●記録映画「世界は恐怖する」
放射能を「可視化」した映画の迫力!必見「レイバー映画祭」
7月2日のNHK「広がる放射能汚染」を見て、東京にもけっこう放射性物質が降り注いでいたと知った。狭い国土。原発はもう「卒業」しなければ日本は滅びてしまう。
半世紀も前、米ソの核実験によって「放射能雨」が何万カウント降ったという記事が新聞に躍っていた。この時代、「死の灰」と呼んでいたが、それを映画にした亀井文夫の「世界は恐怖する─死の灰の正体」は傑作だった。
この映画のすぐれた点は、武谷三男ら当時の科学者20人の協力を得て、目に見えない放射能を視覚化して「見える」ものにしたことだ。映画の特徴として人間だけに焦点をあてるのではなく、「雨→土→稲→米」といった具合に、自然の生態系を介して放射性物質が人体に吸収されていく様をとらえていること、それも昆虫や魚の遺伝実験から人間の奇形児までと、人間がいかに自然環境と深く関わる生き物であるのかを明らかにしている。映画のすごさは(ギョッとする場面もあるが)感傷を排し、科学的・実証的に対象に迫っていくところにある。
レイバー映画祭はこの映画を中心に開催される。ほかには、いま起きつつある事態をドキュメントした湯本雅典の「子どもたちを放射能から守れ!」に注目。湯本は小学校の元教師だったので、子どもの健康被害には敏感。今度も福島に飛び、「子をもつ親は立ち上がらなければ」と言う母親たちの集会や文科省に押しかけ、「表土を削る必要はない」と突っぱねる局次長に「あんたこの土をナメて下さいな」と怒る母を撮る。
「ハードレイン」など原発関連のドキュメンタリーも併映される。原発以外では「ごみと格闘する人々」や「コカコーラ・ケース」がある。後者は、コカコーラなど多国籍企業がコロンビアで470人もの労働運動のリーダーを殺害した犯罪をカナダの映画人が告発していて、愕然となる。何も知らずに血の味のするコーラを飲んでいた。(木下昌明/「サンデー毎日」2011年7月24日号)
*「レイバー映画祭」は7月23日午前10時半から東京・田町交通ビル6階ホール 問い合わせ☎03・3530・8588 写真=「世界は恐怖する」より
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Last modified on 2011-07-12 22:28:37
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