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広島平和宣言〜市民の力で変えられる時代
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大地実です。

8月6日は、広島原爆投下62年目の日です。
8月9日は、長崎原爆投下62年目の日です。

8月15日は、敗戦62年目の日です。 ※日本に侵略された諸国では、解放記念日や光復節となってい ることにも留意し、想いを馳せましょう。

暑い日差しの中で汗をかきながら、空を眺めての想いと オフィスや家でエアコンを入れ涼みながらの想いでは…

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広島平和宣言 '07/08/06

 運命の夏、八時十五分。朝凪(あさなぎ)を破るB―29の 爆音。青空に開く「落下傘」。そして閃光(せんこう)、轟音 (ごうおん)―静寂―阿鼻(あび)叫喚。

 落下傘を見た少女たちの眼は焼かれ顔は爛(ただ)れ、助け を求める人々の皮膚は爪(つめ)から垂れ下がり、髪は天を衝 (つ)き、衣服は原形を止(とど)めぬほどでした。爆風によ り潰(つぶ)れた家の下敷(したじき)になり焼け死んだ人、 目の玉や内臓まで飛び出し息絶えた人―辛うじて生き永らえた 人々も、死者を羨(うらや)むほどの「地獄」でした。

 十四万人もの方々が年内に亡くなり、死を免れた人々もその 後、白血病、甲状腺癌(がん)等、様々(さまざま)な疾病に 襲われ、今なお苦しんでいます。

 それだけではありません。ケロイドを疎まれ、仕事や結婚で 差別され、深い心の傷はなおのこと理解されず、悩み苦しみ、 生きる意味を問う日々が続きました。

 しかし、その中から生(うま)れたメッセージは、現在も人 類の行く手を照らす一筋の光です。「こんな思いは他の誰にも させてはならぬ」と、忘れてしまいたい体験を語り続け、三度 目の核兵器使用を防いだ被爆者の功績を未来永劫(えいごう) 忘れてはなりません。

 こうした被爆者の努力にもかかわらず、核即応態勢はそのま まに膨大な量の核兵器が備蓄・配備され、核拡散も加速する等 、人類は今なお滅亡の危機に瀕(ひん)しています。時代に遅 れた少数の指導者たちが、未(いま)だに、力の支配を奉ずる 二十世紀前半の世界観にしがみつき、地球規模の民主主義を否 定するだけでなく、被爆の実相や被爆者のメッセージに背を向 けているからです。

 しかし二十一世紀は、市民の力で問題を解決できる時代です 。かつての植民地は独立し、民主的な政治が世界に定着しまし た。さらに人類は、歴史からの教訓を汲(く)んで、非戦闘員 への攻撃や非人道的兵器の使用を禁ずる国際ルールを築き、国 連を国際紛争解決の手段として育ててきました。そして今や、 市民と共(とも)に歩み、悲しみや痛みを共有してきた都市が 立ち上がり、人類の叡智(えいち)を基に、市民の声で国際政 治を動かそうとしています。

 世界の千六百九十八都市が加盟する平和市長会議は、「戦争 で最大の被害を受けるのは都市だ」という事実を元に、二〇二 〇年までの核兵器廃絶を目指して積極的に活動しています。

 我(わ)がヒロシマは、全米百一都市での原爆展開催や世界 の大学での「広島・長崎講座」普及など、被爆体験を世界と共 有するための努力を続けています。アメリカの市長たちは「都 市を攻撃目標にするな」プロジェクトの先頭に立ち、チェコの 市長たちはミサイル防衛に反対しています。ゲルニカ市長は国 際政治への倫理の再登場を呼び掛け、イーペル市長は平和市長 会議の国際事務局を提供し、ベルギーの市長たちが資金を集め る等、世界中の市長たちが市民と共に先導的な取組(とりくみ )を展開しています。今年十月には、地球人口の過半数を擁す る自治体組織、「都市・自治体連合」総会で、私たちは、人類 の意志として核兵器廃絶を呼び掛けます。

 唯一の被爆国である日本国政府には、まず謙虚に被爆の実相 と被爆者の哲学を学び、それを世界に広める責任があります。 同時に、国際法により核兵器廃絶のため誠実に努力する義務を 負う日本国政府は、世界に誇るべき平和憲法をあるがままに遵 守(じゅんしゅ)し、米国の時代遅れで誤った政策にははっき り「ノー」と言うべきです。また、「黒い雨降雨地域」や海外 の被爆者も含め、平均年齢が七十四歳を超えた被爆者の実態に 即した温かい援護策の充実を求めます。

 被爆六十二周年の今日、私たちは原爆犠牲者、そして核兵器 廃絶の道半ばで凶弾に倒れた伊藤前長崎市長の御霊(みたま) に心から哀悼の誠を捧(ささ)げ、核兵器のない地球を未来の 世代に残すため行動することをここに誓います。

          二〇〇七年(平成十九年)八月六日                                  広島市長 秋葉忠利


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