句集「がつんと一句!ワーキングプア川柳(レイバーネット日本・川柳班編
著)」から僕はこの6句が、とても気に入りました。鶴彬(つるあきら)の作品への
共感も併せて素敵な6句に感謝をこめて一言感想を述べさせてもらいます。
クビになりパンダの縫いぐるみ着るバイト 嶺香
残業つづき人間に戻れない 浜ぶどう
妻のうつ子のうつ背負い前かがみ 世直士
「ボーナス」と言ってみたいな夏と冬 Qちゃん
連帯を忘れていたと気づく今 亜北斎
作りたい腹の底から笑う歌 やせ蛙
******鶴彬(つるあきら)への感想も込めて思ったこと*******
鶴彬(つるあきら)
・神国の富士飢餓日本の三原山
・きょうのよき日の旗がたってあぶれてしまう
・空家ありあまるというのにベンチベンチの野宿
三原山には、心中・自殺で有名な火山口がある。飢餓列島日本。何が神国だ。今日の
良き日祭日には街中に日の丸がはためく、しかし日雇い労働者には失業の日だ。日払
いの派遣や日給労働者にとって正月や5月の連休がいかに憂鬱か。正月やクリスマス
を憎んでいる子供たちがいかに多いか。昔の話ではない、今日の話だ。
ベンチベンチの野宿すら今や認めない「ベンチの柵」。<空家ありあまる>にこそ的
を絞りたい。
嶺香さんの「クビになりパンダの縫いぐるみ着るバイト」。こわい。私には、この句
に一番インパクトを感じた。鶴彬(つるあきら)に近いと思った。悔しいだろうな。
しかも顔はあの愛くるしいバンダだ。労働相談で、ディズニーランドでキャラクター
の縫いぐるみに入るアルバイトからの話しを聞いたことがある。夏は縫いぐるみの中
は暑くて臭くて体中が湿疹だらけになると訴えていた。知ってか知らずか、子供たち
は、否、いい大人たちもキャラクターに抱きついてくる。
鶴彬(つるあきら)
・もうけるのに一日二十四時間でまだ足らず
今や、24時間操業の業界は数知れない。早番・中番・遅番、深夜労働・夜勤。寒
中・猛暑の中で一晩中道路で立ちつくす警備の労働者。コンビニ、介護施設・・・。
人間の生身の健康に良い訳がない。ホルモンバランスは崩れる。良心的な医師なら全
員が反対する24時間操業、交替勤務。浜ぶどうさんの「残業つづき人間に戻れな
い」。本当にそう思う。辛い、切ない、クソッと叫ぶ。闘って人間を取り戻したい。
労働相談に来られる方で、うつ病で苦しむ人が圧倒的に増えている。こんな非人間的
な労働では体も脳細胞も破壊されないほうが、むしろおかしいのでないのか。世直士
さんの「妻のうつ子のうつ背負い前かがみ」。みんなの問題だ。他人事でない。
鶴彬(つるあきら)
・インテリが疲れて女土工起ち
・暁をいだいて闇にいる蕾
・刈れ芝よ!団結をして春を待つ
Qちゃんさんの「『ボーナス』と言ってみたいな夏と冬」。ボーナスをもらえない人が
ものすごい数で多くなっている。暴力的に「差別」を制度化する。まるで派遣や契約
社員にはボーナスがなくて当たり前のように、派遣や契約社員の前で一部の正社員に
だけこれ見よがしにボーナスを支払う。テレビでは公務員や正社員にお札を数えさせ
る場面すら見せて、去年より少しは良くなった、悪くなったと言わせる。殺意や強盗
への誘惑を抑えている圧倒的理性的な労働者が、<ひとりぼっち>を否定をして「連
帯を忘れていたと気づく今」(亜北斎さん)となるのは近い。
「インテリが疲れて女土工起ち」は過去も現在も真理だと思う。僕自身、おしゃべり
インテリ、共闘オルグで満足していないか。国家権力をして怯え震え上がらせた鶴彬
のこわさを捨てさろうとしていないか。謙虚にもっともっと見知らぬ労働者の中に入
ろう。搾取と抑圧に対して仲間たちは必ずたちあがるのだ。「暁をいだいて闇にいる
蕾」を信じよう。僕らも「刈れ芝よ!団結をして春を待つ」のだ。そして、必ずや
「作りたい腹の底から笑う歌(やせ蛙さん)」を作るのだ。
(長崎2011.1.15)
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Last modified on 2011-01-16 01:12:55
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