木下昌明の映画批評 : チリ・ピノチェト独裁に「ノー」〜“広告屋の流儀”貫いたCM合戦 | |||||||
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●パブロ・ラライン監督『NO(ノー)』 チリ・ピノチェト独裁に「ノー」〜“広告屋の流儀”貫いたCM合戦1973年、ピノチェトはチリで暴虐の限りを尽くして独裁政権を築いた。その男が15年後の88年、国際的な批判をかわすため、信任を問う国民投票を行った。誰の目にもピノチェトの勝利は明らかだった。それなのに敗北した。何が起きたのか? 同じチリのパブロ・ラライン監督の『NO(ノー)』がこの政権転覆の真実を解明している。 国民投票では、ピノチェト支持は「イエス」、反対は「ノー」と投票する。独裁者は自らの度量を示すために27日間、深夜テレビで1日15分ずつ反対派のキャンペーンを認めた。映画は両陣営のCM合戦を中心に描く。反対派には、テレビ局のCM制作で活躍するフリーランスのレネが加わる。レネ役には『モーターサイクル・ダイアリーズ』(04年)で若きゲバラを演じたガエル・ガルシア・ベルナル。支持派の担当はレネの上司で、いつもは協力し合うが、今回ばかりは敵対する。 見どころは、両陣営が作る多様な作品のおもしろさ。最初、反対派はピノチェトのクーデターを告発する白黒映像を作った。観客はこの映像で虐殺、拷問、国外追放の非道の歴史を覗き見ることができる。が、レネは「これじゃ人は動かせない」と一蹴する。そこから「今の時代にマッチした」「喜び」をテーマにした明るい作品を作ろうと悪戦苦闘が始まる。その一つ、本を読むひげ面の男に「独裁者に何が言いたいですか」と問う。男は用心深く左右をうかがって口を開くと、舌には「ノー」の紙が……。 一方、支持派は大統領の功績を讃えるCMばかり作っていたが、危機感を覚えて反対派の批判も始める。映画は当時を再現しようと、時にその時代の映像に俳優陣を融合させる撮影技法を用いている。 レネは、支持派の妨害に「あくまで広告屋の流儀で戦う」と宣言。たかがCM、と笑うなかれ。(『サンデー毎日』2014年8月31日号) *8月30日より東京・ヒューマントラストシネマ有楽町他。全国順次公開 Created by staff01. Last modified on 2014-08-25 18:00:42 Copyright: Default |