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非正規労働者に対するある裁判官の「命の値段」(東本高志) | ||||||
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非正規労働者に対するある裁判官の「命の値段」と障害者に対するある自立支援組織の長の「 命の値段」 投稿者: 東本高志 非正規労働者の「命の値段」(交通事故で亡くなったり、障害を負ったりした場合の逸失利益)は「 正社員より少なくするべきではないか――。こう提案した裁判官の論文が波紋を広げている」(朝日 新聞、2010年9月18日付)という記事を目にしました。 ■「命の値段」、非正規労働者は低い? 裁判官論文が波紋(朝日新聞 2010年9月18日) http://www.asahi.com/national/update/0917/OSK201009170090.html なんと惨い。「死後」まで人を差別しようというのか 新自由主義、自己責任の名のもとに格差社会を是認し、年金や失業保険、医療保険などの社会保障の 拡充、個人の社会権の保障を拒否する私たちの国のモラル・ハザード(倫理観の喪失)はここまでき てしまった。というのが、この記事を最初に読んだときの私の怒りとも悲しみともつかない感想でし た。 上記の朝日新聞の記事で派遣労働ネットワーク・関西代表、龍谷大教授(労働法)の脇田滋さんは「 論文は若者が自ら進んで非正規労働者という立場を選んでいるとの前提に立っているが、若者の多く は正社員として働きたいと思っている。逸失利益が安易に切り下げられるようなことになれば、非正 規労働者は『死後』まで差別的な扱いを受けることになる」と言っています。まったくそ のとおりです。 人の「命の値段」を人が決して自ら好んで選んだわけではない貧しさや富裕というお金のあるなしで 腑分けする。なんという貧しさ。なんという貧しい思想。こうした社会の風潮が許されてよいはずは ありません。 知的障害者の逸失利益はゼロ!? あるメーリングリストを通じて上記の朝日新聞の記事を私に教えてくださった岐阜県大垣市の近藤ゆ り子さんは、「昨年5月27日付けで、こういう論法で非正規労働者・失業者の逸失利益を低く算定 する、というのが出てくる、と予見している文書があります」、と下記のような「伊藤晃平君の施設 内死亡事故裁判の訴状」を紹介してもくださいました。 訴状:http://smile.sa-suke.com/judg_sojou.html その訴状の「第7 本件の提起する質」には次のように書かれています。 ………………………………………… 第7 本件の提起する本質 3 逸失利益算定方式の現代的矛盾 そもそも死亡事故において、現に得ている収入(ないし賃金センサス)に基づく逸失利益算定方式 を用いることは、高度成長あるいは経済が右肩上がりで成長していくという前提のもとで初めて一応 、合理性の装いを保つことが可能であった。この算定方式は、ほぼ均一に経済成長が続く社会状況を 前提として、初めてその非科学性を糊塗することができていたに過ぎない。裁判実務で 広く用いられている逸失利益算定法は、少なくとも死亡事故においては命を評価するために採られた 便宜的な手法の一つであったに過ぎない。 この逸失利益算定方式は、昨今の激しい経済変動の中で、現実的な調整方法としてもその妥当性は 失われつつある。 今日の格差社会においては、生活保護基準以下の収入しか得られない層が広範に存在する。「すべ り台社会」(湯浅誠「反貧困」)と形容される現代社会において彼らの将来収入が蓋然的に改善する 可能性は極めて乏しい。彼らの将来収入は縮小する蓋然性の方がはるかに高いのである。 いったんレールからはずれれば、労働条件は劣悪化の一途をたどる格差社会では、それらしい将来 収入を見いだそうとすると、最終的には最低賃金あるいはホームレスになる可能性を視野に入れて蓋 然性を考えざるを得ない。低収入の者に関する逸失利益算定に当たって、将来的な改善を見込んで平 均賃金を用いる社会的基盤が崩れてしまっているのである。知的障害者の自立支援事業を営む被告に して、逸失利益ゼロとの主張に固執しているのであるから、近い将 来、保険会社が「滑り台」を落ち始めた被害者に対して、心ない主張をする可能性は否定できない。 (以下略) ………………………………………… 下記はその訴状の写しに添えられていた近藤ゆり子さんのコメントです。 ………………………………………… さすがにここでは、「保険会社が(〜心ない主張をする可能性)」であって「裁判官が(〜心ない主 張をする可能性)」ではありませんでした・・・・オソロシイ現実は予測を通し越したスピードで進 行している、というわけです、酷い! 1960年代は【交通事故で亡くなったとき、女児は男児よりかなり低い(下手をすると半分)】と いうのが、裁判所でまかり通っていました。 中学生だった私がこのことを新聞報道で知ったとき、「女は男の半分の価値しかないというのか?! そんな”現実”は間違っている!」と突き刺さるように感じました。 「こんな差別がまかり通る社会では、私は生きていけない(頭の中がほとんど自殺念慮でいっぱいの ときも)」とかなり深刻に考えた”一つ”の要素です。 交通死亡事故についての性差別は、今は随分小さくなってはきました。 しかし、今でも労働者の賃金では、さまざまな名目・形態で、性差別(女性労働者の賃金を低くおさ える)はなくなっていません。 このことが、労働者全体の待遇を悪化させている(悪いままで固定化させている場合を含む)大きな 要因であることは、9月12日の非正規全国会議の仙台集会でも指摘された通りです。 <逸失利益>論で、相当に深く傷ついた記憶があることもあって(その他の要素は長くなるので省略 )、”名ばかり”ながら、私はこの会の世話人となっています、 障害のある伊藤晃平君の施設内死亡事故裁判を支援する会 http://smile.sa-suke.com/ HPをご覧の上、ご理解・ご支援・ご協力を頂ければ幸甚です。(署名を集めて頂くとか・・・) ………………………………………… さらに以下はくだんの朝日新聞記事(抜粋)。 ………………………………………… ■「命の値段」、非正規労働者は低い? 裁判官論文が波紋(朝日新聞 2010年9月18日) http://www.asahi.com/national/update/0917/OSK201009170090.html パートや派遣として働く若い非正規労働者が交通事故で亡くなったり、障害を負ったりした場合、 将来得られたはずの収入「逸失利益」は正社員より少なくするべきではないか――。こう提案した裁 判官の論文が波紋を広げている。損害賠償額の算定に使われる逸失利益は「命の値段」とも呼ばれ、 将来に可能性を秘めた若者についてはできる限り格差を設けないことが望ましいとされてきた。背景 には、不況から抜け出せない日本の雇用情勢もあるようだ。 ◇ 論文をまとめたのは、交通事故にからむ民事訴訟を主に担当する名古屋地裁の徳永幸蔵裁判官(5 8)。田端理恵子裁判官(30)=現・名古屋家裁=と共同執筆し、1月発行の法律専門誌「法曹時 報」に掲載された。 テーマは「逸失利益と過失相殺をめぐる諸問題」。若い非正規労働者が増える現状について「自分 の都合の良い時間に働けるなどの理由で就業形態を選ぶ者が少なくない」「長期の職業キャリアを十 分に展望することなく、安易に職業を選択している」とする国の労働経済白書を引用。こうした状況 を踏まえ、正社員の若者と非正規労働者の若者の逸失利益には差を設けるべきだとの考えを示した。 (略) ◇ この論文に対し、非正規労働者側は反発している。 「派遣労働ネットワーク・関西」(大阪市)の代表を務める脇田滋・龍谷大教授(労働法)は12 日に仙台市で開かれた「差別をなくし均等待遇実現を目指す仙台市民集会」(仙台弁護士会など主催 )で論文を取り上げ、「企業の経費削減や人減らしで非正規労働者が増えた側面に目を向けていない 」と指摘した。 脇田教授は朝日新聞の取材に「論文は若者が自ら進んで非正規労働者という立場を選んでいるとの 前提に立っているが、若者の多くは正社員として働きたいと思っている。逸失利益が安易に切り下げ られるようなことになれば、非正規労働者は『死後』まで差別的な扱いを受けることになる」と話す 。 裁判官の間にも異なる意見がある。大阪地裁の田中敦裁判官(55)らは同じ法曹時報に掲載され た論文で「逸失利益については、若者の将来の可能性を考慮すべきだ」と指摘。若い世代の逸失利益 を算出する際、正社員と非正規労働者に大きな格差を設けるべきではないとの考え方を示した。(以 下略) ………………………………………… 参考: ■非正規労働者に対するある裁判官の「命の値段」と障害者に対するある自立支援組織の長の「命の 値段」 http://blogs.yahoo.co.jp/higashimototakashi/8058340.html Created by staff01. Last modified on 2010-09-20 12:10:06 Copyright: Default |