投稿者: ロンドン・浦田3月26日に約50万人がロンドンに結集し、政府が進める緊縮財政政策と公共部門の支出削減に抗議した。この規模の行動は8年前のイラク反戦の大 デモ以来。主催したTUC(英国労働組合会議)は昨冬から諸準備に取り組んでいた。全国動員では、少なくとも600台のバスが使われ、多くの臨時 列車が増発された。この間、地域や職場で労組員が率先して情宣活動を展開し、週末のビラまきや夜の小集会などが繰り返され、3・26を盛り上げて いった。多くの都市で「削減に反対する連合」が生まれている。大学の教授、講師、職員などで構成される組合・UCUは、年金改悪に抗議してすでに 一部でストライキを実施した。デモは、テムズ北岸のエンバンクメントから始まり、国会議事堂、首相官邸前、トラファルガー広場、ピカデリーサーカスを経るコースで、終了地点の ハイドパークでは大集会が開催された。労働党党首、エド・ミリバンドも駆けつけた。英保守・自民党の連立政権が強行する財政「改革」では、公務員50万人が仕事を失うとも言われ、労働界は激しく反発している。とりわけ、この事態 を招いた金融危機のツケを押し付けられているという庶民感覚は強く、今回の大行動にもノンポリ市民や保守支持層が参加している。あるアンケートで は、国民の52%がデモを支持。TUC書記長、ブレンダン・バーバーも、国から財政支援を受けてきた金融界のエリートたちが70億ポンドにのぼるボーナスを手にする一方、すでに 「集中治療室に入っている」NHS(国民健康保険制度)では200億ポンドが削減されようとしていると批判。集会で演説した主要労組の幹部たちは、各組合がこんごストライキ日程を調整して相乗効果を挙げることにも言及し、今こそ軍費削減と訴えるリーダー もいた。また与党・自由民主党に連立離脱をアピールするものもいた。今後この運動をどう継続・強化させていくのかが問われている。「この日のことを誇りに思う」と下から3・26に取り組んできた仲間たちは口々に語 る。彼らが引き続き運動の原動力となるのだ。TUCは、投機目的の国際通貨取引に対する課税を強化する「ロビンフッド税」を提唱しており、税率を平均0.05%とすれば、英国で年間 2,500億ポンドの税収が見込めると試算している。なお、ごく一部の参加者が暴徒化した事件で、バーバー書記長は「遺憾の意」を表明。一方、国営放送BBCなどは、警備対策が適切であったかと問う ている。警視庁は、学費値上げに抗議する学生デモ(昨年11月)でも人員の配備を誤り保守党本部が占拠されるという大失態を演じている。また、強 引にデモ参加者を広場などに長時間封じ込める警備手法(kettling)が国会議員からも懸念されるなど、この間そのあり方が取り沙汰されてい た。