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「帰りたい でも帰れない」〜詩人・小島力さんを囲んで「テント1000日イベント」

「帰りたい でも帰れない/まだ帰れない ふるさとの大地に/音もなく降り積むものは/人目には決して見えない物質だから……」。6月6日、1000日目を迎えた経産省前テントに詩人小島力さんの声がひびいた(写真)。小島さんは福島県双葉郡葛尾村に住んでいたが、原発事故のために現在武蔵野市で暮らしている。「今を生きる」と題されたテントひろば1000日イベントは、降りしきる雨の中、小島さんの詩の朗読とお話でフクシマの思いを共有する場になった。

「草茫々/田畑茫々/村一つ荒れて茫々」で始まり「草茫々/何もかも亡々/悔し涙滂々」でおわる「草茫々」は、事故後、1年4か月目の一時帰宅のときに作った詩。先祖伝来の暮らしの営みが染み付いた土地が家が、草に埋め尽くされてしまった。眼前の光景に悔し涙を流す小島さんの姿は、福島のすべての避難者と重なる。

小島さんは1935年生まれ。郵便局で働きながら、労働運動、音楽運動に関わり、詩を作り続けてきた。原発反対運動を始めたのは43年前。それも金と権力に切り崩され、双葉郡では15人ほどの少数に追い込まれた。でも黙っているわけにはいかない。事実を世間に知らせることが何より力になると原発労働者の実態調査を始めた。口の重い労働者たちも何回通ううちに話をしてくれるようになった。「原発問答」(1984年)はその中で作られた詩。「原発の話が聞きてえ?/それぁ話ぐれぇしたって悪かねぇが……/え? おごってくれんの?/チユーハイ? なぁにハイ抜きで結構」で始まるこの詩は、ユーモアをまじえながら原発労働者の現実、その孤独と悲哀を描く。

小島さんは、昨年『詩集 わが涙滂々(ぼうぼう) 原発にふるさとを追われて』(西田書店)を出版。上記の三編の詩はこの詩集に収められている。原発反対に人生をかけながら、その原発にふるさとを追われた小島さんの怒りと無念が胸に迫る。(佐々木有美)


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