本文の先頭へ
ロサンゼルスでウォルマートに対する大規模デモ
Home 検索

6月30日、ロサンゼルスで、アメリカ史上最大の、対ウォルマート抗議行動が行われた。行動に参加した数千人の人々が、この、民間では世界最大の雇用者である企業に対して突きつけた要求は、「これからは従業員と地域社会に敬意を払え!さもなくば、ロサンゼルスから出て行け!」というものだった。すべての産業から労働組合員が参加して、ウォルマートの店舗・倉庫で働く人々、チャイナタウンの住民、コミュニティ活動や市民権活動に携わる団体、宗教指導者、活動家、といった人々と共に、デモ行進をした。サンディエゴ、オレンジ、サウスベイ、サンフランシスコの各郡の労働組合評議会のメンバーも、ウォルマートに対して立ち上がり、ロスアンゼルスの雇用の”ウォルマート化”を食い止めるべく、バスを連ねて駆けつけた。

デモ行進は、チームスターのトラックと、ホースメン・モーターサイクル・クラブのメンバーのバイクに先導されて、コーンフィールドの州歴史公園を出発し、チャイナタウンの通りを歩いた。色とりどりで、長い長いデモ隊の最前列にいたのは、ウォルマートの従業員とチャイナタウンの住民で、「ウォルマート=貧困」と書かれた巨大なバナーを掲げていた。デモ隊に加わっていた多くの人が「Walmart: How the 1% Hurts the 99%.(ウォルマートは、1%が99%を痛めつけるやり方そのものだ)」と書かれたプラカードを持っていた。

集会は、ブロードウェイとシーザー・チャベス・ブールバードの交差する、チャイナタウンの入り口の、ゲートの竜の真下で開かれた。グラミー賞受賞歴のあるシンガーソングライターで、プロ音楽家組合47支部の組合員でもあるトム・モレロとベン・ハーパーが、ウォルマートによるロサンゼルス侵略を食い止めようとする行動を支援して、参加者を奮い立たせるような演奏を披露した。

「ウォルマートの経営者ウォルトン一族がもっと金持ちになるために、チャイナタウンなどのLA中の、そしてアメリカ中の個性豊かな地域社会が破壊される、そんなのはまっぴらだ。」レイジ・アゲンスト・ザ・マシンのギタリストであるトム・モレロは、そう発言し、フォーク/ロックを演奏するときに名乗るザ・ナイトウォッチマンとして、人気曲「ユニオン・ソング」や、ウッディ・ガスリーの「ジス・ランド・イズ・ユア・ランド」の未検閲ヴァージョンと呼んでいる曲を歌った。ベン・ハーパーは、ツアー中のステージの合間を縫って登場し、「ウィ・キャント・エンド・ジス・ウェイ」を演奏した。ハーパーはロサンゼルスのダウンタウンに住んでおり、ウォルマートの進出が、自分自身の住む地域社会にいかなる悪影響をもたらすかについて語った。

市民権運動のリーダーであり、ユナイテッド・ファーム・ワーカーズの共同設立者、2012年の大統領自由メダルの受賞者でもあるドロレス・ウエルタや、連邦下院議員ジュディ・チュウ、ユナイテッド・フード・アンド・コマーシャル・ワーカーズ(全米食品商業労組)委員長ジョー・ハンセン、ユナイト・ヒア委員長ジョン・ウィルヘルム、チームスター合同評議会42委員長ランディ・カマック、国際港湾倉庫労働組合13支部副委員長ボビー・オルヴェラ、L.A.レイバーのマリア・エレナ・ドゥラソが発言し、ウォルマートで、人間らしい仕事と経営者に要求を突きつけることのできる力を得るために、団結を進めているウォルマート店舗・倉庫の労働者たちの勇気ある行動を讃えるとともに、ウォルマートに対して、アメリカ再建の一助となるよう、責任ある雇用者になれ、と呼びかけた。

全米食品商業労組(ユナイテッド・フード・アンド・コマーシャル・ワーカーズ国際労組)委員長のジョー・ハンセンは「我々の要求は明白だ。ウォルマートは生活できるレベルの賃金と十分な質の医療手当てを提供し、地域社会への敬意を目に見える形で表し、LA/アメリカおよび世界中で労働者の権利を認めなくてはならない。」と発言した。

ロサンゼルス郡労働連盟の財務担当執行書記マリア・エレナ・ドゥラソは「ウォルマートの代表的な商品、それは貧困だ。ウォルマートの富は、従業員を困窮させることで生み出されたものだ。しかし、ウォルマートの労働者たちは、適正なレベルの賃金や手当てを得るべく、組織化を進めている。彼らには、尊厳を持って働き、しかるべき敬意を払われる権利があり、ウォルマートの資力を以ってすれば、労働者をもっとまともに遇することは十分に可能だ。ウォルマートが貧困を売りつけるのをやめるまでは、我々は、ロサンゼルスにウォルマートは要らない。」と発言した。

ステージいっぱいにウォルマートの店舗・倉庫の労働者たちが立っていた。「私はウォルマートのクレンショー店で働いています。必死で働き、昇進もしたのに、それでもまだ、子どもたちの医療・保健では、公共のサービスに頼らざるを得ません。」販売職(アソシエイト)で、現在メンバーが増え続けている、ウォルマート・アソシエイトたちの全国組織OUR ウォルマート(ウォルマートでの尊敬を求めて団結する組織)のメンバーであるガーシュリーナ・グリーンは、こう発言した。「一生懸命働けば、暮らしがよくなるはずです。なのに、ウォルマートではそうならないのです。一握りの人間が豊かになり、残りはかつかつの生活のまま、というウォルマート型のやり方に私たちの手で止めを刺さなかったら、中流市民が全くいない国になってしまいます。私の子どもたち、私の住む地域社会のためにウォルマートを変える、そのために声を上げています。」 チャイナタウンの住民は、ウォルマートがこの地域に出店先を見つけようとしていることについて発言した。「歴史ある私たちの地域に、ウォルマートに進出されたくありません。」こう言ったのは、衡平な発展のためのチャイナタウン・コミュニティのメンバーであるキン・チェウンである。「ウォルマートが来ると、家族経営の店が閉店に追い込まれ、住民は職と暮らしの基盤を失います。ウォルマートの出店で生れる雇用では、人々は貧困レベルに留め置かれ、医療・保健といった生活の基本的な要件を公的扶助に頼らざるを得ない状態になります。私たちチャイナタウン以前にも、いろいろな地域がウォルマート進出に反対する運動をしていますし、ウォルマートがやり方を改めない限り、今後も多くの地域で出店反対の動きが起きるでしょう。」

集会では、他にも、ブリック・ウォール−トン、'サム・ウォルトンの甥'、ザ・ビリオネアズ、フィービー・ブリッジャーズが演奏し、また、カリフォルニア労働連盟委員長アート・プラスキ、SEIU-USWW委員長マイク・ガルシア、オレンジ郡労働評議会のテファリ・ゲブレ、ブラック・コミュニティ聖職者労働者連合のドナルド・ウィルソン師などが発言した。

グラミー賞を受賞したことのあるスティーヴ・アールは、ナッシュビルからビデオで、ウォルマートのチャイナタウン進出に反対してデモをしよう、とロサンゼルスの人々に向って訴えた。ノー・エイジは、チャイナタウンの地域団体がウォルマート進出に反対して開催したショーに、地元のバンドやDJとともに出演し、人気を呼んだ。また、ロサンゼルス労働評議会が、LA圏の、選挙で選ばれる公職についている人々に対して、ウォルマートからの政治資金提供を断るよう要請したことを受けて、3人の有力市長候補−市助役のウェンディ・グレウエル、市議会議員のエリック・ガルセッティ、同ジャン・ペリー−が集会への支持を表明し、ウォルマートからの資金は受け取らないことを約束した。

ウォルマートは、全米の大都市に数百点の小規模店舗を開くという野心的な新成長戦略を掲げており、ロサンゼルスの歴史あるチャイナタウン地域にも出店計画がある。ウォルマートは福利厚生のない、貧困レベルの賃金で従業員を雇ってきた実績がある。従業員の多くが医療や食糧を公的扶助でまかなうことを余儀なくされており、このために数十億ドルの公的資金が使われている。また、進出先の地域では、既存の商店などを閉業に追い込み、賃金レベルを引き下げる、といった悪影響をもたらしたという実績もある。

・情報提供=スティーブ・ゼルツアー
・翻訳=わだともこ(レイバーネット国際部)


Created by staff01. Last modified on 2012-07-06 11:35:10 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について