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木下昌明の映画批評 : 台湾巨匠傑作選〜垣間見える支配と被支配の歴史 | ||||||
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台湾映画の名作を一挙公開中!〜垣間見える支配と被支配の歴史台湾映画の中ではホウ・シャオシェンの『童年往事』が一番好きだ。少年の成長とその日常茶飯を綴った作品で、女子学生を自転車でつけ回し、ラブレターを渡すシーンなど忘れ難い。そんな映画からさえも、さまざまな国に支配された台湾の複雑な歴史が垣間見えた。 この映画をはじめ、台湾の有名監督の旧作が「台湾巨匠傑作選」と銘打って公開中だ。最近、日本でも評判になったウェイ・ダーションの『セデック・バレ』も上映される。この映画は日本の植民地時代に起きた「霧社事件」を扱っており、関連でタン・シャンジューの『セデック・バレの真実』(写真)という新作ドキュメンタリーも併せて公開されでいる。 霧社事件とは、1930年、山岳地帯に住む台湾原住民セデック族による抗日暴動事件である。この事件でセデックの1000人以上が死亡したとされる。彼らは山で狩りをし、布を織って生計を立てていた。他部族との縄張り争いから首狩りをする風習があり、一人前になると男女とも顔に刺青を施してそれを誇った。が、日本の官憲は野蛮として廃止し、日本人同化教育を行った。 事件自体は、頭目のモーナ・ルダオの息子と日本人警官との些細ないさかいから始まったが、その根っこには二つの文化のギャップと差別があった。このあたりの事情を『セデック・バレ』は劇画調のタッチながら分かりやすく描いていた。『真実』の方は原題に『餘生』とあるように、当時の興味深い写真や映像をふんだんに挿入しながら、生き残った人々の子孫の証言を通してその後の歴史が語られる。時を経て日本側の責任者だった佐塚愛佑(映画では木村祐一が演じている)の遺族を訪ね、佐塚と一緒に葬られている〈原住民〉妻の墓も訪れる。支配・被支配を超えた不思議なつながりがそこから見えてくる。 セデック族の発祥の地とされる巨石“プスクニ”を探す子孫たちの旅のシーンでは、風光明媚な山々に圧倒されよう。(『サンデー毎日』2014年9月14日号) *「台湾巨匠傑作選」は9月15日まで新宿・K's cinema TEL03-3352-2471 http://www.ks-cinema.com/ 〔追記〕『セデック・バレの真実』をみて、わたしは以前にみた井上修のドキュメンタリー『出草之歌』に出てくる高金素梅(原住民名チワス・アリ)のことを思い出した。このドキュメントについて自著『映画は自転車にのって』(績文堂刊)で書いているが、彼女は映画のトップシーンで顔に刺青をほどこし、靖国神社に入っていく。その時、あの刺青にどんな意味が秘められているのか、わからなかった。しかしわたしは、この『真実』をみて納得できた。刺青をすることは、たとえ死んでも「祖霊の家」に帰れるという原住民の言い伝えがある。だから高金素梅は、第2次大戦時、日本軍が原住民を「高砂義勇隊」にしたて、戦死させた原住民を靖国神社にまつった――そのことへの抗議をこめて、自分の顔に刺青をほどこしたのだ。彼女は、戦死した原住民を「祖霊の家」に「魂を返せ」と靖国にやってきたのである。――あの高金素梅は、いまどうしているのだろうか? なお、映画『出草之歌』のDVDはアマゾンなどで購入できる。 *写真(C)ARS Film Production Created by staff01. Last modified on 2014-09-05 17:31:29 Copyright: Default |