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LNJ Logo アジア記者クラブ講演会:三井環氏が検察の裏金犯罪の実態暴露
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「15か月ぶりのビールは実にうまかった。自由は本当にいいものだと実感した」。検察組織の内部にはびこる「裏金作り」を告発しようと02年4月、テレビ番組の収録のために自宅を出たところを突然 逮捕され、裁判の末に服役した三井環・元大阪高検公安部長(写真下)が、1月18日に静岡刑務所を満期出所した。

ちょうどひと月後の2月19日夜。東京・水道橋の「在日韓国YMCAホール」で開かれた集会で講演 した三井氏は、1年半の服役で体調を崩し、大きな演台に埋もれるようにマイクに向かった。「アジ ア記者クラブ」が定例会として企画した。 定員を大きく上回る220人の参加者が通路まであふれ、検察・メディアが仕立てあげた「悪徳検事」 の発言に、熱心に耳を傾けた。

全国の検察には、法務省から配分される「調査活動費」(調活費)という予算がある。中小の地検では年間約 400から500万円。東京地検では約3000万円。大阪地検では約2000万円と、担当する事件数ではなく、 庁の規模で年額が割り当てられる。これが裏金の原資になる。

同様に予算を配分される公安調査庁とは異なり、検察に情報を提供する人物など、本当は一人もいな いのだという。検事は架空の「情報提供者」をでっちあげ、事務官が領収書をねつ造し、タレこみへの「謝礼」を 経費として処理する。1件3〜5万円。明らかな私文書偽造である。

「地検への任官と同時に、上司に裏帳簿の作り方を教えられた」と三井氏は明かす。全国で年間6億 円。この全額がプールされ、幹部の一身専属的な接待費や遊興費に使われるわけだ。すべて国民から 搾り取った血税である。

「こんなことが許されるのか」――高知、高松地検時代の6年間、自身が裏金作りにかかわるなかで、矢も楯もたまらなくなった三井氏は、たった一人でこの組織的不正に立ち向かう決意をする。

ところが2002年4月22日。テレビ番組で証言するために自宅を出た彼を、大阪地検は逮捕する。容疑は、三井氏が暴力団組長の親族名義で購入したマンションに、居住の実態がないのに虚偽の転入届を提出し、証明書を詐取した「電磁的公正証書原本不実記録・詐欺罪」。捜査情報の収集などで便宜を図る見返りに、元暴力団組員から高級クラブなどでの飲食接待などを受けた「収賄罪」、「公務員職権乱用罪」である。

これらの行為は、検察内部では暗黙のうちに行なわれており、事情を知る関係者らは「口封じのための明らかな別件逮捕」と口を揃える。三井氏は最高裁まで闘った末に敗訴。08年10月17日に大阪拘置所に収監された。

三井氏は、裏金作りのからくりを暴きつつ、検事総長はじめ、検事長、検事正ら各級トップの責任者を証人として国会に呼ぶことを求めてきた。だが法務・ 検察当局は、裏金の存在をいっさい認めていない。そりゃそうだろう。もし認めてしまえば、双方の存在を揺るがすほどの歴史的な大事件に発展するからだ。

だからこそ、政治家の贈収賄事件など、支配層への検察の捜査は、国民の「人気取り」のために演じられ、同時に自民党政権を崖っぷちぎりぎりのところで延命させてきた。スネに傷を持つ検察の裏金問題は、その時どきの政権との取引で、巧みにもみ消されてきたのだ。

会場には、ジャーナリストらも多数駆けつけ、小沢一郎の政治資金問題、検察の捜査能力の問題、裏金の証拠物件の保有など、さまざまな質問が出された。

元秘書ら3人が逮捕・起訴された小沢一郎周辺の今回の騒動について、「ムダ遣い一掃」を掲げる民主党の動きに対する検察の危機感とけん制であり、「小沢つぶしのための暴走」だと三井氏は見る。 そのうえで「形式犯罪だけで、国民から選ばれた議員を逮捕すべきではない」と釘を刺す。

三井氏はさらに、刑務所内での処遇の問題にも触れた。受刑者の生産活動による「作業収入」を管理 するのは、財団法人矯正協会。所内での物品販売を含めると、その収益は年間約97億円にも上る。 三井氏が出所時に受け取ったのはわずか12000円。法務・検察の天下り団体が法外なピンハネを行ない、元受刑者には再犯を誘発するような「雀の涙」しか渡さない。怒りが治まらないのは当然だ。

慎重に言葉を選びながら、ゆっくりと間合いを取りながら、三井氏は話し続けた。昨年6月には仮出 所の打診があった。しかし検察サイドの横やりで取り消されたという。刑務所長の釈放申請に対し、 関東地方更正保護委員会がそれを却下する率はわずか2%。当局がいかに三井氏の言動を恐れているかがわかる。

「私一人の戦いでは、どうにもならない。多くの国民の後押しが必要だ」と力を込める。検察 は国民に謝罪して裏金を返すべきであり、「千葉景子法務大臣が指揮権を発動し、大嘘をつく原田明 男元検事総長ら関係者の証人喚問を」と訴えて歩く。 晴れて自由の身となった出所日には、右から左まで、多数の支援者らに祝福された。 巨悪との闘いは、これからが本番だ。

※この日の講演内容は、「アジア記者クラブ」発行のニュースレター次号に全文が掲載され、記録映像はDVDで発売される予定。(Y)


Created by staff01. Last modified on 2010-02-23 21:15:50 Copyright: Default

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