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こういう人を「気骨ある人」というのですね〜映画『五島のトラさん
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こういう人を「気骨ある人」というのですね〜映画『五島のトラさん』

    笠原眞弓

 トラさんは、長崎県五島のうどん屋、つまり製麺屋だ。7人の子どもがいる。彼は考えた。家族を幸せにしたい。子どもらを真っ当な人に育てたい。それで、2歳の子どもから製麺の仕事をさせる。この子の仕事は、とても大事な仕事だが、2歳でもできる。手伝わせているのではない。ちゃんとタイムカードがあり、1人1時間づつ、年齢に合わせた仕事が割り振られる。働いた時間と、年齢に見合った賃金が小遣いとして支払われるが、自己申告だ。

 朝5時、すでに仕込みに入っているトラサンの呼ぶ声で小学4年の女の子が起きてくる。塾に行く子は誰もいない。勉強は学校で、それ以外のことは家で学ぶ。友だちの家の田植えには、学校を休ませて手伝いにいく。学校は毎日あるが、田植えは1日だけだというのが、トラさんの主張だ。自分もそうしてきたと。

 だからと言って、どの子も同じようにそれを受け入れているわけではない。もしそうなら、ファッショの世界だから、成長につれて反抗する娘や様々な道を模索する子どもたちに、思わずエールを送る私がいる。父親に反発して出て行った一人の娘には、それはそれは心を砕いている様子が見て痛々しいくらいだ。

 そして世代が代わり、そこにも現代のトラさん一家がいる。子育てに熱心な父親は、トラさんに自分を投影するのだろうか。いい悪いではなく、これほど自分の主義主張をはっきり持ち、自己を律し、さらに子どもたちに愛情を注ぐトラさんは、もしかすると天然記念物かもしれない。

 とはいえ、父親であることを追求していく人がいる限り、この一家に魅せられて、22年間も長崎テレビの番組として撮り続けた大浦勝さん(写真)のような人がいる限り、日本は大丈夫と思えてくるのだった。

*8/6よりポレポレ東中野で上映開始。初日上映ごとに、トラさん家族と監督の舞台挨拶あり。2015年FNSドキュメンタリー映画大賞のグランプリを獲得。6月、上海テレビ祭でドキュメンタリー部門最高賞のマグノリア賞受賞


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