あえて紙媒体に挑む!〜韓国ネットメディア「チャムセサン」が「ワーカーズ」発行 | |
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あえて紙媒体に挑む!〜韓国ネットメディア「チャムセサン」が「ワーカーズ」発行安田幸弘韓国のチャムセサンは、韓国で一番歴史のあるメディアグループが立ち上げたインターネット・メディアですが、最近、進歩的なインターネット・メディアが不振で苦しんでます。そんなインターネット・メディアの中で最近、紙媒体を見直す動きがあって、インターネットでは老舗のチャムセサンがあえて紙媒体に挑んで創刊したのが週刊誌の「ワーカーズ」です。(写真は3月に発行された創刊号) 現在、韓国には多くのインターネット・メディアがあって、いわゆる「進歩」に分類されるメディアもいくつかあります。代表的なところではオーマイニュースは商業的にもそれなりに成功している例で、民衆の声も関連団体を巻き込んでしっかりした経営基盤を構築して、商業メディア的な展開をしています。しかし、これらのメディアを見ていると、どうしても「経営上の事情」が編集方針に与える影響を排除しきれていないのではないか、という気もします。 チャムセサンとその周辺のメディアグループは、インターネット・メディアが珍しかった頃はそれなりに注目も集めていました。しかし、メディアビジネスの一角を占めるインターネット・メディアが登場してきたことで次第にチャムセサンのようなメディアの存在感が薄まっていることに悩んでいたそうです。それでいろいろと検討した結論が紙媒体でこれまでにない週刊誌を創刊するという冒険でした。 「ワーカーズ」が想定する読者層は物心がついた時にはインターネットで情報を読んでいた若年層。スプーン階級論の「土の匙」をくわえて生まれてしまった青年たちです。もちろん、青年層以外にも、障害者やLGBT、ワーキングプア、外国人など、社会に対してきちんと声をあげることができない疎外された人々も重要な読者です。 メディアビジネスの回路から弾き出されてしまった人たちの声を伝えるために、メディアビジネスの回路に組み込まれることなく収益を確保していく方法として、紙媒体を選択したのだそうですが、もちろん従来のネット上のチャムセサンの記事と同様、インターネットで無償で記事を読むこともできます。 ちなみに、紙媒体での購読料は1年20万ウォン(約2万円)で、日本の週刊金曜日よりちょっと安いけど、まあそれなりの価格ではありますが、個人や団体での定期購読を集めることで運営の基盤を固めようということなので、この程度になってしまうのでしょう。このあたりは週刊金曜日とよく似てますが、特に購読料を払っていなくても、すべての記事をインターネットでも読めるというあたりが 「ワーカーズ」の冒険というところでしょう。 このあたりは、チャムセサンをスタートさせた人たちの「情報は無償ですべての人々が共有できなければならない」という原則によるもので、だからこそチャムセサンの記事を勝手に翻訳してレイバーネット日本に流すことができるわけですが。 すでに「ワーカーズ」の記事はいくつか翻訳もしているのですが、これを日本語で従来のチャムセサンの記事のようにレイバーネット日本で公開するべきかどうか、ちょっと迷っていて、とりあえず創刊の辞だけをアップロードしました。「創刊の辞」 創刊号の内容は、サムスン会長が入院しているサムスン病院にアポ無しで潜入を試みてみたという記事だとか、初めての労働組合、フィリバスターで注目を集めたテロ防止法、保守的な親と選挙についてどう会話するか、青年票を食い物にする政治、アルバイト労組委員長インタビュー、海外ネタで家賃支払い拒否の運動や移民問題、障害者の移動権闘争の話、そして連載小説など。 韓国の青年たちの生活感が伝わってくるとてもいい記事で、個人的には翻訳を流したいという気持ちはあるのですが、本来有料の記事を無償で公開してしまっていいのかという倫理的な問題もあり、それ以上に果たして韓国の青年がおかれている状況をよく知らない日本の普通の人たちから、これらの記事に共感が得られるのかどうか、いまいち判断しきれないところもあります。連載小説にいたっては、まともに翻訳しようと思うと一般の報道記事より手間もかかったりするという現実的な問題もありますが。そんなわけで翻訳の掲載をためらっていたりするのですが、まあ、これをどうするか、いろいろな人から意見を聞きながら考えてみたいと思ってます。 日本語版はともかく、そんなわけでいろいろ財政的に苦しい中、正統派の進歩的社会運動メディアが死活をかけて創刊したのが「ワーカーズ」です。今行われている反核WSFの取材に来たいという話もあったのですが、財政難と人手不足で今回の記者の来日はキャンセルになってしまいましたが、最近の日本の青年たちによる運動にもとても興味があるとのことで、機会があれば来日して取材もしたいとのこと。レイバーネット日本としても、彼らの冒険的挑戦を何かの形で支えることができればいいなと思う次第です。(レイバーネット国際部/韓国担当) Created by staff01. Last modified on 2016-03-25 12:53:39 Copyright: Default |