列車が無人で3駅走行、夜の三重・JR名松線 | |||||||
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黒鉄好@安全問題研究会です。
さて、すでに報道されているとおり、三重県の名松線で、「また」列車の無人走行事故が起きました。 「また」と書いたのは、2006年にも同じ事故が起きているからです。しかも、無人走行が始まった駅、通過区間、そして車両が自然停止した場所まで、3年前と全く同じというおまけ付き。 JR東海は、リニア新幹線計画にうつつを抜かしている場合ではないと思います。 ---------------------------------------------------------------------- http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090420-00000179-yom-soci(読売新聞)より 19日午後10時15分頃、津市白山町のJR名松(めいしょう)線家城(いえき)駅で、回送列車(ディーゼル車、1両編成)を始発運行に備えて下り線へ入れ替える準備中、男性運転士(25)が運転台を離れている間に列車が動きだした。 JR東海が捜したところ、25分後、約8・5キロ離れた津市一志町井生下田(いうしもだ)の踏切付近で止まっているのを見つけた。列車は停止までに3駅と踏切23か所を通過していたが、けが人や車両への損傷はなかった。 同社によると、運転士は車止めを外し、エンジンをかけたまま、駅の宿泊室へ荷物を置きに、約5分間、運転台を離れたという。ブレーキをかけていたが、停止場所が下り坂だったうえ、長時間の停車でブレーキの空気圧が低下していたため、自然に走り出したとみられている。運転士は本来、車両から離れてはならず、エンジンをかけた後に実施すべきブレーキの空気圧の確認や、ブレーキテストもしていなかったという。 また、計器の記録などから、無人走行の平均速度は約23キロで、踏切23か所のうち、2か所は警報機、遮断機がなかった。 同線では2006年8月にも、家城駅で運転士が車止めを置き忘れて無人列車(1両)が動き出し、今回と同じ場所まで走行するトラブルがあった。 ---------------------------------------------------------------------- 3年前と全く同じ事故であるせいか、さすがに今回は地元、中部地方のマスコミの反応も厳しいようです。 読売の記事には、運転士個人の責任であるかのように報じられていますが、当研究会がすでに明らかにしているように、ヒューマンエラーは必ず起こります。それを超えた安全対策を取ることが必要です。 さしあたり、3年前の事故を契機として、JR東海はエンジンを切った際にブレーキがかかるようにするなどの改良をしているようですが、長時間停車をするとブレーキ力が弱まるというのは、やはり車両の欠陥だと考えます。 家城駅は勾配になっており、そのことも事故の原因であると考えます。国鉄時代の規定では駅構内は原則として平坦にしなければならないと定められていましたが、やむを得ない場合には1000分の3(1000mの間に3mの高低差)まで勾配を設けることが認められていました。やむを得ない理由とは、ここを平坦にすることによって駅前後の区間で列車の運転が困難なほどの急勾配が生まれる場合などです。名松線は、家城〜伊勢奥津間の勾配が急で、建設当時の鉄道技術では家城駅構内を平坦にできない事情があったと思われます。 しかし、技術が進歩し、今ではディーゼル車の出力がアップしているため、駅を平坦にすることにより、前後の区間の勾配が増しても運転に支障はないものと考えられます。この際、家城駅構内を平坦にするなどの対策が必要だと思います。 別の観点から見ると、家城駅より過酷な状態の急勾配駅(例えば、1000分の33の勾配上に設置されている明知鉄道・飯沼駅や1000分の25の勾配上に設けられているJR磐越西線・中山宿駅など)でも、この種の事故は起きていません。その意味でも、「勾配上の駅だから仕方ない」ではすまされないと思います。 ちなみに、ご紹介した飯沼駅は「通常運転方式の鉄道としては日本で最も急勾配上に設置されている駅」の記録を持っています。その駅でさえ無人車両が走り出す事故は起きていないのに、なぜここ家城駅ばかりこのような事故が起きるのか。その疑問を解く鍵になりそうなのが、家城駅が名松線の運転上の拠点駅になっているという点です。 名松線は、紀勢本線の松阪を起点とし、伊勢奥津までの全区間で、列車がすれ違える場所が1カ所しかなく、それが家城駅です。全線が松阪〜家城と家城〜伊勢奥津の2閉塞区間しかないため、最大で2列車しか運転できません。松阪〜家城間と家城〜伊勢奥津間を走る列車は必ず家城駅ですれ違い、その際に、スタフと呼ばれる一種の通行証を駅長から受け取ります。名松線はいまだに信号が自動化されていないため、このスタフを携帯した列車しか当該区間に進入させないことにより、安全を確保する仕組みになっています。列車が極端に少ないローカル線だけに生き残った、「スタフ閉塞式」と呼ばれる特殊で最も原始的な運転形態です。 こんな地方のローカル駅なのに、このスタフと呼ばれる通行証の受け渡しのため、家城には駅員が常駐しています。このスタフの受け渡しの他、家城駅には車両基地もあり、列車のすれ違いがあるなど、列車が長時間停車する機会が多いところです。上でご紹介した飯沼や中山宿は、旅客の乗降を取り扱うだけの通常駅で、停車させた列車から運転士が離れることはまずありません。 家城のような、運転取扱上の拠点駅を勾配の上に設置したことが、無人列車暴走事故の背景にあるといえるでしょう。 Created by zad25714. Last modified on 2009-04-21 00:19:24 Copyright: Default |