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差別・切り捨ては許さない!〜メトロ売店・非正規女性労働者がストライキ
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有期雇用も65歳で定年退職―。正社員には退職金が出るが、有期雇用労働者には、退職金どころか年金さえ出ないことがある。そもそも、有期雇用労働者に定年制が必要なのか―。「有期雇用の定年制を撤廃するか、正社員なみに退職金や慰労金を支払え」と格差是正を求め、東京の地下鉄売店で働く60歳以上の非正規女性労働者たちが、3月18日、6名でストを決行した。

6名は、全国一般東京東部労組で4年前に支部を結成。東京メトロの100%子会社、東京メトロコマースで1年契約を更新しつづけて働いてきた労働者たちだ。これまで会社とは30回ほど団体交渉し、毎年10円の賃上げや忌引き休暇の有給を勝ち取ってきた。しかし、高齢者ばかりの組合で定年制の撤廃を求めたところ、会社と決裂。組合員たちは団体行動権の行使を決めた。

委員長の後呂(うしろ)良子さん(写真左から二番目)は、仲間内で一番若い59歳。月給は手取り12万円。「働いても働いても生活はよくならない。じっと手を見ているだけではダメだと思った」と、スト決行の決意を18日の厚労省での記者会見で語った。「早く声をあげなければ、事態は悪くなるばかり。たった5,6人でのストは意味がないからやめろと言われたが、たった少人数でも声をあげていこうと決めた。失敗してもこれが第一歩だ」と語気を強めた。

午後には、東京メトロコマースの社前で、はじめての社前行動に仲間100名ほどが集まった。団体交渉を求めて社内まで仲間と押し入っていけたことは、労働組合の力だ。しかし、後呂さんは「入口に警備員もおかないなんて、高齢の女たちになにができるとバカにしている証拠」と怒りを表した。

会社は後日団交に応じるとだけ口頭で回答したため、組合は親会社の東京メトロへ抗議。ここでも「子会社の事項です」との一点張りで、団交に応じようとはしなかった。

女性は「家計補助的な立場で、小遣いが稼げれば満足」という概念がいまだ根強いために、企業の差別的処遇が是正されない、と東部労組の須田光照書記長(写真上の右)は言う。

メトロコマース支部の組合員には、シングルマザーで引きこもりの息子を抱えていたり、夫と子どもを支えているような女性たちばかり。東部労組によれば、メトロコマースは黒字経営。一方で、女性たちは、税金や光熱費を払うのも精一杯で、洋服も買わずにスーパーの割引品を求めて並ぶようなギリギリの生活を強いられてきた。

組合を結成してから、会社は、脱退した従業員を正社員に登用したりという組合つぶし工作にも徹した。そのなかで、なぜストまで決行して闘おうと思ったのか――

「『おかしいことは、おかしい』と言いつづけたい。上ばかり見て働きたくないと思った」と、役人の天下り先になっている会社での仕事について後呂さんは言う。「残り短い人生を、気持ちよく働きたかった」

組合つぶしやいじめなど、辛いことも多くあったが、組合結成して「信じられる仲間がいることが一番の心の支え」だと話す。

正社員組合が、一時金の賃上げを勝ち取ったという春闘の報道の裏に、差別的処遇が変わらないどころか、悪化さえしている非正規労働者の雇用実態と生活があることを忘れてはいけない。(松元ちえ)

松元ちえのツイッター

動画13分(レイバーネットTV取材)

↓メトロコマースの売店。ここで働く非正規労働者がストライキを起こした


Created by staff01. Last modified on 2013-03-19 00:09:27 Copyright: Default

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