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報告〜シンポジウム「メディア企業の中のフリーランス」
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発言者は右から、ヘラルド朝日労組・松元千枝さん、映像ディレクター・西野保さん、東京大学准教授・林香里さん、主婦と生活社労組・網谷茂孝さん、出版ネッツ・広浜綾子さん

 6月17日、マスコミが絶対に取り上げず、なかなかスポットが当たっていなかった「マスコミ内部の労働問題」に取り組む一歩が踏み出された。

 出版労連の主催する出版研究集会の1コマとして開かれたシンポジウム「知ってますか?隣の人の働き方 〜メディア企業の中のフリーランス〜」に、新聞、テレビ、雑誌などの現場で働く人たちを中心に60名が参加し、ホットな討論が交わされた。

 ヘラルド朝日労組の松元千枝さんは、朝日新聞社による「偽装請負」の実態を語り、「不当な格差はモチベーションを下げ、読者の不信も買っている」と指摘。主婦と生活社労組の網谷茂孝さんは、「うちも常駐フリーが多いが、机を並べて働いているのに条件がかなり違い、人間関係もギスギスしがちだ」と語った。

 イラストレーターで出版ネッツの広浜綾子さんは、「料金があまりに安く契約書も交わされない。個人の実力だけではどうにもならない」。映像ディレクターの西野保さんは「技術の進歩は諸刃の剣だ。業務の垣根がなくなり、一人で何でもやらされるのに正当な対価はもらえない」と現状を明かした。

 それを受け、東京大学准教授の林香里さん(マスメディア・ジャーナリズム論)は、「個人の実力だけでは無理というのは確かにそうだ。ドイツではこうした状況は、『文化領域における構造的貧困』と呼ばれる。メディア企業がうまく搾取する仕組みができている」と話した。  「ワーキングプア問題の本を出している会社がワーキングプアをつくっている」「最年少の過労死は新聞奨学生だ」など、参加者からも、経験に根ざした切実な発言が続いた。

 では、どうすればいいのか。
元読売新聞記者の山口正紀さんは「記者のスキルと労働条件は表裏一体だ」と組合の課題にふれ、西野さんは「働く者の倫理と誇り、生存権をかけ横の連帯をつくりたい」。広浜さんは出版ネッツでの下請法活用の取り組みを、網谷さんは、常駐フリーの正社員化に道筋をつけた運動の成果を紹介する。

 林さんは締めくくりに、「コミュニケーションしなければ連帯は始まらない。内部ではもちろん、何とか突破口を見つけ、社会でテーマにしていこう」と提起。

「何かここからできるんじゃないか」。シンポの最後に松元さんが言ったように、次につながる予感を分かち合う場となった。

(報告=北 健一)

*問い合わせ先 出版ネッツ e-mail nets@jca.apc.org


Created by staff01. Last modified on 2008-06-19 01:05:06 Copyright: Default

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