プレカリアートユニオンの清水直子です。
■「アリ地獄」と揶揄され、労働者に引越荷物や車両事故の高額な弁償をさせることで知
られているアリさんマークの引越社(株式会社引越社=名古屋、株式
会社引越社関東、株式会社引越社関西の3社)に対する集団訴訟が始まりました。
第一陣は、7月31日に名古屋地方裁判所に12人で提訴し、司法記者クラブで記者会
見を行いました。同日、東京でも在職者1人が先行して、東京地裁に提
訴し、厚生労働記者クラブで会見。関東も15人が後に続きます。関西も8月中に提訴予
定です。提訴の報道→http://d.hatena.ne.jp/kumonoami/20150803
巨大なブラック企業に対し、勇気を持って立ち上がった20代、30代の社員、元社員
の闘いをご支援ください。
■事業の運営上のコストが社員の借金に?!
赤井英和のCMでおなじみの株式会社引越社では、引越の仕事で発生した事故の損害を
社員やアルバイトに負わせています。
引越荷物の破損については、作業にあたっていた社員、アルバイトで連帯責任とされ、
給料から天引きされます。車両事故については、損害が高額になることもあって、会社か
ら弁償を命じられた金額を社員会である引越社「友の会」から(多い人では年収に匹敵す
るような数百万円もの)借金をさせられた上、毎月の給料から天引きされ、仕事も辞めら
れない、という前近代的な実態があります。こうした状況は、社員・元社員の間では、「
アリ地獄」と呼ばれています(『週刊ポスト』2015年2月20日号「『アリさん引越
社』は社員からカネをむしるアリ地獄だった」)。
本来、引越という事業を営んで利益を上げているのは会社ですから、故意や重過失のな
い労働者が、通常の注意をはらって仕事をするなかで起きた損害は、会社が負うべき経営
上のリスクです。労働者に負担を求める前に、労働者の注意力が低下しないように長時間
労働を防ぐような労務管理をしていたか、事故を防ぐための注意や指導はしていたか、保
険に入って損害に備えていたかというように、会社がリスク回避のために具体的な策を講
じていたかどうかが、まず問われるべきです。
■団体交渉によって過去の弁償金を取り戻してきたものの
昨年2014年夏、アリさんマークの引越社から弁償を強いられて困った30代の男性
が、たまたま個人加盟の労働組合プレカリアートユニオン(2012年4月結成。上部団
体は全国ユニオン。「連合」加盟組織)に相談に訪れたことで、私たちはこの事実を知る
ことになりました。この男性を含め、その後加入した人たちは、プレカリアートユニオン
と会社との交渉を経て、過去の弁償金を取り戻し、本人が納得する内容で、会社と和解し
てきました。
団体交渉のなかで、私たちは、会社に、通常の注意をはらって仕事をしている労働者に
システムとして損害賠償を強いる弁償金制度をなくすよう、粘り強くはたらきかけてきま
した。この結果、会社は、労働者の損害賠償額の上限を3割にすることまでは何とか認め
ました。これまでと比べれば、半歩前進といえます。しかし、3割もの高い負担を労働者
に強いることができる状況に変わりはなく、弁償を労働者に負担させることに固執してい
ます。労働者が故意や重過失で事故を起こした例外的なケースだけ、個別に請求や負担の
話し合いをすればよいのです。労働者の負担は0(ゼロ)を原則にしなければ、安心して
働くことはできません。
■現役社員、元支店長が次々加入すると
これまでプレカリアートユニオンに加入したのは、アリさんマークの引越社を退職した
人たちが中心でした。「在職中は、それが当たり前だと思いこまされていた。」「会社を
辞めて、他社に転職して初めて、いかにアリさんマークの引越社が常識外れでひどいこと
を強いていたのかを知った。」「おかしいとは思っていたが、在職中は言い出せなかった
。」みなさん、そう言います。
次第に、勇気を出して、会社で働きながら、弁償金制度や一方的に給料が減額される制
度を変えたいと立ち上がる人がでてきました。すると、会社は、自分たちの全社的に「合
同労組に加入すると一生再就職できない」「ユニオンに加入するとお金をとられる」とい
う、マイナーな業界紙のでたらめな記事(しかも、記事はたくさんある合同労組のなかで
なぜかプレカリアートユニオンの名前入り)を支店内に貼りだしました。さらに、あろう
ことか、株式会社引越社(名古屋)では、会社が手なずけた人を使って「組合員を組合か
ら脱退させたら1人10万円払う」として、数人を組合から脱退させる、という許し難い
不当労働行為を行いました(東京都労働委員会に不当労働行為救済申し立て中)。しかし
、加入者は途切れません。この間、在職者と元支店長、管理職が相次いで加入しています
。そんななかで、会社は、「司法の判断を仰ぐ」として、団体交渉では問題を解決しない
、と宣言しました。
■第一陣12名は7月31日名古屋地方裁判所に提訴
そこで、このたび、アリさんマークの引越社各社(株式会社引越社、株式会社引越社関
東、株式会社引越社関西)を相手取って、弁償金の返還、一方的に減額された賃金の請求
、残業代の請求などを求めて大規模な集団訴訟を行うことにしました。第一陣(20代、
30代の原告12名)は、7月31日に名古屋地方裁判所に提訴し、司法記者クラブで記
者会見を行いました。代理人は、渡辺輝人弁護士(京都第一法律事務所)、吉川哲治弁護
士(弁護士法人名古屋法律事務所)です。
■プレカリアートユニオンが着手金を負担。在職者の組織化も
提訴がやむを得なくなったことを受けて、ブラック企業引越社への社会的なキャンペー
ンも強めていきます。引き続き、第二陣、第三陣の提訴を予定しており、集団訴訟の参加
者も募集しています。この集団訴訟については、プレカリアートユニオンが、運動として
、代理人(弁護士)の着手金を負担し、全力で取り組みます。合わせて、在職者の組織化
にも引き続き取り組んでいます。加入希望の方、集団訴訟に参加したい方は、名古屋、関
東、関西など地域を問わず、プレカリアートユニオンが対応します。退職者も加入、集団
訴訟への参加が可能です。
集団訴訟の代理人 渡辺輝人弁護士より
引越社のシステムは「違法・不当行為のデパート」
この訴訟の争点の一つは、引越社が様々な名目で行っていた給料の減額行為の違法性で
す。
■違法な天引き・賃金減額・乱高下する賃金
引越社は、事故・破損等の弁償金や、制服代の支払い等の名目で賃金からの天引きを行
ってきました。また、引越社は、「業績不振」を理由に、毎月、2〜5%程度の賃金の減
額を行ったり、客観的な基準がないまま行われるランク付けにより毎月賃金額が乱高下す
る仕組みになっていました。このような様々な減額により、引越社の給料明細をみても、
賃金の支払い根拠がほとんど分からないような状態になっています。
■固定残業代制の悪用と過労死ラインを超える長時間労働
もう一つの争点は、引越社が導入している固定残業代の違法性です。引越社は、労働者
にまともに説明しないままに、支払うべき月額賃金の内側に固定残業代を設定し、残業代
の抑制をしてきました。賃金の天引きとあいまって、給料明細を見ても、残業代の支払い
根拠が全く分からない状態になっています。そのような状況の下、過労死ラインを超える
長時間労働が横行していました。
■事業の運営上のコストを労働者に転嫁
そして、さらにもう一つの争点は、会社に対して返済させられた弁償金を取り返せるか
否かです。本来、事業の運営上生じたコストは事業者(会社)が負担すべきものです。労
使関係を利用し、弱い立場にいる労働者に無理に支払わせた弁償金を後から取り返せるか
が注目されます。
弁護団としても、これらの引越社のシステムは「違法・不当行為のデパート」だと考え
ており、撲滅のために、全力を挙げたいと思います。
★裁判費用のカンパ(1口1000円)も歓迎です★
【郵便振替口座】記号番号:00150−8−608357
口座名称:プレカリアートユニオン ※「アリさん裁判カンパ」とお書きください。
【他行からの振込先】
〇一九(ゼロイチキュウ)店
預金種目:当座 口座番号:0608357
プレカリアートユニオン(担当:書記長・清水直子)
〒151-0053 東京都渋谷区代々木4-29-4西新宿ミノシマビル2F
TEL03-6276-1024 FAX03-5371-5172
info@precariat-union.or.jp
ブログhttp://d.hatena.ne.jp/kumonoami/
ウェブhttp://www.precariat-union.or.jp/
Created by
staff01.
Last modified on 2015-08-04 13:07:59
Copyright:
Default