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木下昌明の映画批評『サンドラの週末』〜築き上げていく同僚らとの“絆” | ||||||
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●ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督『サンドラの週末』 築き上げていく同僚らとの“絆”――復職を賭けた女の「二日と一晩」働く者にとって、ある日突然クビを言い渡されることほどつらいものはないだろう。 ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督の『サンドラの週末』は、解雇を通告された主人公サンドラが、クビを撤回させられるかどうかの瀬戸際を描いている。サンドラは2人の子どもを抱え、夫の給料だけでは家賃さえ払えず、ソーラーパネル工場で働いている。会社には労働組合がなく、体調を崩して休んでいた彼女に復帰の直前、一本の電話がかかってくる。 映画はここから始まる。 会社は経営が厳しく、誰かに辞めてもらうことを交換条件にボーナスを支給するという。工員たちの投票の末、「14対2」でサンドラに白羽の矢が立った。社長は解雇の責任を工員たちに転嫁したのである。結果を聞いた彼女は「自分はダメ女」と泣き崩れるが、夫と同僚の取りなしで社長に面談し、月曜朝の再投票にまでこぎつける。さあ、それからが大変なのだ。 原題は「二日と一晩」。それはサンドラに与えられた切実な時間をさす。彼女は電話や住所を調べ、仲間を一人一人訪ねて説得を試みる。 最初の電話では言葉が出なく、一息入れて「仕事を続けたいから私に投票してほしい」と訴える。「棄権ではダメか」と渋る相手も最後は賛成に回ってくれ、彼女はホッとする。だが、次に訪ねた家では「娘が大学にいくので」と断られる――訪ねていく先々での楽ではない生活事情も見えてくる。彼女は「物乞いみたい」と絶望するが、夫や同僚に励まされ、自らのひ弱さにも耐えながら、いつしか同僚たちとの“絆”を築いていく。そこが映画の見どころになっている。サンドラを素っぴんのまま演じたマリオン・コティヤールが見事だ。 社長に呼ばれるラスト、彼女は申し出をさりげなく断る。詳しくは書けないが、その決意がいい。帰り道、夫と携帯で話す彼女のふっきれた表情が心に残る。(木下昌明・『サンデー毎日』2015年6月14日号) *東京・渋谷Bunkamuraル・シネマ他で公開中。全国順次公開 〔追記〕いったいサンドラ一家はどうなるのか? 実は、この映画はジ・エンドの後からが大変なのだ。彼女の一家は2人の子どもを抱え、ようやく狭い共同住宅から2階建ての家に引っ越してきたばかり。もし再就職ができなければ逆戻りするしかない。それなのに「娘を大学にやる」ために彼女の頼みを断った一家のケースをみればわかるように、共働きの妻の方はいま失業中で仕事も見つからない状態。それはサンドラの未来を暗示している。 Created by staff01. Last modified on 2015-06-05 15:02:04 Copyright: Default |