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一橋出版=マイスタッフ争議で400人のデモ
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 11月9日、一橋出版を400人のデモが取り囲んだ。一橋出版が偽装派遣の末に解雇した編集者・加藤園子さんの争議解決をめざす行動である。一橋出版は荻窪の閑静な住宅地にあり、デモは近所の人たちの注目を集めた。

 加藤園子さんの解雇撤回をもとめる一橋出版=マイスタッフ争議は、派遣労働者が派遣先企業の雇用責任を問うた先駆的事例だ。一橋出版は教科書会社で、 派遣会社のマイスタッフは同社の事実上の子会社である。もともと一橋出版経営は組合に対しこれまでもさまざま組合差別を行ってきた。それに対して一橋出版労組は闘い争議解決を勝ち取ってきた。それに対して一橋経営は直接雇用ではなく、「派遣」という形をとった。

 加藤さんは、書類上はマイスタッフに雇われ一橋出版に派遣されたことになっていたが、一橋出版が事前面接で採用を決め、契約更新や給与も決めていた。 またマイスタッフが一橋出版から受け取る派遣料は加藤さんら「派遣」の給与とほぼ同額であり、一橋出版との関係ではマイスタッフには派遣業の実態がな かった。加藤さんの雇用形態は、形だけ派遣会社をかませることで雇用責任を回避する偽装派遣だったと考えられる。

 2003年5月、一橋出版=マイスタッフから解雇(雇い止め)された加藤さんは、正社員で構成される一橋出版労組と同じ産別組織の出版労連・出版情報関連ユニオンに加盟し、正社員組合とともに解雇撤回に立ち上がる。

 地位確認を求める裁判は東京地裁、高裁、最高裁ともに敗訴したが、格差と貧困が社会問題化する中、支援の輪は広がった。それに対して一橋出版が、話し合いの求めに固く門扉を閉ざすという不誠実な態度を続けたため、この日のデモとなった。

 スト権を行使して駆け付けた出版労連組合員らは、一橋出版=マイスタッフ争議支援共闘会議の嵯峨仁朗議長(新聞労連委員長)からの「司法が正しい判断 をできないなら、われわれの運動で解決しよう。デモの足音で、一橋出版経営者の目を覚まさせよう」という熱いアピールを受けて、夕闇のなかを出発。一橋出版前では、「一橋出版は団体交渉に応じろ」とひときわ大きいシュプレヒコールがあがった。

 デモには出版、放送などで働くフリーランスや非正規の人たちの姿も目立った。沿道とは対照的にひっそりと静まり返った一橋出版の社屋には明かりが灯り、社員の話では「経営者はいないが、労担はいるのでは」。

 加藤さんは、「きょうは遠い中お集まりいただき本当にありがとうございました。みなさんのお力を借りて、職場に戻りたいと思います」と参加者をねぎらった。

 ハケンだろうが正社員だろうが、人を使い捨てていいはずがない。この春、一橋出版は派遣で働いていた3人を直接雇用した。加藤さんが組合に入りもの申したから雇用しないなら、明らかな不当労働行為だ。

 この争議が問うてきた「派遣先企業の責任」は、労働団体と野党が連携してめざす派遣法改正でも一つの焦点になろうとしている。(出版ネッツ・北健一)


Created by staff01. Last modified on 2007-11-10 23:17:04 Copyright: Default

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