報告(Y):つながろうフクシマ! さようなら原発大集会 | |||||||
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初夏を思わせる陽気に恵まれた3月9日。東京・新宿区の明治公園で「つながろうフクシマ! さようなら原発大集会」(主催・「さようなら原発」一千万署名市民の会)が開かれた。 15000人の参加者は整然と会場に腰をおろし、特設ステージから流れる音楽と発言に聞き入った。第二部は、女優の木内みどりさんが司会を務め、まず犠牲者に黙とうを捧げた。レゲエシンガーのリクルマイさんのライブの後、呼びかけ人らが次々と登壇して訴えた。 ■のうのうとする加害者たち 「いままでは、首長という狭い肩書きのなかで、思うように発言できなかった。今は枠を外れてどんどん本音でしゃべっていきたい」と切り出したのは、飛び入り参加の井戸川克隆・元双葉町町長。 「放射能のある環境で育った子供と、そうでない子供は平等か。憲法で保障された人権は確立されたか。とんでもない。私たちは無政府状態の日本に住まわされている」と怒りをあらわにした。 「北朝鮮は核実験で国連の制裁を受けたが、国民を被ばくさせてはいない。私たちを被ばくさせた加害者は、何の制裁も受けずにのうのうとしている」と指摘すると、会場から大きな拍手が起きた。 小野有五さん(北海道大学大学院名誉教授)は、オノヨーコさんの従兄弟にあたる。泊原発を廃炉にする訴訟に取り組む。「泊原発は日本海側でいちばんプレート境界に近い危ない原発だ。北海道は日本の大切な食糧生産地であり、もともとアイヌ民族のものだった。それをめちゃくちゃにすることは許せない」。「ジョンが生きていたら、きっと原発に反対してくれるだろう。みなさん、原発のない社会をイマジンしましょう」。 ■デモを最後まで歩くこと 「絶対安倍政権に負けない、脱原発を完結する誓いをする集会です」――いつもは淡々と語る鎌田慧さんだが、この日は特に力を込めた。「子どもの甲状腺がん。被ばく労働者。地域が汚染され、魚や牛乳が、人間生活のすべてが奪われても、人間の命よりも、経済が大事だという人々がいる。そんな政治家は認めない」。「金とウソと権力の横暴の社会から脱却して、平和に暮らす社会に向かう。それが私たちの使命だ。フクシマのことは絶対に忘れない。どんな弾圧にも負けない。デモを力強くやろう」。 作家の大江健三郎さんは、長崎で被ばくした小説家・林京子さんの文章を紹介した。林さんは、昨年の代々木公園に向かう参加者の素直さを見て、命への思慕を感じたという。そして大江さんは、自身の三つの決意を披露。それは、ヒロシマ・ナガサキ・フクシマをなかったことにする連中と闘うこと。もう一基たりとも、原子炉を再稼働させない、そのために働くこと。最後に、今日のデモコースを最後まで歩くこと。 ■新しい差別の始まり 評論家の内橋克人さんは同時刻、福島での集会に参加している。木内さんがメッセージを代読した。 「あれから2年、原発事故の責任をとるものは誰一人としてなく、審査基準さえクリアすればもう大丈夫。再稼働は当然という空気が、安倍政権の入念な工作によって作られている」。「フクシマでは新しい差別が始まっている。子どもの被ばくを避けたいと神経をすり減らす若い母親たちを、ことを荒立てる過剰防衛のやっかいものと誹謗し、避難者を逃亡者と言い立てている。フクシマをなかったことにする教育も、平然と行なわれている」。木内さんは一語一語をかみしめながら朗読。「福島に学ぼうとしない愚かな政治家を、かくも多数国会に送り込んだ、私たち自身の責任もたださないわけにはいかない」と、内橋さんの言葉を締めくくった。 ■「俺を逮捕しろ」 広瀬隆さんは、昨年12月から続く余震には、予兆も含まれていると警告。「自分でも驚くほど、怖くてしかたがない」と打ち明けた。謙遜した表現だとは思うが、福島の子供たちにも思いを寄せ、ガンの発症を指摘。東京に蚊が発生せず、福島には鳥が飛来しなかったことを挙げて、汚染の深刻さを解説した。 また、「われわれは戦後に民主主義を作ってきた。憲法だけは手をつけさせない。死守していかねばならない」と断言。各地で相次ぐ運動への弾圧を糾弾し、会場に潜んでいるであろう公安警察、官僚、電力会社社員に向けて、「お前たち、よく聞いておけ」と呼びかけた。 「もし逮捕したければ、俺から逮捕しろ。いいか、言っておくぞ。落合さんだって逮捕されたいと、いつも言っている(落合さんはあわてて否定)。弱い人にかかるな。そんな卑劣なことはするな」と啖呵を切った。私は胸のすく思いがした。写真を撮るのも忘れて、拍手を送り続けた。 作家の落合恵子さん、澤地久枝さんの発言の後、海外からのアピールが紹介され、ほぼ定刻にパレードが出発した。 ■追記 参加者数は昨年ほどではないものの、安倍新政権の反動攻勢が吹き荒れるなかで、市民運動が粘りを見せた集会だった。キーワードはやはり「フクシマを忘れるな」だろう。ステージの発言者たちは深い危機感から、懸命に参加者を激励しているように見えた。特に広瀬隆さんの発言は感動的だった。 呼びかけ人を先頭にデモ隊が公園を出る際、それを撮影しようとするメディア関係者らが一カ所に殺到。集会主催者と、その間に介入する警察との間で怒号が飛び交い、一時騒然となった。 こうした光景は、著名人が横に並んで横断幕を持つ場合にはよく見られることで、報道する側には冷静な態度が求められる。 本来不要なトラブルで闘う陣営に不協和音が響き、警備サイドに弾圧の口実を与えるような結果は避けたい。撮影のチャンスはいくらでもある。双方の事前の取り決めや、カメラマンのモラルが問われているのだと思う。(Y) Created by staff01. Last modified on 2013-03-11 21:07:27 Copyright: Default |