
みなさま
角田です。
少し長いですが、お読みいただければありがたいです。
盗聴法大改悪は、捜査機関の施設において大規模盗聴を可能にする
ものであり、日本版リズムを実現しようとするものです。メール盗
聴をめぐって警察文書により重大な事実が明らかになりました。警
察庁開発のメール盗聴装置がプロバイダーとの軋轢で使用できなか
った可能性が高いことが判明しました。
メール盗聴をめぐるプロバイダーとの軋轢
盗聴法大改悪のもうひとつの狙いである日本版プリズムの実現の要
である警察庁が開発したメール盗聴装置は「サーバーへの直接の接
続」をおこない、そのサーバーを通過するメールのすべてを警察の
同装置を通るようにしたものであり、現行の盗聴法の趣旨を逸脱す
る違法なものです。
1999年盗聴法が制定され、2000年8月に施行された時点では警
察はメール盗聴においては、裁判所の盗聴許可令状で指定された特
定のメールアドレスの通信内容をプロバイダーからフロッピーをな
どで受け取ることになっていました。ところが、2001 年警察庁は
プロバイダーのサーバーにメール傍受装置を直接接続し、そのサー
バーを通過するすべてのメールを盗聴できるシステムを開発しまし
た。警察庁は、サーバーに直接接続したからといってすべてのメー
ルを盗聴するわけではなく、裁判所から許可のおりた特定のメール
しか傍受しないから問題ないとしました。
ところが、このメール盗聴をめぐって、プロバイダーと軋轢がお
き、同装置によってメール盗聴をすることが困難になった可能性が
でてきました。
警察文書で明らかになったこと
マスコミの報道で2010年、2011年にメール盗聴がおこなわれたと
いう報道と、それを否定する報道があり、実際にメール盗聴がおこ
なわれたのかどうか調べてきましたが、警察文書でメール盗聴にか
かわる箇所で、警察開発のメール盗聴装置の使用にプロバイダーが
慎重な姿勢をとっている可能性が高いことが判明しました。
青森県警の『「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律の運用に
当たっての留意事項」の改正について』(平成22年7月20日)の
「第4 傍受の実施 4 傍受のための機器等 (3)電子メール」
で、メール盗聴について次のように書かれています。
「電子メールを用いた通信の傍受については、原則として、警察庁
が開発した電子メール用記録等装置をもちいて行うものとする。た
だし、通信事業者側の事情等により使用できない場合にあっては、
メールアドレスによって特定された電子メールのみを傍受し、・・・」
ほかの県警の文書にも同様の趣旨の記述があることからみて、現行
の盗聴法の趣旨を逸脱し、違法の可能性のたかいメール盗聴装置の使
用にプロバイダーが慎重な対応をとったと考えられます。
令状によるメール捜査
事実、捜査機関は、この間、メールの捜査にあたって、盗聴法によ
らず、送信され、既にメールボックスに蓄積されているメールは既読、
未読を問わず、令状による差押の形で取得しているといわれています。
送信されてくるメールをリアルタイムで盗聴するためには、盗聴法を
適用し、メールボックスに蓄積されるメールは令状による差押で確保
するという苦肉の策は、警察庁開発のメール盗聴装置がプロバイダー
との関係で軋轢をよび、現状では使用できな状況にあるということと
思われます。
実際にメール盗聴装置の「サーバへの直接の接続」はプロバイダー
にとって、顧客の通信の秘密を保護するうえで重大な問題です。盗聴
法施行時は、メール盗聴は裁判所の盗聴許可令状で指定された特のメ
ールアドレスの通信内容をプロバイダーからフロッピーをなどで受け
取ることになっていたものが、全く一方的に反故にされ、メール盗聴
装置の「サーバへの直接の接続」を求められればプロバイダーも簡単
に応じるわけにはいかないでしょう。
アメリカでは
アメリカでもプリズムシステム、プロバイダーの「サーバーからの
データの直接」収集を実現するのには時間がかかったといわれていま
す。「スノーデンファイル」(ルーク・ハーディング著 日経BP社)
によれば、最初にNSAへのデータ提供に協力したのがマイクロソフ
トで2007年、ヤフーが2008年、グーグル2009年1月、フェイスブッ
ク同年3月、ユーチューブ2010年、スカイプ2011年、アップルは5年
間抵抗したが、最後に同意した大手とされています。日本でも、プロ
バイダーが「サーバーからのデータの直接」収集をねらうメール盗聴装
置の使用に慎重な態度をとったとしても不思議ではありません。
法制審議会特別部会でメール盗聴が議論されたのは一回だけです。
なぜ、特別部会でメール盗聴がほとんど議論されなかったのか、警察
文書で明らかになりました。検察・法務、警察庁はプロバイダーの「サ
ーバーからのデータの直接」収集ということが議論になることを恐れた
のです。その狙いが、盗聴法大改悪で一挙にプロバイダーの「サーバー
からのデータの直接」収集への道を開くことにあることは疑いありませ
ん。
盗聴法大改悪に反対しましょう。
1月27日「盗聴法大改悪に反対する市民の集い」(18時30分〜 文京区
民センター3A)を開きます。ぜひ、ご参加ください。
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staff01.
Last modified on 2014-12-25 13:20:01
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