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交通弱者用エスカレーターは止めてもエキナカは節電しないJR東日本を批判する記事が鉄道雑誌に掲載/安全問題研究会
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黒鉄好@安全問題研究会です。

7月に入り、第1次石油ショック時の1974年以来、37年ぶりとなる電力使用制限令が発動されました(電力問題についてはまた改めて論じます)。こうした中、駅のエスカレーターを止める一方でエキナカ商店は節電しないJR東日本の姿勢を批判する記事が月刊「鉄道ジャーナル」2011年8月号(6月発売号)に掲載されました。

記事の筆者は鈴木文彦さん。鉄道ファンというよりはどちらかというとバスファンで、路線バスや高速バスの車両、運行形態、運賃制度、経営問題などバス事業全般に非常に詳しい人です。その知識と熱意が評価を受け、現在、「日本バス友の会」企画部長、NPO法人「日本バス文化保存振興委員会」副理事長等を務めています。バス関係の著書も多く、最近では鉄道ジャーナル誌上で「#私の取材メモ〜鉄道周辺でいま起こっていること」と題したエッセイ風の連載を持っています。バスファンや鉄道ファン(特にローカル線問題をウォッチしている人)の間では有名な人です。

JR東日本に対する批判が飛び出したのは「#私の取材メモ〜鉄道周辺でいま起こっていること 節電の手法に疑問」と題した8月号の記事です。鈴木さんは冒頭で、「やはりどこかがおかしい。節電を理由に首都圏の鉄道駅のエスカレーターが停止している光景である。…(中略)…節電そのものは大変いいことである。しかしどのような手法をもって節電を行うべきか、ということは、もっと議論がなされるべきだと思う」と切り出し、ご自身の最寄り駅である国立駅を例に出しながら続けます。

「上りホームのエスカレーターは朝7時から9時までの2時間しか動かしていない。とりもなおさずこれはラッシュ時にスペースを確保するためであってバリアフリー目的ではない。高齢者や障がい者、妊婦などが利用する機会の多い日中時間帯には一切動いていない。エレベーターは動かしていると事業者サイドは言うかもしれない。しかしたまたま国立駅の場合はエレベーターが改札から近く利用しやすい場所にあるが、多くの駅は所在がわかりにくく、しかも大きく迂回しなければエレベーターを利用できないのに加え、エレベーターでは輸送力も小さい」「日中、高齢者がえっちらおっちら階段を上ったり、手すりをつかんで恐る恐る下りたりしている光景を、駅ではどのように考えているのだろうか」と、交通弱者の視点で問題点をずばりと指摘しています。

「鉄道駅のエスカレーター整備は、近年、交通バリアフリー法を受けて進められたケースが多い。すなわち、問題の一つは法律に則って設置されている施設を、短期の緊急措置ならともかく、少なくとも今は先の見通しを示さずに止めているということが、交通バリアフリー法の形骸化につながるのではないかということである。また、駅のエスカレーター整備には当該地域の自治体が費用負担しているケースも多い。…(中略)…二つめはそうした多額の費用をかけ、場合によっては地域の負担を得て設置した設備を使っていないという光景が、利用者や市民にどのように映るかという問題である」。

交通バリアフリー法は、正式名称を「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」と言い、2000年に制定されました。鉄道会社等に対し、駅の新設時や大規模改良時にバリアフリー化を併せて行うよう義務づけるものですが、バリアフリー化のためだけに既存駅の改良工事を行う義務までは課していません(何かの工事をやるついでがあったらバリアフリー化も併せてやるように、というのが法の趣旨)。そのため、利用者の少ない地方駅ほどバリアフリー化が遅れる傾向にありますが、そうした駅ほど交通弱者に利用されているわけで、それならば、と地元自治体が金を出してJRにバリアフリー化をやってもらうというケースも見られます。

そうした経過をたどって設置されたエスカレーターを、金を出した地元との協議や合意を得ずに勝手に止めたとなれば、問題はJRだけではすまなくなります。しかし、かつて信濃川での不正取水などの「前科」があるJR東日本だけに、「まさか」と言い切れないところが怖いです。

そして、いよいよ本題の3つ目です。

「駅ビルを含む商業施設や集客施設で客を対象としたエスカレーターを止めているケースはまずない。利用者の方を向いた取り組みをするならば、エスカレーターを優先的に止める理由は見つけにくい。それでもなおかつ今後もエスカレーターを止めるというなら、バリアフリーを差し置いてもエスカレーターを止めることが節電には必要なのだという根拠が示されなければなるまい」「エスカレーターを止めている一方で、構内の飲料自販機や“エキナカ”の店舗がふつうに稼働し、駅名や時刻表・乗換表示などのインフォメーションの内部照明が消されて目立たないのに、広告料をもらっているからか広告には煌々と照明がついていたりする」

本来なら私が言わなければならなかったことを、よくぞ言ってくれました。「地デジ化のご準備はお早めに」のテロップが番組中は流れ、CMになると消える民放テレビと同様、JR東日本の本質がここにこそ最もよく現れていると言えます。最近、鉄道ファンの間でも「JR東日本はエキナカが本業で鉄道は副業だから」なんて自嘲気味の人もいますが、だからといってこれらを放置すればますます利用者(視聴者)不在、広告主さま万歳万歳の「御用会社」化が進んでいくことでしょう。

私の住んでいる福島では、自治体が計測した環境放射能測定値が民放テレビの番組中、ずっとテロップで流れていますが、このテロップも「地デジ化のご準備はお早めに」と同様、流れるのは番組中だけで、CMになると消えてしまいます。民放テレビはCMを流すのが本業で、番組はCMのおまけなのだということがよくわかります(こんなふざけた放送の仕方をするのであれば、民放テレビ各局は新聞のテレビ欄に「CM(合間に時々番組)」とでも書くべし)。JR東日本も同じで「エキナカが本業、鉄道は副業」という救いがたい儲け体質です。

鈴木さんは、「本当に効果があってみんなが納得できる節電の手法を考える必要があろう。そうでないと、震災後の出控えなどによって減少気味の利用者が、鉄道をさらに敬遠してしまうことにもなりかねない」と、公共交通の行方を真剣に心配しています。

私が原発問題一色になっている間に、鉄道ファンが読者層の月刊鉄道雑誌でJR東日本の恥ずべき企業体質を明らかにし、問題提起してくれた鈴木文彦さんに感謝します。私もこのような交通ジャーナリストになりたいものです。

なお、この記事の全文を読みたい方は、「月刊鉄道ジャーナル」2011年8月号に掲載されています。6月下旬の発売から10日あまり経過していますが、少し大きめの書店に行けばまだ手に入ると思います。また、成美堂出版ホームページ(http://www.seibidoshuppan.co.jp/)からも注文ができます。この気にぜひ公共交通のあり方を考えていただければと思います。

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黒鉄 好 aichi200410@yahoo.co.jp

首都圏なかまユニオンサイト
http://www3.ocn.ne.jp/~nakama06/

安全問題研究会サイト
http://www.geocities.jp/aichi200410/

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