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木下昌明の映画批評「誰がため」〜デンマークの反独抵抗運動
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●映画「誰がため」

ナチvs.レジスタンスの構図に 隠された深い謎と戦争の素顔

 ナチス・ドイツに占領された国々では、戦後、抵抗運動の映画が盛んに作られた。多くはフランスを舞台にした作品だが、この場合ナチスは悪玉で、抵抗派は善玉だった。が、昔みた「将軍たちの夜」(1966年)は、当時としては珍しくナチの将校が抵抗派の一員と手を結び狂信的なナチの将軍の犯罪を暴く映画だった。そこから国家と国家の敵対を超えて戦後の“よりまし”な資本主義圏を築こうとする動きも垣間みることができた。

 デンマークにも反独抵抗運動があったことを、オーレ・クリスチャン・マセン監督の「誰がため」をみてはじめて知った。ここにもひと味違う抵抗運動が描かれている。

 デンマークでは、占領下、通称フラメンとシトロンと呼ばれる地下組織の二人の青年が、ナチとその協力者たちを震え上がらせていたという。これはその実話をもとにしたドラマで、暗い時代を背景に、テロがテロの報復を呼び、はてしない殺し合いにのめりこんでいく二人の姿が描かれている。

 ある時、23歳で怖いもの知らずのフラメンの前に、年上の妖しい魅力をたたえた女が現れ、彼は女のとりことなる。彼女はフラメンらの上司の運び屋をしつつ、ゲシュタポのリーダーにも協力している二重スパイだった。事態は思わぬ方向に展開していくサスペンスミステリー。

 二人の青年は、上司を信じ、命令されるままに行動していたが、ふとしたことから何かがおかしいと疑心暗鬼にかられる。実は、殺した相手も反ナチの活動家で、上司は金儲けの邪魔になってヤ愛国心ユにかられる二人を利用したのだと女に教わる。彼らは誰がために暗殺してきたのか?

 65年の時をへて反独抵抗運動映画は、単なるナショナリズムの高揚ではなく、テロのむなしさとともに“愛国心”の裏で、ゲシュタポとつるんだ軍や警察上層部の醜い姿を暴き出している。―ラストで、女が流す一滴の涙は何だったのか? (木下昌明/「サンデー毎日」09年12月27日号)

*映画「誰がため」は12月19日から東京・渋谷のシネマライズで公開。ほか全国順次ロードショー


Created by staff01. Last modified on 2009-12-26 12:20:07 Copyright: Default

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