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LNJ Logo 歴史は被告キヤノンに有罪を宣告するでしょう(萩尾弁護士)
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昨日(2月25日)のキヤノン対キヤノン非正規労働者組合組合員らの事件の私の弁論を紹介させていただきます。
(萩尾健太)



平成21年(ワ)第18457号 地位確認等請求事件

原 告    阿久津真一 外4名

被 告    キヤノン株式会社



最高裁判決の誤りと原告ら準備書面6の要旨



2010年2月25日

東京地方裁判所第19民事部 合議B2係 御中


         原告ら訴訟代理人

                弁 護 士    萩尾健太


被告第2準備書面に対し、若干の反論をするとともに、原告準備書面6の要旨を簡潔に述べます。


第1 被告第2準備書面に対する反論

 被告第2準備書面は、昨年12月18日に言い渡された松下プラズマディスプレイ事件最高裁判決
(乙33)に依拠しています。この判決に対する詳細な反論は、次回期日に行いますが、本日、一言
、申し上げておきたい。


 1 最高裁判決は明らかに間違っている

 第1に、この判決は、明らかに間違っている、ということです。

 判決は、10頁で、被上告人(吉岡さん)の雇い止めに至る上告人(会社)の行為も、大阪労働局
への申告に対する報復等の動機に起因する不利益な取り扱いであって、不法行為に当たる、としてい
ます。

 しかし、そのような、重大な違法を犯しているならばなぜ、雇い止め自体が違法・無効とならない
のか、全く矛盾しており、明らかに理由齟齬であり、論理破綻している、そのことを多くの労働法学
者も指摘しています。

 判決は、8頁で「労働者派遣法の趣旨及びその取締法規としての性質」を理由に、派遣法違反があ
っても「派遣労働者と派遣元との間の雇用契約が無効になることはない」としていますが、こうした
価値判断が、雇い止めを無効としなかったことの背後にもあるのかもしれません。しかし、派遣法は
、労働基準法6条の規定する中間搾取禁止を踏まえたものであり、労働基準法、ひいては、その根拠
である憲法27条や、派遣労働者の保護を規定したILO181号条約と整合的に、派遣労働者保護
法として解釈されねばなりません。

 最高裁判決は、この点で、憲法やILO条約に違反します。当事者の吉岡さんは、今日、この法廷
にも来ていますが、ILO条約勧告適用委員会への申立を準備中です(上記注意点)。最高裁判決は
、ILOで糾弾されることは明らかです。この最高裁判決は、そのふさわしい場所=歴史のくずかご
へ行け、それが、国内外の労働者・法律家の声です。


 2 当裁判所は、この最高裁判決に縛られてはならない

 第2に、当裁判所は、この最高裁判決に縛られてはならない、ということです。日本は、判例法の
国ではありません。憲法76条は、すべての裁判官の独立を規定しています。判例違反は、上告受理
申立理由になり、判例について、「最高裁は再考せい」、と促すことになるだけです。

 法的安定性、という言葉もあります。しかし、間違った判例による違法な秩序を安定させることは
、不正義以外の何ものでもありません。

 いま、深まる格差と貧困の中で、派遣法の改正が国政の重要な課題となっています。歴史がそれを
求めているのです。裁判官には、ぜひ、この最高裁判決の誤りを正す判決を書いていただきたい。そ
して、「青野判決」として、歴史に名を残していただきたい。


第2 原告準備書面6の要旨

1 裁判所による求釈明

前回2009年12月17日の口頭弁論において、裁判所は、原告らの2007年10月における有
期雇用契約の成立に関して、「真に自由な意思」に因らないとの原告の主張について、意思表示の瑕
疵を意味するものであれば、契約自体が成立しないことになるが、外形的には原告らは有期雇用契約
に基づく業務に従事している点について、如何に考えるべきか、原告らに対して釈明を求めました。

それに対する釈明は、次の通りです。

 原告らは、2007年10月以降の労働契約の期間の定め、およびそれに基づく賃金の定めの効力
に関して、上記の「真に自由な意思」を要素とする契約の意思解釈論を主張しています。それととも
に、当該「労働条件変更に合理性がないと裁判所等によって判定されること、を遡及的解除条件とす
る承諾の意思表示」としての「異議留保付承諾」論を選択的に主張しています。

 その詳細は、準備書面6記載のとおりです。


 2 被告による解雇と裁判所への要請

被告キヤノンは、原告らのこうした主張を分かっていながら、昨年8月末、原告らの異議留保を問題
として、原告らを解雇しました。原告らを偽装請負で働かせるという違法行為をしながら、原告に有
期労働契約を強制し、休業措置に追い込み、挙句の果てに解雇する、このような無法を、原告らは絶
対に許すことができません。原告らは、その人生を賭けて、被告キヤノンと闘っています。

被告キャノンは、第2準備書面で、偽装請負について開き直るかのような記述をしています。歴史は
、こんな被告キヤノンに有罪を宣告するでしょう。

当裁判所も、それに合致する判断をされますよう、要請して、私の弁論を終わります。 


                                             
                   以 上

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