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米価が高い?ならば新聞代は?〜「毎日社説」にムカムカしてたまらない

         「山形の百姓」 菅野芳秀

 いつまでこんな連中を相手にしなければならないのだろう。毎日新聞(10月5日)の社説のことだ。それを読んでからずっとムカムカしている。

 「農業の強化を妨げるな」と題したその文章には「今年の新米が、前年より高めの値段で出回り始めた」、「米価の高止まりは生産性の低い零細農家の温存につながり、担い手への農地集約を妨げかねない」、「高い米価が維持され、生産性の低い農家が存続すれば、農地集約も進まない」よって、米価を上げないだけでなく、補助金も削減しろという。いままで何回も繰り返されてきた農業タタキ、農家タタキが書かれている。いったい「高い」という根拠はどこにあるのだろう。

 実際のところ、今年の米価も暴落の中にある。仮渡金とはいえ、今年は1俵/60kgあたり10,000円。昨年は8,500円だった。おそらく最終価格に各種補助金が加わっても1,000〜1,500円前後が上がるだけ。これではほとんど、「農家は死んでしまえ」という価格だ。

 他方、農水省はH25年の一俵あたりの生産費を15,229円と発表した。これが原価だ。今年もほとんど変わらないだろう。コメを1俵売るごとにその差額分が赤字となっていく。

 この米価はいまから42年前、1973年(昭和48年)の10,300円(1俵/60kg)に近い。当時の新聞購読料は1,100円(1ヶ月)だった。それが今日では3,925円となっている。およそ3.57倍。その数値を当時の米価にあてはめれば1俵あたり39,773円となっていなければならないはずだ。繰り返すが、それを今年も1万円そこそこで販売せざるを得ないのだ。

 地元のスーパーでは新米が10kg3,000円で売られていた。そこから言えば、ご飯一杯(白米で70g)の価格は21円だ。5杯食べても105円。それでも新聞社は、米価が高いという。それを言うならば、新聞購読料金を1,100円/1ヶ月にしてから言うべきではないのか。

 この暴落の背後にガット・ウルグアイ・ラウンドで輸入を義務づけられていた77万トンの主食用米がある。そこに更にTPPで約束した輸入米7・8万トンが新たに加わることになれば、毎年およそ85万トンの無関税米が輸入されることになる。山形県の総生産量・42万トンの2倍だ。我が家の今年の減反面積は40%。それでも暴落はとどまるところをしらない。やっていけないのは規模が大きい農家とて同じだ。農業、農村、農家の壊滅的危機が進行していく。

 このムカムカは当分おさまりそうにない。

*参考「毎日社説」

↓2014年3月のレイバーネットTV66号で農業問題を訴える菅野さん。放送アーカイブ


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