木下昌明の映画批評『わたしの、終わらない旅』〜「3・11」後の世界の核の現実 | |||||||
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●坂田雅子監督『わたしの、終わらない旅』 「3・11」後の世界の核の現実―母の遺志を受け継いだ娘の旅坂田雅子という記録映画作家がいる。夫のグレッグ・デイビスが2003年、54歳で突然がんで亡くなるまで彼女は映画とは無縁だった。 夫は『タイム』誌の写真特派員としてアジアを中心に取材していたのだが、若き日、ベトナム戦争で枯れ葉剤を浴びていた。坂田は夫の死による喪失感を埋めようと、カメラを携えてベトナムなど彼の足跡を辿る旅に出た。そこで枯れ葉剤に侵された人々を鎮魂する『花はどこへいった』(07年)を作った。 しかし、彼女の旅は終わらなかった。つぎに枯れ葉剤の犠牲になった帰還兵の家族や、ベトナム人の子どもの今に光をあてる『沈黙の春を生きて』(11年)を仕上げた。それでも彼女の旅は終わらなかった。映画の完成寸前に福島での原発大惨事に出くわし、彼女のさらなる旅が始まったからだ。 福島、フランス、マーシャル諸島、カザフスタン……。旅は、新作『わたしの、終わらない旅』となって結晶した。『沈黙の春』のレイチェル・カーソンが語ったように、「ダイオキシン」も「放射能」も、人間の体をじわじわ破壊していく、人類とは相いれない「不吉な物質」だと、映画をみて改めて痛感した。 今度の旅は、英仏海峡にあるガーンジー島から始まる。島には彼女の姉が結婚して40年間住んでおり、対岸にあるラ・アーグの核燃料再処理工場から大量の放射性物質がたれ流されていた。そこでは日本のプルトニウムも扱っていた。1977年、姉は日本の母へ宛てた手紙でその危険性を訴えた。母は原発の危うさを知り,「聞いてください」というチラシを作り、長野県の須坂駅頭で配り続けた。活動は新聞に取り上げられ、母は国の「原子力政策円卓会議」にも加わって抗議もした。その時の珍しい映像も挿入されている。 坂田は母の死後、その活動の大切さを学び、世界の「核」の現場は今どうなっているかを探ることにする。彼女の精力的な記録の旅に圧倒される。もはやプライベートな旅ではなくなった。 「3・11」から4年、人類は放射能まみれの地球をどうするつもりか。(『サンデー毎日』2015年3月29日号) *東京・ポレポレ東中野で3月27日まで公開中、全国順次公開。 〔追記〕坂田監督の記録の旅はこれからもつづくと思うが、『沈黙の春を生きて』でダイオキシンの被害にあった米兵の家族を訪ねて歩いたように、“トモダチ作戦”で被ばくした空母「ロナルド・レーガン」の米軍兵士の実態を記録する映像を撮ってほしい、とわたしは願っている。 Created by staff01. Last modified on 2015-03-21 10:30:50 Copyright: Default |