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8.15報告 : 日本軍『従軍慰安婦』被害者に一刻も早く、謝罪と賠償を!
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日本軍『従軍慰安婦』被害者に一刻も早く、謝罪と賠償を!

             報告=西中誠一郎


  はじめに 

8月15日(水)、日比谷公園周辺で「終わらない戦争『慰安婦』被害者に謝罪と賠償を! ちょうちんデモ」が行われた。1991年に韓国の金学順さんが日本軍の従軍慰安婦被害者であったと声を上げてから21年が経った。この間、アジア各地で被害女性たちが50年間の沈黙を破って立ち上がり、世界各国の市民運動が連携して、日本政府の加害責任の事実認定と公式な謝罪、賠償を求めて活動を続けてきた。韓国ソウルの日本大使館前で毎週行われてきた「水曜デモ」は8月15日で1035回を数えた。昨年8月30日には韓国「憲法裁判所」が「日本軍『従軍慰安婦』問題の解決のために韓国政府が日本政府と交渉しないのは憲法違反だ」との判断を示した。それ以降1年間、韓国政府の問題解決に向けての動きは活発になったが、日本政府は全く協議に応じようとしていない。韓国のみならず、中国や台湾、フィリピンなどの「日本軍従軍慰安婦」被害者の方たちも、高齢化が進み、生存者は刻一刻と減っている。早期の真の問題解決を求めて、韓国での8月15日の「水曜デモ」に合わせ、日本、台湾、フィリピン、アメリカ、オランダ、ドイツなどで共同行動が行われた。

 東京集会では、主催者の趣旨説明とドキュメンタリー映画「終わらない戦争」(監督:金東元 2008年)の上映に引き続き、「『慰安婦』問題解決全国行動2010」共同代表の梁澄子さん(写真下)が、この1年間の日韓両政府の動きや、相次ぐ韓国の司法判断などについて報告を行った。

        

(以下は梁さんの発言内容をほぼそのまま書き留めたもの)
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本当に「日韓請求権協定」で問題解決済み?

 昨年8月30日に「憲法裁判所」が画期的な「決定」を出しました。その弾みで一年間、色々な動きがありました。

 慰安婦被害者をはじめとして、戦時中に強制連行、強制徴用された被害者たちが、日本政府に対して、90年代以降数多くの賠償請求を行ってきたが、日本政府は必ず二国間条約ですでに終わっていると言ってきました。

 1965年に「日韓基本条約」が結ばれ、国交正常化しましたが、その中に「日韓請求権協定」があります。その第2条に「請求権の問題は、完全かつ最終的に解決されたことになる」という文言があるので、「これで終わった」というのが日本政府の従来からの主張です。

 本当にそうなのでしょうか?条約や協定というのは、条文や文言は大切だが、そこに至る過程で、両国の間でどういう話し合いが行われたのか、ということが大事です。それが全然公開されていなかったので、「日韓会談」関連文書を全部公開しろという行政訴訟を2002年に韓国で起こしました。この裁判の判決が2004年に出て、原告側が勝訴しました。韓国政府は「日韓会談」関連文書を公開しなければならなくなり、2005年に全面公開しました。その時に韓国政府は「国民の知る権利のためにやる」と格好良く発表しました。その時に「民官共同委員会」が全ての資料を調べたところ、「従軍慰安婦」については論じられていませんでした。つまり論じられていないものは、そこで解決したとは言えないのです。

 そもそも「請求権協定」は、財産や債券、債務に関する請求権をどうするのか、日本人が朝鮮半島に残して来た財産をどうするのかを整理するための協定なのだから、そのような協定を、どうして日本軍慰安婦問題のような、国家権力が関与した反人道的な不法行為に対してまで適用することができるのでしょうか?だから「日本政府には現在も法的責任が残っている」と韓国政府は明確に表明したのです。両国の協定に対する考え方が全然違うのです。

 「日韓請求権協定」には、第3条に、解釈上の紛争がある場合に、それを解決するための手続きが書かれています。「解釈上の紛争が起きた場合には、まず外交上の努力でそれを解決しなさい」「それでもダメなら仲裁委員会を作って解決しなさい」「仲裁委員会には韓国から1名、日本から1名、そして両国で選んだ第三国から1名。この3者からなる仲裁委員会を作って、解釈上の紛争を解決しなくてはいけない」と「協定」に書かれています。

 しかし2005年以降も、韓国政府は外交上の努力をしてきませんでした。それで、2006年に従軍慰安婦被害者109名が「憲法裁判所」に訴え、韓国政府の不作為が認められました。それが昨年8月30日の判決です。司法判断が出たので、韓国政府は対応を迫られました。

変化した韓国政府の対応と、ハルモニたちの認識

 早速、韓国政府は9月14日に政府内にタスクフォースチームを作り、翌日には韓国政府が日本政府に対して、二国間で従軍慰安婦問題解決のための協議を行おうという申し入れを行いました。さらに11月15日に二回目の二国間協議の提案をしました。しかし日本政府の応答は、「二国間協定によって解決済み」という今までと全く同じもので、新たな外交的努力をしようという要請に一切応じませんでした。

 外相会談でも、国連総会でも韓国側から働きかけがありましたが、日本政府は同じ答えでした。10月19日の日韓首相会談では李明博大統領は何も触れませんでしたが、昨年12月18日に京都で行われた日韓首脳会談で、一時間の会談のうち40分間を慰安婦問題に裂いて、優先解決を訴えました。野田首相は「知恵を絞る」と答えました。10月の日韓首脳会談では何も言わなかった李大統領を動かしたのは、私たちの運動の力だったと思います。

 二回目の日韓首脳会談直前の12月14日に1000回目の「水曜デモ」が行われ、韓国30都市、日本15都市で共同行動が行われました。東京では、外務省を1300人で取り囲みました。その他8カ国29都市でこのような活動が行われました。その時に韓国では日本大使館の前の道を「平和路」を名付けて、「平和の碑」を立てた。「少女の碑」「従軍慰安婦の碑」とも言われていますが、正式には「平和の碑」です。

 なぜか?「水曜デモ」で、1000回その場に立ってきた慰安婦被害者たちの認識が、この間、変わってきたということです。最初は「自分たちが恥ずかしい存在」と思っていたが、「恥ずかしいのも、悪いのも自分たちではない。責任をとらない側が、恥ずかしい、悪いのだ」と、1000回のデモで出会った世界の人たちとの交流の中で変わっていったのです。ハルモニたちは、自分たちに対する認識も変わりましたが、「世界中で起こっている紛争で、現在も、女性たちが性暴力に遭っている。同じ韓国でも米軍基地で性暴力を受けている女性たちがいる。ベトナム戦争の時には、韓国軍がベトナム人女性たちに性暴力をふるった。自分たちのような存在が現在も苦しんでいる」。そういう事実をデモの場で知ったのです。
 今日会場にいらっしゃる宋神道さんも「戦争をしてはいけない」といつもおしゃっていますが、「二度とこのようなことはあってはならない」と、ハルモニたちは「平和」を訴えるようになりました。毎週1000回、日本大使館前に立ってきた。だからどうしてもその場に建てなければならないと考えたのが「平和の碑」なのです。そういう経緯があったことを理解して欲しいです。  

「人道的解決」の不当性

今年3月1日の「三一節」で、李明博大統領が日本軍慰安婦問題に言及しました。私たちも3月2日に東京で市民集会と院内集会を行いました。3月21日には李大統領が内外のメディアに対して、「法よりも人道的な解決が必要」と述べました。これには失望しました。

「人道的解決」「人道的措置」というのは、日本政府も言ってきたことですが、加害者に言われたら、それは被害者にとっては大変な屈辱です。それならやらないほうがマシだと思います。

そういう発言を大統領がしたので、「挺対協」は発言の意図について質問書を送りました。

 これに対して4月27日に韓国外交通商部から答弁書が出ました。あまり報道されていませんが「日本側が『請求権協定で全てが解決した』と言うので、法的責任はないという硬直した論理から脱皮すべきという点を強調したものであって、法的責任を不問に付すという趣旨ではない」という内容で、大統領発言をフォローした形でした。

 しかし6月11日の内外メディアとの記者会見で、李大統領は再び「日本政府は加害者として被害者に人道的措置を必ずとらなくてはならない」と発言しました。私たちの考えとはやはり一致しない部分があります。翌日すぐに、外交通商部が「『日本政府が国家責任を認め、賠償などの法的措置をとらなくてはならない』という韓国政府の立場は変わっていない」というコメントを出しました。

 李明博大統領の立場は「慰安婦問題を解決しろ」という国内世論に押されて、「解決する」するとは言いますが、せいぜい「人道的解決」という発想しかないのかな、という感じがします。この様な発言に対して、外交通商部が二回続けてフォローしました。

  画期的な大法院判決と日本政府に求められるもの

 3月と6月にあった李明博大統領の「人道的解決」発言の間、今年5月24日に韓国大法院(日本の最高裁判所にあたる)で重要な判決がありました。

 「三菱重工」と「新日鉄」に強制徴用された被害者と遺族が会社に対して行っていた損害賠償請求訴訟で、原告敗訴判決をそれぞれ破棄して、高裁に差し戻すという判決です。「日本の植民地支配は不法だった」ということをここで明確に言っています。

 高裁までは両者とも負けました。日本でも最高裁までいって原告側敗訴です。それに対して韓国大法院は「日本の判決は、『植民地支配は合法だった』という前提に立っているが、韓国の憲法では、日本の植民地支配は不法だと考えているので、日本の判決をそのまま認めてしまたら、韓国の公序良俗に反する」という内容でした。昨年8月の憲法裁判所の決定をしのぐような大法院の司法判断が出たので、韓国の市民社会、市民運動は盛り上がっていると思います。

 1965年、朴正煕軍事独裁政権が、被害者や国民の意思は無視して、日本政府との間で結んだ協定によって、当時の法には沿っていたとしても、今の人権感覚で考えれば、不当や不正義に対してはその後の国家が判断を改めて、きちんと責任を取るべきだと思います。不法かどうかを形式的に争っても意味がないのです。現在の国際人権基準による不当性を重視すべきだと思います。植民地時代の不当性を棚上げにしたまま、日韓請求権の問題も含めて妥結してしまったことで、今も問題の尾を引いてしまっています。もっと根本的な問題解決として、植民地支配、侵略戦争を行った国の責任として不当性を認め、被害者に対しては潔く謝罪して、責任を果たして欲しい。少なくとも韓国の司法は植民地支配の不法性、不当性を問題にして、私たち民衆の意識に近づいてきました。韓国の司法は今大きく変わってきていると思います。それによってこの間の行政の対応の変化もあったというわけです。

 被害者が求めているのは、まず国に責任があるという事実認定をすること、そして事実認定に基づいて公式謝罪し、その当然の結果として賠償をするということ。この三段階を順番通りに行うことです。しかし日本政府は「平和の碑」の撤去を求めたり、今年5月にオープンした「戦争と女性の人権博物館」に韓国政府が法令に基づいて支援金を出したことに対して、「展示内容に相容れないものがある」と抗議したり、あきらかに事実認定を共有していません。野田首相は「知恵を絞っている」と言いましたが、その兆候もありません。そして今日、8月15日に李大統領が再び、従軍慰安婦問題の解決を訴えた、というニュースがあったようです。

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 梁澄子さんの報告にひき続き、97年以降、日本では教科書検定によって、「慰安婦」の記述が削除され続け、昨年にはついになくなってしまった経過について報告があり「歴史の真実を教えないことは、原発事故で情報公開しないということにも繋がる」と指摘された。

 また日本各地で行われている活動報告や、韓国以外の中国、台湾、フィリピンなどの慰安婦被害者についての現状報告や、8月15日、韓国での1035回目の水曜デモに呼応して行われた、世界各地での共同行動についても報告があった。韓国では、植民地支配からの解放67周年記念の特別集会として行われた。豪雨の中、国会議員15名や時期大統領候補も参加し、約2000人が集まったという。  

 炎天下、日比谷公園内の会場には、今年90歳になる宋神道さんも訪れ、おおいに湧いた。「おめえたちが来いというから来たんだよ。きつねに騙されたんだか。いやあ疲れたよ」「相変わらず、ひと聞きの悪い。自分で来たいと言ってたでしょ!」「デモは行くよ」会場は暖かい笑いと拍手に包まれた。

 「性暴力を受けた若い女性たちが、日本の敗戦も知らされずに戦場に放置され、帰郷できても50年以上沈黙を強いられて来た。多くの被害者が沈黙のまま亡くなった。被害者が自分の被害を恥じなければならないのですか?被害者が求めているのは、同情やあわれみではなく、被害に対する正当な解決、正義の実現です」という概要の宣言を採択して集会は終わった。

デモ参加者は、この日のために準備した「ちょうちん」をもって列に並んだ。ちょうちんには、この間無念の思いで亡くなっていった約400人のアジア各国の被害女性の名前が書き込まれていた。

 「ちょうちん」デモが日比谷公園を出発すると、東電本社前に右翼の街宣車が待機し、大音量でデモ隊に卑劣な罵声を浴びかけた。しかし、先頭に立った宋神道さんや支援者たちは一歩もひるむことなく、毅然と銀座の街中を行進し、シュプレヒコールを続けた。 「日本政府は加害責任を認めよ!」「韓国政府と協議せよ!」「慰安婦被害者に謝罪せよ!」「正義を回復せよ!」「国会は慰安婦問題解決のために立法せよ!」

 右翼の街宣車は執拗にデモ隊を追い、その度に機動隊に阻止された。

韓国で50年間の沈黙を破って名乗り出た被害者女性は235名。現在平均年齢は80歳を超えて亡くなる方が相次ぎ、生存者は61名。台湾では平均年齢が88歳で、48名中生存者は9名。フィリピンでは174名中、生存者は107名。日本政府の在韓日本大使館前の「平和の碑」撤去の動きに対して、世界各地で抗議の声が上がっている。「記念碑は経験した暴力の記憶と、平和への願いを確かにするためのもの。『終わらない戦争』を終わらせるために、世界中の女性の人権を守るために世界中に広げていきたい」


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