木下昌明の映画の部屋 : カンボジア映画『消えた画―クメール・ルージュの真実』 | |||||||
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●リティ・パニュ監督『消えた画―クメール・ルージュの真実』 カンボジアの「悲劇的な錯誤」―ポル・ポト政権“大虐殺の闇”ベトナム戦争のあった時代,同じ南アジアで二つの大量虐殺があった。一つは先ごろ公開され、本欄でも紹介したドキュメンタリー『アウト・オブ・キリング』。これは共産党関係者とみなされた百万人以上が虐殺されたインドネシアの「9・30」事件。事件は半世たって映画によってようやく日の目を見始めた。 もう一つはガンボジアのクメール・ルージュ(共産党)によって百万人以上が虐殺・あるい餓死させられた事件。これは1975年4月17月、首都プノンペン制圧と同時に市民を根こそぎ農村地帯に追いたてたことで世界の耳目を集めた。その後、イギリス映画『キリング・フィールド』によって虐殺に至る内戦の模様が描かれて、およそのことが理解できた。 今度のドキュメンタリー『消えた画――クメール・ルージュの真実』、は当時13歳でその渦中にあったリティ・パニュ監督の体験を描いたもの。登場人物は土人形を使っているために寓話的で、失われた家族への思いが時には幻想ふうに映像化されている。 クメール・ルージュが首都に入城した時、市民は解放軍のように迎えたが、それは、とんでもない錯誤だった。指導者のポル・ポトは、当時の中国文化大革命の影響を受けて、市民を農民化する極端な生産共同体社会をつくろうとした。リティ一家はその犠牲となり、つぎつぎと餓死していく。 トップシーンは、数々の死体を埋めた土を採集してきて、その土で人形をつくることからはじまる。最初の人形に白いスーツ、黒いネクタイと色をつけ、「私の父だ」とナレーションが入る。父を中心に人形たちによる楽しかった昔の団欒風景が描かれる。 そして突然の戦争……。市民は黒い衣服でアリのように列をなして働かされている、当時の白黒フィルムが流れる。その裏側で虐殺が始まっていた。 ―右も左もこんなにまでして殺し合うどんな価値があったのか? これからも、殺すことを前提にした思想や行動は否定されなければならない。昨年のカンヌ国際映画祭〈ある視点〉部門グランプリ受賞。(『サンデー毎日』2014年7月13日号) *7月5日より渋谷・ユーロスペースにて公開。以下全国順次公開 Created by staff01. Last modified on 2014-07-05 19:58:27 Copyright: Default |