愛知:「騙し討ち解雇だ」 労組抗議行動 (酒井徹) | |
[MenuOn] Home | ニュース | イベント | ビデオ | キャンペーン | 韓国 | コラム | About | Help [login ] | |
愛知:「騙し討ち解雇だ」 労組抗議行動 ――ホンダ系・ムサシ鉄工に―― http://imadegawa.exblog.jp/12203953/ ■正社員にした人間を「雇い止め」 労働局の指導を受けていったん正社員にした 日系ブラジル人労働者を、 その数日後に期間雇用契約書にサインをさせて 「雇い止め」したのは詐欺的な騙し討ちであるとして 10月9日、 愛知県の個人加盟制労働組合が ホンダ系列の自動車部品下請け会社に 抗議行動を行なった。 抗議行動を受けたのは 本田技研工業関連会社・武蔵精密工業系の 「ムサシ鉄工」(本社:愛知県豊橋市、代表取締役:松井繁裕)。 ムサシ鉄工は2007年9月、 名古屋ふれあいユニオン (「コミュニティ・ユニオン全国ネットワーク」加盟)に所属する 平良マルセロさんを「雇い止め」と称して解雇した。 実は平良マルセロさんは、 以前は人材派遣会社から ムサシ鉄工に派遣されていた派遣社員だったが、 名古屋ふれあいユニオンに加盟して 会社の違法派遣の実態を愛知労働局に申告。 これに基づく労働局の指導などもあり、 終身雇用の正社員として ムサシ鉄工に直接雇用されたはずだった。 違法派遣状態で働く労働者の直接雇用に 全国で取り組んでいる大阪の村田浩治弁護士からも、 当時、次のようなメールが届いていた。 ≪労働局に初めて派遣法に基づく 直接雇用の申告書を持っていった事件で、 正社員になったぞ! という宣伝をしましょう。 社員になったという宣伝はして どんどん新しい希望者を 労働組合に組織したいですね。≫ マルセロさんの事例はいわば、 ユニオンの力で派遣労働者が 正社員になったという非常に輝かしい先例であり、 労働組合にとって一種の希望の星でもあった。 マルセロさんに続き労働運動の力で、 非常に不安定な雇用状態に置かれている 非正規雇用労働者の雇用の安定と地位向上を 勝ち取ること、 今後次々と第2・第3のマルセロさんを 生み出していくことが、 ユニオンの目標となっていたところだった。 その、 期間の定めのない正社員となったマルセロさんが、 どうして「雇い止め」の通告を されなければならなかったのだろうか。 ■ムサシ鉄工の詐欺的な手口 話を聞いてみるとこういうことだ。 マルセロさんは2006年10月20日に、 ムサシ鉄工の松井繁裕社長から 「労働条件通知書」を受け取った。 松井社長は 「よく見てもし良かったら、 この同じ条件で雇用契約書を作りますから」と 言ったという。 マルセロさんはこれを持って帰り、 兄であり、名古屋ふれあいユニオンの役員でもあった 平良マルコスさんに見せた。 そこにははっきりと 「Nao determinado」(期間の定めなし)と書いてあり、 マルコスさんは弁護士にこれをファックスし、 みんなで「Nao determinado」だということを確認した。 (この文章は今でも弁護士事務所に残っている)。 上に引用した「正社員になったぞ!」という 村田弁護士の喜びのメールもこのときのものだ。 マルコスさんも弁護士も、良かった良かったと喜んだので、 マルセロさんは翌日 松井社長に、 「この労働条件は、私が欲しいものです」と伝えた。 松井社長も「わかりました」と答えたという。 こうして平良マルセロさんは 派遣労働者から正社員になった、はずだったのだ。 少なくとも、 兄のマルコスさんも、ユニオンも、弁護士たちも、 マルセロさんが「雇い止め」されるまでは ずっとそう認識していた。 ところがである。 マルセロさんがムサシ鉄工の正社員として働き初めて 10日ほど後、 松井社長が突然一枚の紙を持ってきて マルセロさんに見せ、 「見てっ。これ書いて!」と言ったのだという。 (このときは社長だけで、通訳は同席せず)。 マルセロさんは社長に「これ書いて!」と言われたので、 よくわからないまま「住所」欄に住所を、 「名前」欄に名前を、 そして「電話番号」欄に携帯電話の電話番号を 書いてしまった。 これが何と、 雇用期間の限られた、 有期雇用の期間雇用契約書だったのである。 こんな詐欺みたいなやり方があるだろうか。 ちなみにこの「雇用契約書」には末尾に、 「本契約書は2通作成し、 署名捺印の上それぞれ1通を保管する」と書かれてあるが、 上記のような事情であるので マルセロさんは「捺印」は一切していないし、 「契約書」も「2通」は作成されていない。 当然のことながらマルセロさんの側は この「契約書」を「保管」などしておらず、 会社の側が一方的に保有する状態となっていた。 ちなみにマルセロさんはその後何度も、 労働条件明示書はもらっているものの 雇用契約書は交わしていない(と思っていた)ので、 「ムサシ鉄工の『ハンコ』ついた 雇用契約書はいつ持ってきますか」などと 松井社長に質問したというが、 そのたびに松井社長は 「ああそうですね……」とか「ああはい!」などと言って ごまかし続けてきたのだという。 ■会社側、弁護士を呼んで団交拒否・退席 この問題で名古屋ふれあいユニオンは、 2007年11月6日、 ムサシ鉄工と団体交渉を行うはずだった。 当日ユニオン側からは、 浅野文秀委員長(当時)と、 マルセロさんの兄でもある平良マルコス副委員長(当時)、 運営委員のAさんと、 当該労働者の平良マルセロさんが会場に向かった。 ところが。 ここに会社側代理人として出席した 柴田法律特許事務所の柴田肇〔注1〕という弁護士が、 平良マルコス副委員長と運営委員のAさんとが 「委任状」を持っていないので交渉を拒否すると言い出し、 他の会社側交渉員もこれに追随、 団体交渉を求めるユニオンを後目に 会場から総退席してしまったのだ。 訳のわからない話である。 運営委員長である浅野さんが、 こちらが副委員長である平良マルコスであり、 こちらが運営委員のAであると言っているのだ。 二人とも組合の名刺も持っている。 なぜその上 「委任状」なるものを提出しなければならないのか。 そう言うと柴田弁護士は、 「私は会社から委任状をもらっている」と 胸を張ったのだという。 しかし、 柴田氏が会社からの委任状を持っているのは 実に当たり前のことである。 柴田氏はムサシ鉄工の社員ではない。 社員ではない人間が会社側の交渉者として、 会社と労働組合の団体交渉に出てくる以上、 委任状が必要なのは当然だ。 それに対して平良マルコス副委員長もA運営委員も、 名古屋ふれあいユニオンの組合員であり、 役員である。 交渉の当事者である 名古屋ふれあいユニオンを代表して、 団体交渉に出席するのだ。 この団体交渉は、 企業であるムサシ鉄工と 労働組合・名古屋ふれあいユニオンとの間で、 組合員である平良マルセロさんの処遇を巡って 行なわれるもので、 マルコスさんやAさんは別に 「マルセロさんの代理人」として 交渉に出席するわけではない。 組合役員に対して 「委任状」の提出を要求するというのは、 労働組合を、 会社から事案の委任を受けた弁護士か何かと同様の、 「マルセロさんの代理人」だと 勘違いしているのではないかと思わざるをえない。 もし名古屋ふれあいユニオンの側が、 組合外部の弁護士なり何なりを 連れてきたというのであれば、 当然委任状の提示が必要だ。 しかし、 労働組合の副委員長や運営委員が 氏名や立場を明らかにして出席しようとしているのに、 「委任状」の提出を求めるというのは、 いったい何を勘違いしているのか。 結局、 名古屋ふれあいユニオンとムサシ鉄工との間では 今日に至るも団体交渉は一度も開かれたことがない。 〔注1〕本件で団体交渉を求める 名古屋ふれあいユニオンに対し、 団体交渉を拒否して 会社側交渉員総退席の音頭を取った柴田肇弁護士が、 何と豊橋市の人権擁護委員(!)を務めていることが 判明した↓。 http://www.city.toyohashi.aichi.jp/fukusi/jinken.html 世も末である。 人権擁護委員は各市町村町が法務大臣に推薦し、 法務大臣が任命する役職だ。 組合内では柴田弁護士の団交拒否の姿勢に怒り、 「弁護士会への懲戒請求」を行なった者もあるほどだ。 個人的には筆者は、 依頼人の利益のためにはときには詭弁を弄し、 理屈では勝てそうにないということであれば 重箱の隅をつつくような難癖をつけて 交渉そのものを回避するというようなことも、 弁護士を単に収入を得るためだけの 職業と割り切るならば、 あり得るかなとも思っている。 だが、 そのようなスタンスの弁護士には少なくとも、 「人権」などという言葉を語ってほしくはないものだ。 ■ムサシ鉄工側の主張 マルセロさんは社員としての地位確認を求めて 2008年、 名古屋地裁豊橋支部に提訴した。 ムサシ鉄工は裁判の準備書面の中で、 労働局から指導を受けた当初の違法派遣については、 「労働者派遣に1年間という 期間の限定が付されていることを 知らなかったことにつき、 過失があったことは認める」としながらも、 「過失により派遣可能期間を徒過したことから、 違法な労務供給契約であるとか、 公序良俗に反するなどということは、 あまりにも短絡的な議論」であると主張している。 また、 マルセロさんに渡された 「期間の定めなし」と書かれている 労働条件通知書についても、 「愛知労働局の指導に従って、 急遽、原告(筆者注:=マルセロさん)を 直接雇用することを決めたため、 どのような雇用契約を締結すればいいか困惑し、 豊橋職業安定所において、 その存在を知った様式を参考にして 契約書を作成できないかと考え、 原告に対して、 様式の利用の可否を確認するため、 例示として条件を記入して、交付したに過ぎず、 労働契約の申込みをしたものではない」などと 弁解している。 ■無断撮影指摘も「台風の被害調査してただけ」 名古屋ふれあいユニオンは マルセロさんに対する騙し討ち解雇に抗議し、 前日、FAXによる事前予告の上で 10月9日午後2時30分ごろから、 愛知県豊橋市にあるムサシ鉄工本社前で 抗議・宣伝活動を行なった。 その際、 ムサシ鉄工従業員のI氏が ユニオン側に何の断りもなく 名古屋ふれあいユニオン組合員を カメラで撮影しはじめた。 以前ムサシ鉄工の弁護士に 「委任状を見せろ」と言い掛かりをつけられたこともある 名古屋ふれあいユニオン運営委員のAさんが、 無断撮影はやめるようI氏に要請するために 敷地の中に赴いたところ、 I氏はいきなり、 「入って来んな! 出て行けッ! 出て行けッ!」などと ドスのきいた声で高圧的に Aさんを怒鳴りつけたのである。 ムサシ鉄工の正門には、 「立ち入り禁止」などの表示は特になかった。 ムサシ鉄工に所用のある人間が 敷地におもむくのは当然で、 「入ってくるな」とはそれまで1度も言われていない。 「そっちが無断で撮影しているから 行っただけじゃないですか」と ユニオン側がハンドマイクで抗議したところ、 あろうことかI氏は、 「向かいの工場を取っていただけだ」などと 実に白々しい言い訳をはじめたのである。 当日 名古屋ふれあいユニオンの抗議行動の様子を 取材していたジャーナリストの安田浩一さんも ムサシ鉄工I氏のこの物言いに興味を覚え、 I氏に取材をしたところ、 I氏はさらに、 「台風の被害調査を行なっていた (だから向かいの工場の写真を撮っていた)」などと さらに荒唐無稽な回答を行なったというのである。 名古屋ふれあいユニオンは、 別段世間に恥じるようなことをしているわけではないので、 抗議・宣伝活動の様子の撮影について 一概に拒絶する考えは持っていない。 ただ、 当日の抗議・宣伝行動参加者の中には それぞれの社内において 被公然に活動している組合員もおり、 撮影方法についての配慮はお願いすることに しているだけだ。 「抗議・宣伝活動の様子を撮影して 社長に見せたいのですがいいですか」と言われれば、 撮影の方法などに一定の条件を付けることはあるだろうが、 「絶対にダメだ」と主張するつもりもない。 しかし、 きちんと筋を通すこともなく 一切無断で撮影をはじめ、 それに対して要請を行なおうとしたAさんに、 ほんのちょっと敷地の中に入っただけで怒鳴りつけるとは、 一体どういう了見なのか。 そのあげくに、 「向かいの工場を取っていただけ」だの 「台風の被害調査」だのと 子供だましの見え透いた言い訳を繰り返し、 嘘に嘘を重ねる姿勢はあまりにも見苦しい。 I氏もムサシ鉄工の社員なら、 もう少し社会人として恥ずかしくない対応が取れないものか。 こうしたやり取りがあったあと、 I氏は窓も一切閉め、 ブラインドまで全部下ろして 名古屋ふれあいユニオンの訴えから 一切耳をふさいでしまった。 ユニオン側がその後も ムサシ鉄工による騙し討ち解雇を厳しく糾弾していると、 そこに薄赤いトヨタ車が ムサシ鉄工の敷地内に入ってきた。 そして車の中から、 眼鏡をかけた痩せた男性がビデオカメラを持って現れ、 またしてもユニオン側を撮影しはじめたのだ。 ジャーナリストの安田浩一さんが この人物に取材したところ、 この人物は「自分はムサシ鉄工の社員ではない」と言い、 撮影については 「ただ趣味で撮っているだけだ」と言ったという。 おかしなこともあるものだ。 ムサシ鉄工は、 従業員の無断撮影に対して要請を行うために 敷地内に立ち入ったAさんに対しては ちょっと入っただけで あれほど高圧的に怒鳴り散らしたのである。 なぜ、 従業員でもないくせに 勝手にムサシ鉄工の敷地内に立ち入って、 そこから「趣味で撮影」などを行なっている人物に 何も言おうとしないのか。 さらにこの謎の人物は、 名古屋ふれあいユニオンが ムサシ鉄工前での抗議・宣伝活動を終了し、 車で20分はかかる豊橋駅前に移動した際にも ストーカーのようについてきた。 正体も分からず、 豊橋駅前で問いつめてもなお 「趣味で撮っている」と言い張るなど 全く信用するに値しないため、 抗議して引き取ってもらった。 名古屋ふれあいユニオンは10月14日、 「当労組を徹頭徹尾愚弄する 御社のこうしたふざけきった対応に対し、 当労組は強く抗議いたします」とする抗議文を FAX・郵送で送付し、 10月17日までの回答を求めたが、 10月23日現在、 ムサシ鉄工からの返答は一切ない。 10月29日(木)には、 名古屋地裁豊橋支部にて1時30分から、 ムサシ鉄工・松井社長の証人尋問が予定されている。 名古屋ふれあいユニオンは、 「大衆的裁判闘争でマルセロさんを職場に戻そう」と、 市民の傍聴を呼びかけている。 (インターネット新聞「JANJAN」 10月26日より加筆転載) 酒井徹 Created by staff01. Last modified on 2009-10-29 13:07:30 Copyright: Default |