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新幹線長崎ルート、並行在来線存続で決着
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特急たから@安全問題研究会です。

新幹線が開通するたびに、第三セクター化で切り捨てられてきた並行在来線。
その根拠は、1996年に合意された「整備新幹線の取扱いについて」(政府与党合意)という1枚の紙切れですが、法律にさえ何の根拠もないまま、10年以上もまかり通ってきた並行在来線切り捨てを、ついに、疲弊する地方の怒りが粉砕しました。

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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071217-00000049-jij-pol より

新幹線長崎ルート着工へ=並行在来線、JR運行で合意−JR九州、佐賀・長崎両県
12月17日13時1分配信 時事通信

 佐賀、長崎両県とJR九州の3者が、九州新幹線長崎ルートの並行在来線の運行を引き続き同社が担う方向で基本合意したことが17日、明らかになった。これまで並行在来線のJRからの経営分離に地元自治体が反対し、同ルートは着工できなかったが、これで反対理由がなくなり、着工に向け動きだすことになる。同日午後、正式発表する。

 並行在来線のJR運行は例外的な措置であり、合意が正式に交わされ次第、国交省は財務、総務両省や与党などと新幹線着工に向けた協議に入る。

 古川康佐賀県知事ら3者の代表が同日午前、国土交通省を訪れ、大口清一鉄道局長に合意について報告。合意内容は、新幹線開業後に並行在来線となる長崎本線の一部区間について(1)線路など鉄道設備を両県が保有し、同社は運行を担う「上下分離方式」とする(2)赤字が出た場合、両県が県内区間の距離に応じて負担する−などとみられる。
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新幹線長崎ルートの建設申請が出された2002年以来、最も強硬に反対してきたのが、長崎本線の通行ルートでありながら、九州新幹線長崎ルートから外れる佐賀県鹿島市。
2004年の政府・与党申し合わせで、並行在来線の第三セクター化(=切り捨て)が地元自治体の同意事項とされたのを機会に、鹿島市が中心となって組織する「JR長崎本線存続期成会」が、並行在来線切り捨て案に「不同意」を表明し、その撤回を求めて闘ってきました。

そして、とうとうこの日、JR九州側が折れる形で並行在来線の存続が決まりました。新幹線が開通するたびに切り捨てられてきた地方の怒りが切り捨てを粉砕した形です。

とはいえ、2005年9月のJR九州と地元自治体との協議で、JR九州が「分離後に線路などの設備は無償譲渡する。他地区では、整備新幹線による並行在来線はすべて有償譲渡。われわれとしては思い切った提案だ。並行在来線をJR九州が経営し続けた場合は年間18億円、運行だけを担当する場合でも同3億6000万円の赤字が出る」として、経営分離への理解を求めたのに対し、「新幹線で年間45億円の利益が出るというなら、なぜその利益で並行在来線も支援しないのか」(百武豊・太良町長)と追及していたことを考えると、赤字補填を約束させられたことは地元にとって後退と言えます。

ただ、JR線としての存続が決まったことにより、第三セクター移行後の運賃大幅値上げという、地元にとって最悪の形を回避できたことは大きな勝利であると評価すべきものです。
線路保有以外の全てがJR九州の手に残されることにより、現行運賃維持ができるのみならず、JR線としての一律運賃・遠距離逓減制(遠距離になればなるほど1キロメートルあたり賃率が安くなる)のメリットを今まで通り受けられるのも大きいと思います。

九州新幹線長崎ルートはスーパー特急方式(在来線と同じ1067mm軌間を使用)での建設であり、博多〜武雄温泉間は現行在来線を利用する形となるため、長崎本線がJR線として残れば、一部列車を在来線経由とするなど、地元に配慮した運行体制を取ることもできるものと思われます。

このように考えると、JR線として在来線が残ることのメリットは大きいものがあり、一方、紙切れ1枚で並行在来線を切り捨ててきた過去の鉄道政策がいかに罪深いものであるかを改めて認識させてくれます。


<参考資料>「整備新幹線の取扱いについて」(政府与党合意)
http://www.mlit.go.jp/tetudo/shinkansen/shinkansen6_kanren.html#moushi16

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