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「常用型派遣」は安定?「盲腸で入院」で解雇(酒井徹)
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「常用型派遣」は安定? 「盲腸で入院」で解雇
――「特定労働者派遣」の実態――
http://imadegawa.exblog.jp/13348797/

政府は労働者派遣法の改正案を閣議決定した。
製造業派遣を原則禁止するとした上で、
「常用型派遣」はその例外として認めるとしている。
派遣先があるときだけ雇われる
「登録型派遣」と違い、
安定した雇用が見込まれるからだという。
だが……。

■契約書なし、電話一本で即日解雇…… 
岡崎市のトヨタ自動車二次下請会社で
2007年から働いていたKさんは、
今年3月24日、
派遣会社の社長から電話で解雇を通告された。
これまで約3年間、
契約書も労働条件明示書もないまま
働いてきた。
雇用保険にも入れてもらえない時期があったし、
最後まで社会保険には入れてもらえなかった。
「トヨタショック」真っ盛りの2009年5月・6月は、
出勤日が1日もなかったが、
休業手当は一円も支払われていない。

Kさんは今年3月11日朝、
盲腸になって病院に入院した。
当日、派遣会社の社長に電話をすると、
「身体を治すように」と言葉をかけられた。
2週間病院に入院し、
退院して派遣会社の社長に電話をかけた。
すると、返ってきた答えは、
「派遣先がもう要らないと言っている」という
思ってもみないものだった。
あわてて派遣先の班長に電話をかけてみると、
「あなたの代わりにもう違う人が入っている」
というのである。

■「常用型派遣」の落とし穴
派遣会社には、
「常用型」の派遣労働者しか使えない
「特定労働者派遣事業所」と、
「登録型」の派遣労働者も使える
「一般労働者派遣事業所」の2種類がある。
Kさんが所属していた派遣会社は、
一般に雇用が安定しているとされている
「特定労働者派遣事業所」だ。

Kさんは一般の派遣労働者と違って、
雇用期間の定めがない。
いってみれば、
「派遣会社の正社員」のようなものだ。
それが、
盲腸になって2週間入院しただけで、
電話一本で即日解雇。
職場にはもう別の人が入っているから
戻せないというわけだ。
こうした実態を見るにつけ、
「常用型派遣は雇用が安定している」という話は
本当かなと疑ってしまう。

登録型派遣が可能な
「一般労働者派遣事業所」を開くには、
国の許可が必要だ。
手続きも比較的煩雑になる。

それに対して、
常用型派遣労働者のみを扱う(ことになっている)
「特定労働者派遣事業所」は、
国に対して届け出をするだけで開業できる。
許可制ではない。

全てがそうだとは言わないが、
「特定労働者派遣事業所」には、
「一般」の許可を取っている会社より、
安易な会社、いい加減な会社、ヒドい会社が
かえって多いように思われてならない。
そうとでも考えなければ、
雇用期間の定めのない正社員が、
盲腸で入院したからと
電話一本でクビにされる現状は
到底理解することができない。

名古屋ふれあいユニオンは派遣会社や派遣先に
Kさんの解雇撤回と職場復帰を要求して
交渉の申し入れを行なった。
こんな会社が本当に
「特定労働者派遣事業所」の名に値するのか、
こんな働き方が本当に
「常用型」の名に値するのか、
Kさんの訴えはそのことを社会に問いかけている。

酒井徹

Created by staff01. Last modified on 2010-04-08 17:18:11 Copyright: Default

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