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LNJ Logo 木下昌明の映画批評 :『放射線を浴びたX年後2』
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●伊東英朗監督『放射線を浴びたX年後2』

第五福竜丸事件の隠された事実〜被ばくから「X年後」を再び問う

     木下昌明

 近年見た映画で衝撃的だった1本に『放射線を浴びたX年後』がある。これは南海放送(愛媛)の伊東英朗監督によるドキュメンタリーだ。

 1954年、米国の核実験で第五福竜丸が被ばくした事件では、1隻だけでなく延べ992隻が被害に遭い、多くの漁船員が亡くなっていたという事実。翌年、日本政府が米政府から200万ドルの慰謝料で“完全解決”を図り、魚の放射能検査を中止し、すべての魚が食卓に上がったという事実――映画は隠された実態を暴き、これまでの歴史認識を変えたのである。

 あれから3年、その続編『放射線を浴びたX年後2』が公開される。ここでは日本全土に降り注いだ死の灰はどうなったかの調査とともに、東京に住む川口美砂さん(59)の半生を介して「X年後」の今を浮かび上がらせている。

 川口さんの故郷は高知県室戸市の漁師町。そこで偶然、『X年後』をみて「私の父はなぜ死んだのか」と疑問を抱く。彼女の父は漁師で36歳で亡くなった。町では「酒を飲みすぎて早死にした」とうわさが立った。彼女は生き残りの元漁師たちを訪ね歩く。

 前作では、伊東監督が漁師町を1軒ずつ聞き取り調査していくと、「がんでずっと前に亡くなった」という返事ばかりで、これには驚かされた。だが、今作でも彼女の父と同じように早世したという話が多い。発見した父の航海日誌には「体が火のように燃える」とある。放射能の怖さは、長い時間をかけてじわじわ体を浸食するところにある。それによって、死は個人の不摂生のせいにさせられてしまう。

 カメラは、昔の父の仲間を訪ね歩く川口さんに寄り添い、漁師たちの当時の状況を明らかにしていく。そこで彼らの船員手帳は、事件当時のぺージが破られていることがわかる。それは「魚が売れんようになるけ、言うな」と上から口封じされたからだと。

 歴史はくり返されるのか――。

(『サンデー毎日』2015年11月22日号)

*愛媛・シネマサンシャイン大街道で公開中。11月21日から東京・ポレポレ東中野ほか全国順次公開。写真=映画ポスター。


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