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●映画「パレード」

寄る辺なき若者らの青春映画 その根っこにある「住宅問題」

「命を守りたい」という鳩山首相の施政方針演説が話題となった。命の基本とは食う・着る・住むである。その手だてについて首相は語らなかったが、いまや日本は働く場を失うと同時に住む所も失う社会になっている。そんな社会で人々はどう生きるのか。

 今日の若者の生態を描いた行定勲監督の「パレード」はその「住む」問題に光を当てていてちょっと考えさせられた。原作は吉田修一の同名小説で、映画的に改変されているものの大筋では小説通りの展開となっている。

 主要な舞台は、東京のとある2LDKマンション。そこに4人の若者が共同生活している。一室には21歳の大学生と28歳の映画会社勤務の二人の男が、もう一室には23歳で無職の美人と24歳の雑貨屋店員の二人の女が、共通の趣味も性的関係もなくてんでに暮らしている。そこに金髪の若い男娼が舞い込んできて穏やかだった日常が波立ち始める。

 このマンションには、元は28歳の男とその恋人だけが住んでいたが、いつしかかかわりのない若者たちが転がりこむようになり、恋人の方は新しい男をみつけて出ていった─という前史がある。その意味では、青春期特有の若者の気ままさに焦点を当てた作品とみることができよう。彼らの関係も一見友達のようにみえて「居たければ笑っていればいい、嫌なら出ていけばいい」といった希薄さで、自分の住む場を確保するためだけの結びつきでしかない。

 映画は、マンション周辺の上空をヘリが飛びかい、テレビが近くで起きた連続婦女子傷害事件を報じる不穏な朝のシーンから始まる。そしてドラマは(これ以上書けないが)衝撃のラストシーンへとなだれこむ。見どころは、寄る辺なき若者たちが住む所を失うことを恐れ、事件にさえ無関心を装う、病んだ時代の心の闇をえぐり出したところにある。そこが怖い。(木下昌明/「サンデー毎日」2010年2月28日号)

*映画「パレード」は2月20日、東京の渋谷シネクイント、新宿バルト9ほか全国ロードショー (c)2010映画『パレード』製作委員会


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