木下昌明の映画批評『ブレイク☆ビーターズ』 | |||||||
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ヤン・マルティン・シャルフ監督『ブレイク☆ビーターズ』 ブレイクダンスは社会主義国家でも生きていた!ドイツ映画『ブレイク☆ビーターズ』が楽しく、面白い。 スクリーンでは若者たちが終姶ブレイクダンスを競っていて、見ている観客も一緒にリズムを取りたくなるからだ。それもなんと社会主義国・旧東ドイツの工業都市、デッサウが舞台なのだ。 1985年、街の映画館に米国の『ビート・ストリート』がかかった。この映画はニューヨークのサウスブロンクスで路上ダンスに熱中する若者たちのドラマ。自由なスタイルで軽妙に踊る姿に、デッサウの若者たちも圧倒され、虜になる。 19歳のフランクはスポーツ協会で体操を習い、“社会主義的人格”の発達を目指している。それがダンスの魅力に取りつかれ、家の内外でダンスの練習ばかり。協会には体操の元五輪選手だった女の子がいて、そのステキな彼女も一緒に仲間4人で「ブレイク・ビーダーズ」のチームを作り、路上で跳んだりはねたり。 ブレイクダンスは、元はストリートギャングの縄張り争いなどで、暴力の代わりにダンスを競って非暴力的に決着をつけたのが始まりとされている。 それが社会主義下でどのように変えられたか? 東ドイツでは、悪名高い国家保安省(シュタージ)が各地に監視の目を張り巡らせていた。フランクたちも「資本主義の腐敗に毒されている」と国家警察に取り調べられたりする。 しかし、フランクは「これは虐げられた貧困層のダンスで、反資本主義者の団結を踊りで表現したものだ」とけむに巻く。これには笑ってしまうが、敵もさる者、政府の「娯楽芸術委員会」はダンスの“社会主義化”を図ろうと、個人の踊りを集団の踊りに変え、「アクロバティック・ショーダンス」と改名する。さあ、これにフランクたちがどう応じたかが見どころとなる。 映画は実話にもとづく。ヤン・マルティン・シャルフ監督は、映画で伝えたかったことをこう述べている。「若い人は『やりたいことがあったらやろう』ってことだ」と。(『サンデー毎日』2016年6月26日号) *6月25日より東京・ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開 Created by staff01. Last modified on 2016-06-27 13:48:47 Copyright: Default |