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息苦しい社会でいいのか〜「表現の不自由展」を開催します

いま、日本社会であることが進行しています。美術館では、「抗議が行われる」もしくはその可能性があるというだけで、展示が決まっていたものが中止になったり、途中で撤去されることが相次いでいます。公民館では、憲法九条を詠んだ俳句が、定期刊行物に掲載されなくなりました。これはいったいなんなのでしょうか。

2012年、中国に残された元日本軍「慰安婦」を記録した安世鴻さんの写真展が、突然「諸般の事情」という理由で中止の通告を受けるという事件が起きました。安さんが写真展を開くことになっていたのは、新宿ニコンサロン。若手の写真家にとってあこがれの発表の場でした。写真は、戦争の傷をかかえる女性たちの日常を静かに深く見つめるもので、審査員から高い評価を受け、ニコンの選定によって招待されたものでした。

しかし、新聞に開催の記事が載ったことで、会社に抗議が寄せられます。そして抗議を受けた翌日、ニコンは開催の取りやめを決めてしまうのです。安さんはこれを不服として東京地裁に不服の仮処分を申請。地裁が認めたことで、写真展は開かれることにはなりました。しかし、そこでは空港のゲートのようなものものしい警戒がなされていました。メモも取れない、ひそひそ話もできない、何も販売できない・・・、異様な光景でした。

わたしたちは、練馬区の市民たちの手で、もっと普通の写真展を開きたいと思い、武蔵大学正門前のギャラリー古藤で、手作りの展示をおこないました。1000人を超える方々が来て下さいました。そこでわかってきたことは、同じような体験をしているひとがいっぱいおられるということでした。

同じ時期、東京都美術館では、アジアの芸術家たちの作品展が開かれていました。そこには、韓国ソウルの日本大使館前におかれた、あの少女像のミニチュアもありました。「慰安婦」問題を考える上で、シンボル的な作品です。少女の横に、だれもいない椅子が置かれています。そこで見る人は考えます。この椅子にだれが座るのだろうと。彼女のもうひとつの未来、それとも傷つけた責任者・・・、想像が限りなく広がる佳作です。この像が、わずかな抗議を受けただけで開催中に撤去されたのです。撤去について、作者の金夫妻にはなんの相談もなされませんでした。

わたしたちは考えました。こうした体験を持つ作品をできる限り集め、そこから表現について考えてみたいと。それが「表現の不自由展」です。場所は、安さんの写真展を開いた場所と同じギャラリー古藤(電話03-3948-5328)です。

展示するのはまず少女像。金夫妻も来ます。5年前に製作されたにもかかわらず、いまだにどの映画館でも上映できない『ジョン・ラーベ〜南京のシンドラー』。南京大虐殺をテーマにしたこの映画には、香川照之・ARATA・柄本明といった俳優が出演し、数々の国際賞に輝きました。しかし、自主上映会を開くことしかできません。連日ゲストのトークもあります。ろくでなし子さんやピーター・バラカンさん、澤地久枝さん、森達也さん、わたし。みな日本社会の危うさについて語ります。

芸術の可能性は限りなく大きく、言論の広がりは人間を豊かにするものです。しかし今、反対のことが起きているのです。論争のあるものは避ける、「政治的」なものだといって遠ざける。危ないといって目に触れないようにする。そうしたことが当たり前になれば、この社会はもっと息苦しいものになってしまいます。そうであってはいけないのです。

大みそかの紅白歌合戦。サザンオールスターズの「ピースとハイライト」が大きな反響を呼びました。日本を代表するピースとハイライト。もうひとつの意味は、平和と極右です。NHKでこの歌が歌われたことが騒がれるほど、いまのNHKは不自由だと言う証しかもしれません。爆笑問題の政治風刺コントがすべて没になったことも同じ流れだと思います。そうしたなか、フランスで風刺新聞を襲うテロが発生しました。表現の自由について考えることは、いまや喫緊の課題です。

展覧会では、天皇と戦争、植民地支配、「慰安婦」問題、靖国神社、国家批判、憲法九条、原発、性表現・・・、そうしたテーマを扱ったことで表現の機会を奪われたものを一堂に集めます。絵画・彫刻・写真・映画・テレビ番組・俳句・漫画など、ジャンルはさまざまです。期間は1月18日から2月1日まで。どうぞご支援のほどよろしくお願いいたします。

(表現の不自由展実行委員会共同代表 武蔵大学教授・永田浩三)

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表現の不自由展〜消されたものたち

会期■2015年1月18日(日)〜2月1日(日) 
12:00〜20:00(日曜のみ19時) 会期中無休
(イベント時は作品のみの鑑賞はできません)
会場■ギャラリー古藤(ふるとう)
入場料■500円
大・高生、ハンデのある方300円/中学以下無料
イベント参加費■トークのみの日:1,000円
上映&トークの日(★印):1,500円
(入場券お持ちの方は1回に限り入場料分割引)
主催問合せ■hyogenfujiyuten@gmail.com
TEL080-3731-1075
www.facebook.com/hyogennofujiyu
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【出展作品】美術館・画廊等で「検閲」された作品を展示します。
安世鴻
(写真家/新作:アジアの被害者たち)
大浦信行
(芸術家、映画監督/光州ビエンナーレ出品抗議作)
貝原浩
(画家/風刺画〔天皇復元版〕)
キム・ウンソン&キム・ソギョン
(彫刻家/「慰安婦」をモチーフとした《少女像》関連作)
中垣克久
(彫刻家/展示強制撤去資料+新作)
永幡幸司
(サウンドスケープ研究者/福島関連検閲資料+作品)
山下菊二
(画家/天皇モチーフ作〔予定〕)
※ほか資料展示あり 〔作家50音順〕
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【トーク・上映イベント】先着40名・要予約
イベント予約専用 jjtenevent@gmail.com TEL03-3948-5328

 1.18(日)14~17時 キム・ウンソン&キム・ソギョン(彫刻家)
         来日トーク!
 1.20(火)19-21時  安世鴻(写真家)
 1.21(水)19-21時  『ジョン・ラーベ〜南京のシンドラー』上映&
         永田浩三(武蔵大学教授)トーク★
 1.22(木)19:30-21時 ピーター・バラカン(ブロードキャスター)
         聞き手・高和政(文化批評)
 1.24(土)14-17時  大浦信行(芸術家、映画監督)×ゲスト・洪成潭(画家)
         映画『靖国・地霊・天皇』上映&トーク★
 1.25(日)14-17時  『放送禁止歌』上映&森達也(作家・映画監督)トーク★
 1.26(月)19-21時  鹿島拾市(「秋の嵐」元メンバー、a.k.a.加藤直樹)
 1.27(火)19-21時  ろくでなし子(漫画家、造形作家)
 1.28(水)19-21時 放送中止テレビドラマ『ひとりっ子』上映&岩崎貞明(放送レポート編集長)トーク★
 1.29(木)19-21時  イトー・ターリ(パフォーマンス・アーティスト)
 1.30(金)19-21時  開発好明(アーティスト) 
 1.31(土)14-16時  澤地久枝(作家)
 2.1(日)14-16時  まとめディスカッション(アライ=ヒロユキ、香川檀、永田浩三)

※講師のご都合で変更する場合があります。


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