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木下昌明の映画批評〜『アイ・ウェイウェイは謝らない』
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●アリソン・クレイマン監督『アイ・ウェイウェイは謝らない』

型破りの芸術家兼人権活動家――強大な権力に抗する男の半生

 中国にアイ・ウェイウェイという型破りな芸術家がいる。昔の高価な壷を落として割ったり、壷にコカ・コーラのロゴを描いたりして既成の価値観を打ち砕いてみせる。

 同時に彼は建築家であり、人権活動家でもある。北京オリンピック(2008年)会場の“鳥の巣”設計者の一人として有名だが、完成間近に手を引き、「オリンピックは共産党のプロパガンダにすぎない」と批判して当局から睨まれる。そのドキュメンタリー『鳥の巣』を以前に本欄で紹介したことがある。

 実はオリンピック開催年の5月、四川大地震があった。その時、多くの小学校が倒壊し、5000人以上の子どもが亡くなった。原因は“おから建築”と呼ばれる当局の手抜きにあり、不正がバレるので亡くなった子どもの数を隠蔽した。それに怒ったアイは、ネットでボランティアを募り、自らも現場に赴き、調査を始めた。四散した通学鞄が無惨だ。

 こうした活動を中心に、彼の半生を撮ったドキュメンタリー『アイ・ウェイウェイは謝らない』が公開される。監督は米国のアリソン・クレイマン。地震現場での撮影やアイが警官に襲撃、殴打される事件などはアイらの撮った記録映像に拠っている。アイの目的は、当局の隠蔽工作に対抗して情報の透明化を図ることだった。その映像をネットに流して、警官の暴行も逐一告発していく。揚げ句、彼のブログは閉鎖されるが、判明した5000人余りの子どもたちの名前を家の壁に張り出した。ドイツのミュンヘンで開かれた個展では、美術館正面の壁一面に9000個もの通学鞄を壁画のようにぶら下げ、子どもたちの叫びとして訴えた。

 警官に殴打され、脳出血した際の手術痕もネットで公開し、自ら当の警察署にも押しかけて事件の調査を求めている。それも撮影している。

 当局の圧力に抗う人権活動家と、芸術家として一体化したアイの活動ぶりが見ものだ。家の前や通りを監視カメラで見張られているアイの私生活や、当局に81日間拘束された事件なども点描している。(『サンデー毎日』2013年12月1日号)

*11月30日より東京・シアター・イメージフォーラム他全国順次公開。

〔付記〕 11月21日の秘密保護法案の反対集会(日比谷野音)にわたしも参加したが、開場時間にはいっぱいで、コンクリートの塀にのぼって撮影した。会場内外の熱気が伝わってきた。日本でも法案が通れば、アイのような命がけのたたかいをするしかないだろう。


Created by staff01. Last modified on 2013-11-23 20:35:28 Copyright: Default

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