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根津公子の都教委傍聴記:実教出版高校日本史またもや「使用は不適切」通知
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●根津公子の都教委傍聴記(2015年6月25日)

実教出版高校日本史またもや「使用は不適切」〜茶番の第一回教育総合会議も開かれる

 公開議題は1)2016〜2019年度使用中学校教科用図書選定審議会の答申について 2)2016年度使用都立高校用教科書の調査研究資料についての報告2件。非公開議題が校長の任命や懲戒処分の議案及び報告。公開議題について報告する。

1)2016〜2019年度使用中学校教科用図書選定審議会の答申について

 教科書採択にあたり、3月末に都教委がすべての出版社の教科書について調査研究するよう審議会に諮問し、その「教科書調査研究資料」が6月10日付けで答申された、その報告。これに基づいて都教委は都立中学校の教科書採択を行い、また、区市町村教委などの採択権者に対しても、これが十分に活用されるよう指導、助言、援助を行うとのこと。

 都教委の教育目標や基本方針、学習指導要領に基づき調査研究したものとして各教科、次のいくつかの項目が目に留まる。
1.我が国の位置と領土をめぐる問題の扱い
2.国旗・国歌の扱い
3.神話や伝承を知り、日本文化や伝統に関心を持たせる資料
4.北朝鮮による拉致問題の扱い
5.防災や、自然災害等における関係機関等の役割の扱い
6.一次エネルギー及び再生可能エネルギーの扱い
7.オリンピック、パラリンピックの扱い
 地理、歴史、公民の教科書については1〜7のすべてについて記述を示す。数学、美術でさえ、5、7について。英語では、拉致問題についても調べている(結果はどの出版社も「無」と記す)。都教委の異常なまでの執着を示す調査研究資料である。

 この資料に沿って都立中学校の教科書、とりわけ歴史、公民教科書が、現場担当教員の声は聴かず、都教委の権限・好みによって採択されることを危ぶむ。事実を歪曲した歴史観や、人権ではなく義務を刷り込む育鵬社版教科書を採択するな、と言いたい。

 しかし、教育委員からは調査研究資料の内容についての発言は全くなかった。これに同意したということか。遠藤委員は、「社会や理科、豪華な教科書について経済人として思うのは、1冊いくらかかっているのかということ」と質問(対する答えは「歴史は予定価格1冊758円」というものであった)。遠藤委員の質問は、「無償教科書に金をかけるな」と言っているように私には聞こえた。

2)2016年度使用都立高校用教科書の調査研究資料について

 高校の教科書は小中学校のように4年ごとの採択ではなく、毎年採択がされる。そこで、昨年度の検定に新たに合格した外国語の1冊についての資料が提示された。議題から見ればこれだけの報告であったはずだった。

 しかし、続けて、表題の発言。「国旗国歌について、実教出版日本史の『一部の自治体で公務員への強制の動きがある』との記述は今回も変わらなかった。これは、都教委の考え方と異なる。したがって、校長の責任と権限の下、選定するよう6月26日以降通知をする」と。

 委員からは一切の発言はなかった。委員の誰一人、教育に介入していると自覚する者はいないのか。

 実教出版日本史は、東京でもかなりの割合で採択されてきた実績を持つ。しかし、都教委は、2012年には実教出版日本史を選定した学校の校長を電話で脅すなどして学校選定を変更させ、採択を「0」にした。2013年は「『一部の自治体で公務員への強制の動きがある』との記述は…都教育委員会の考えと異なるものであり、…都立高等学校で使用する教科書としては適切ではない」との通知を各校長に宛てた。しかもその決め方にも、大いに問題があった。公開の教育委員会で論議し決定すべきことであるのに、それをせず、密かに決めた。教育委員たちが教育委員会を否定し、侮辱したのだった。こうして、実教出版日本史教科書を都立校の生徒たちに使わせない、都教委の不当支配が続いている。

傍聴排除について。

 2年半前から傍聴を排除され続けてきたFさんの姿が今日も傍聴受付の会場前にあった。これまで述べてきたように、Fさんが質問に至ったのは木村委員長(当時)の議事進行が間違っていたからだった。しかし、木村委員長にそれを進言する都教委の人はおらず、Fさんは傍聴を排除され続けてきた。傍聴するためには、都教委が用意した「誓約書」に住所・氏名を書くことが条件とされた。今日、Fさんは傍聴を優先するために、腹が立つのを抑えるかのように、それを書いて担当の教育政策課長に出した。

 ところが、課長は「読めるようにきれいに書いてください」とFさんにつき返した。そのやり取りが聞こえたので、私たちも近くに寄ってその署名の字を見た。住所も氏名も書いてある。私が「ねづ」とか「ね」とか書いて受け付けられてきたことを告げると、Fさんは「フ」と書き足した。しかし、課長は「根津さんは私の着任前からそうしていたので許可しているが、Fさんには書いていただく」と言い、結局、Fさんは今日も傍聴を排除された。

■午後からは第1回教育総合会議

 首長が教育を支配する教育委員会制度に変わったのを受けて、知事は教育総合会議を招集することができるようになった。その1回目が開催された。これまでに見たことのない厳重な警備態勢。職員は皆、ピリピリ。傍聴受付は12:00から12:30に25階で。12:50、傍聴者は10人ずつ職員にガードされて42階へ。そこで手荷物監査をされ、控室で待機。13:30、やっと会場に誘導された。1時間の会議を傍聴するために、1時間から1時間半も待たされたのだった。

 会議は茶番だった(としか、私には感じられなかった)。中井教育長の司会で、まずは、舛添知事のあいさつ。「少子高齢化社会の下、高齢出産の危険などについて教育の中で教えていきたい」などと言った。次に、木村元教育委員長が都教委が取り組んできたことについて説明。「知事がお示しくださった重点事項は大事なことばかり」と、よいしょ(?)した。続いて、教育委員一人ひとりが各人の考えを発表。

 乙武委員が不登校対策として、「学校に戻す方針だけでなく、補完として学校外でもいいとなったことに賛成。義務教育だけでは難しい」と発言したことに対し、竹花委員は「フリースクールに、ではなく、もっと公教育でやるべきことがあるはず」。対して乙武委員は、「ならば、特別支援教育からインクルーシブ教育に移していく必要がある」と言った。ここのやり取りは、突っ込んでほしかった。

 また、乙武委員が部活動について、「教員の多忙化や部活動が体罰の温床となっていることから考えると、指導員を外部委託することも位置付けていっていいのではないか」と発言したことに対し、知事は、「私は古い人間なのかもしれないが、教育は愛情、教員が部活を担当することに意味がある」というような趣旨の発言。それ以上のやり取りはなかった。

 今日はそれぞれの考えを出し合い、次回以降、教育施策大綱の策定に入るという。マイクが悪いのか、発音が悪いのか、発言が非常に聞き取りにくかった。閉会宣言の後、知事が部屋から出るまでは、皆動くことは禁止されていた。知事の身の安全確保のためなのか。

■竹花委員は前回に続き、今日の教育委員会定例会も欠席だった。しかし、教育総合会議には出席していた。いったい、どういうこと?!


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