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JR不採用事件 : 「解決」に冷や水あびせる前原国交大臣
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投稿者 : 鉄建公団訴訟原告 M

国家ぐるみによる組合つぶしの被害者救済すら背を向けるのか!

  派遣村が突き出した日本の労働者の目を覆うばかりの貧困状況は、1980年代初に中曽根首相が米国から輸入し歴代自民党政府による、民営化・規制緩和を中心とした新自由主義政策によって作られた。そうした生活、労働、地域破壊に、多数の国民がNO!を突き付けたことで実現したのが民主党を首班とする「政権交代」だった。

 しかし、「コンクリートから人へ」「友愛」などを政治スローガンに掲げた民主党の最近の政策は、高校授業料の無償化対象から朝鮮学校を外したり、米軍普天間基地の県外・海外への移転を求める沖縄県民の圧倒的多数の声を軽視するなど、言ってきたこととすることが全くちぐはぐとなっている。

 さらに、最近ではこうした格差貧困社会を創った元凶ともいえる国鉄の分割民営化に伴う国労つぶし事件の、23年ぶりの解決にも影を及ぼそうとしている。裁判で不当労働行為が明確に認定されながらも、国鉄改革法23条という現職エリート裁判官によって作られた悪法によって、職場復帰もかなわず一人当たり550万円(金利を含め約1200万)の慰謝料しか支払われない不遇におかれている。

 こうした裁判の限界から、国策として行った国鉄改革で不当労働行為(組合差別)が認められたことは、この問題に関わってきた国(司法・立法・行政府)の責任も大きいとして、政治による解決を求めてきた。

 そうした経緯も含め、政権交代という情勢も加わり与党3党に公明党も加わった4党による解決案が2月23日に作成・提示された。その内容は、年金分を含んだ解決金287億円と200名をJR各社に採用するというもので、23年間の解雇期間で計算すれば年間約260万円であり決して「高すぎる」などという金額ではない。

 この23年ぶりの解決に期待を抱く闘争団・家族に、冷や水を浴びせているのが前原国土交通大臣である。彼の発言を要約すると「裁判所の和解案からするとこの解決案は高すぎる。四党合意の水準が妥当」ということである。ちなみに2000年の四党合意の中身は、解決金80万円、JR本州3会社の関連企業に75名という、およそ解決案などといえる代物ではなかった。

 しかも、この四党合意のなされた時点では、裁判所でも不当労働行為が認定されていなかったこともあり、そもそも比較対照できないものである。にもかかわらず前原国交大臣が強弁する背景には、徹頭徹尾採用差別事件の解決に反対してきた国交省・鉄道局の存在が大きいといわれている。さらに、現在の鉄道局長である本田勝氏は、組合差別をやっても新会社JRの責任は問われない仕組みを内在した国鉄改革法23条の法案作成に関わった人物である。

 「国労をつぶせば総評がつぶれ、社会党がつぶれることを意識してやった」(中曽根元首相)国家ぐるみの犯罪に抗し、国賊とまで呼ばれた汚名を晴らすために23年間も塗炭の苦しみに耐えてきた者達に対して、最低限の路頭に迷わない解決すら許されないのであろうか。

 それもあろうことか、国家ぐるみの犯罪に加担したJR経営陣や鉄道局官僚を庇うかのような高飛車な発言は、ついに官僚に屈し「政治主導」すら投げ捨てることを意味するのであろうか。 (2010年3月15日 鉄建公団訴訟原告・M)

*参考資料 「西日本新聞」2010年3月13日


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