(職場での挨拶) 私は、46年前の1970年19歳の時、国籍を理由に就職差別した日立製作所を横浜地裁に訴えました。4年近い裁判闘争、国境を越えた国際連帯運動によって完全勝訴し、日立に入社しました。 当時、在日朝鮮人への就職差別は、当たり前でした。この日立闘争は、大学の講義に利用され、皆さんの中に高校生の息子さんがいる方は、ご存知だと思いますが公立高校の教科書にも掲載されています。 原発事故が起きた2011年11月定年退職しましたが、その後、嘱託として5年間勤務し裁判期間含めると46年になります。 敢えて裁判までして日立に入社した私が何を考え、職場でどのような生き方をしたのか、書き残したいと思い、この2冊の本を共著で出版しました。 1.「日本における多文化共生とは何か-在日の経験から-」2008年
新曜社 続「日立闘争」-職場組織のなかで 日立製作所は、朝鮮半島が日本の植民地となった1910年に創業し、100年以上の歴史があります。 2011年3月、福島原発事故が起こりましたが、日立は、東芝、三菱と並ぶ原発メーカーです。事故を起こした原子炉は、GE、日立、東芝が造りました。 原発と核兵器は、表裏一体です。超大国の核による世界支配を補完するものです。原発建設・核兵器は、朝鮮半島の状況がそうであるように国家・人間・民族を分断し、難民、棄民を生み出します。つまり差別構造の上に成り立ち、弱者に犠牲を強いる非人間的なものです。 原発事故後、私は、原発メーカーで働く労働者のひとりとして、沈黙していいのか悩みましたが、内部から声を発することの意味、重要性を考え、日立製作所の会長・社長に抗議文・要望書を提出しました。 核兵器に繋がる原発の輸出は、相手国住民を差別・抑圧し、戦前、日本がアジアを侵略したように再び日本が加害者になることが懸念されます。 国籍を理由に採用を取り消し、原発事故の謝罪もせず、原発を輸出する日立グループの経営陣、川崎市はじめ横浜市、日立市など全国の自治体が「当然の法理」(国籍)を理由に、採用した外国籍公務員に行政中枢部の職務、管理職に就くことを制限し、外国籍住民を2級市民扱いする、差別制度を黙認する行政の姿勢は、戦前の植民地政策の延長です。 私は、何度も組合選挙に立候補しましたが、見えたことはたくさんあります。最大の問題は、企業、労働組合の朝鮮半島はじめアジアへの侵略戦争の責任を不問にしたことです。経済・効率を優先し、企業内組合からなる連合の労働運動が経営者との「労使協調・共生体制」を強化し、労働者に沈黙を強いています。 世界39ヵ国4千名(内海外2,500名)近い原告が、2014年1月GE・日立・東芝3社を東京地裁に訴えました。原告の一人である私は、自分が勤める日立を何故訴えたのか、その陳述書を裁判所に提出しました。 日立資本の城下町・日立市は、「「広島」「長崎」のあの惨禍を繰り返さない」「核兵器廃絶」を宣言しています。私は、中西会長、東原社長に人類と自然を破滅に導く原発事業から撤退する英断を求めています。 2度とこの世界で原発事故を起きないことを願い、日立を去っても核廃絶・反原発・平和を訴える世界の人々と連帯していきます。これはこの世で生きる私(たち)の責務であり、子ども、孫、次世代への責任でもあります。 歴史は作られるものではなく自分で作るもの、人権は与えられるものではなく、社会の不条理に当事者自ら怒りを発し、生き方を賭けて獲得するものである、ということを私は日立就職差別裁判闘争から学びました。 日立から採用を取り消され、私は「崖から落とされました」が、逆に、それが職場で人間らしく生きる契機となり、現在の自分が存在します。その意味で今日まで働くことができた日立製作所に心より感謝しています。 日立製作所が国籍・民族を超えて労働者にとって差別のない、人間らしく働きやすい、開かれた職場・組織になることを願っています。皆様の健康とご活躍をお祈りします。今日まで有難うございました。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 【代理投稿】佐藤和之(佼成学園教職員組合) Created by staff01. Last modified on 2016-11-28 16:18:50 Copyright: Default |