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報告:反貧困ネットが「選挙目前!私たちが望むこと」集会
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総選挙を控えた7月31日夜、「私たちが望むこと」を掲げた集会が都内で開かれた。主催は「反貧困ネットワーク」。経済危機の深刻化に伴うさらなる貧困の拡大を許さず、人間らしく生きられる社会の実現を求めて、アピールを発した。お茶の水・総評会館に、多数の報道陣を含め、満員の350人が集まった。2009年の「反貧困キャンペーン」のスタート企画として呼びかけられた。

 宇都宮健児・同ネット代表がこれまでの活動を紹介し、「みんなでがんばって、貧困問題に取り組む政治に変えていこう」とあいさつした。

■17項目の要求書

「反貧困ネット」では、「私たちが望むこと」と題した文書を作成。「生活保護」「年金」「住宅」「女性」「外国人」「医療」「社会保障」など17のテーマを並べ、それぞれの分野で具体的な要求を打ち出した。このテーマに該当する当事者たちが、次々と発言に立った。選挙に向けて「マニュフェスト」を用意した政党の国会議員も列席した。

 日本の学費は世界最高レベルの高額。そのため、個々の家庭の経済事情で進学の機会が奪われるうえに、奨学金制度の門戸も狭く閉ざされている。「沖縄なかまユニオン」の発言者は、食費を極限まで切り詰めながら生活する学生の実態を、つぶさに報告した。

 自民党の森雅子参院議員も同様に、貧しかった学生時代を振り返った。弁護士になって、宇都宮代表とともに多重債務の問題に取り組んできたという。「今回の選挙では、政党の名前だけでなく、候補者が反貧困活動をしてきたかどうかを見極めて欲しい」と強調した。

 菅直人民主党副代表・前衆院議員は、「派遣村が開かれるまで、貧困問題が見えなかった」と「反省」し、「貧困の実態調査は必ず行なう。みなさんの活動が、私たち政党へのプレッシャーになっている」と言明した。

■自民党政治を終わらせよう

日本共産党の大門実紀史参院議員は、「私たちの要求をはね返す勢力がいる。財界・経団連だ。社会保障を削減、派遣労働の拡大を実現した自民党政治を、今度の選挙で終わらせる。そして派遣法の抜本改正をする。生保の母子加算の復活などは、当たり前のことだ」ときっぱり。国民新党の亀井郁夫参院議員、無所属の川田龍平参院議員がそれぞれ発言した。社民党の保坂展人前衆院議員は、「このかん派遣法の抜本改正を訴えてきた。50年前の日本には、炭鉱離職者へ最大3年間の生活保障があった。こうしたセーフティネットを継承するために、党を挙げて取り組みたい」と決意を表わした。

「枯れ木に水をやるようなもの」と揶揄された老人医療制度は、悪名高き「後期高齢者医療制度」へと後退した。「患者の権利オンブズマン東京」の大山正夫さんは82歳。糖尿病を患っている。老人を差別し隔離する同制度をわかりやすく批判し、即刻廃止を訴えた。

「保険医団体連絡会」の寺尾正之さんは、果てしなく上がり続ける保険料と減り続ける保険給付について解説した。自民党は世論の逆風を受け、「75歳以上の就労者を、後期高齢者医療制度から除外する」としたマニュフェストを発表。だがその対象になるのは、1300万人の高齢者中、40万人しかいない。「キャノンやトヨタの企業の役員たちは、『姥捨て山』のこの制度に移らなくて済む。安い保険料で十分な医療が保障されるわけだ」と欺瞞を暴き、「今回の総選挙で、真の敬老医療制度をつくるきっかけにしたい」と結んだ。

■理不尽な現実、切実な訴え

日野自動車ユニオンの佐藤弘之さんは、「派遣切り、寮の追い出し」に遭った。工場前でビラまきをしていた「ガテン系連帯」と知り合い、組合活動を通じて一度は派遣から期間工になったものの、「偽装請負」など工場内での立場が二転三転した。実施中の「エコカー減税」を「自動車業界エコヒイキ減税」だと痛烈に皮肉り、派遣法の改正を訴えた。

都の臨時職員として働く根岸恵子さんは、正規職員との露骨な差別待遇を糾弾した。細切れ任用や日給制など、正規職員に与えられているさまざまな権利が、臨時職員には一切ない。交通費も支給されず、有給もない。子供が高熱を出しても出勤せざるを得ない過酷な現実がある。「官製ワーキングプア」である。同じ職場で働きながら、非正規職員だけが前近代的な労働条件を強いられている理不尽に、根岸さんは怒りをあらわにした。

中小零細の町工場は、長引く不況で大打撃を受けている。自動車部品製造会社を経営する柳沢さんは、売り上げが半減し、社員15人の社会保険料の支払いも困難な状況に追い込まれている。融資にもあれこれと制限がつき、「景気がいいのは大企業だけだ」と肩を落とした。政府は親身になって中小企業支援策を考えてほしいと、唇をかんだ。いよいよ終盤。伊藤圭一(全労連・同ネット)さんが、参加者に配られた政策提言を説明した。

■貧困削減の数値目標を

 主催者5人、当事者17人が訴えたこの国の貧困の惨状と、朽ちかけたセーフティネットのもろさ。「数の論理」で新自由主義的規制緩和にまい進してきた、自公政府のごう慢と横暴の結果である。一日3食を食べられない人々でも、服を着て靴を履いてはいる。それを見て「まだ余裕がある」と言い切る人々がいる。私たちが築いてきた社会は、そんな情けないものだったのか。それが私たちの社会だったのか、と主催者は問いかける。

同ネットは政府に、1965年以来行なわれていない「貧困率」の測定を求めている。そのうえで、貧困削減の具体的数値目標を掲げるよう進言する。先進国でも類まれな社会保障の低水準を改善するよう働きかけ、半世紀ぶりの政策転換を迫っている。

貧困率の公認はもはや、この現実に立ち向かおうとする政府の「意思」の問題になっている。事務局長の湯浅誠さん(写真上)が「集会宣言」を読みあげ、参加者が満場の拍手で確認した。

赤石千衣子さん(しんぐるまざーずフォーラム・同ネット副代表・写真上)が、「今日発言した障がい者、外国人労働者、シングルマザー……、この人たちの待ったなしの状況を変えていかねばならない。この会をさらに広げて、政治を変えていこう」と閉会のあいさつをした。

4年に一度の、貴重なチャンスが訪れた。人間らしい生活と労働の保障を求めてつながろう。貧困問題を解決しない政治家はいらない。私たちの望みを正々堂々とぶつけるのは、今しかないのだ。(報道部・Y)


Created by staff01. Last modified on 2009-08-04 22:13:09 Copyright: Default

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