レイバーフェスタ2006〜日本の現実と向き合う文化運動 | |
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報告と写真=清水直子 ↓総合司会 小松さんと松浦さん 映像や音楽を通じて、身近な労働や生活を見つめ直す労働者のお祭り、レイバーフェスタが12月17日、東京ウィメンズプラザで行われ、181人が参加した。 5回目の今年は、午前の部で、ドキュメンタリー映画『出草之歌』(井上修監督 同サイト)を上映。第二次世界大戦下、日本軍に動員された先祖の霊を靖国神社に祀らないよう裁判で争っている、台湾の原住民の闘いを追った作品だ。立法委員(台湾の国会議員)でもある高金素梅さんの毅然とした姿と、映像中に登場する伝統的な歌声が印象深い。 実行委員長でレイバーネット日本代表の伊藤彰信さんは、「これまでは、グローバリゼーション、規制緩和などをテーマにフェスタを作ってきたが、教育基本法が変えられ、憲法が変えられようとしている今年は、アジアに目を向けようと『出草之歌』を上映した。広く世界から自分たちの問題を問い直したかった」と話す。 午後からの音楽の部では、国会前など運動の現場で歌っているヨッシーとジュゴンの家(上写真・同サイト)の3人が、「ファシスト安倍政権を倒そう」などを披露。音楽批評家集団、DeMusik Inter. (デムジーク インター 同サイト)の大熊ワタルさんと二木信さんによるレイバーソングDJでは、昨年に続いて労働運動歌を再生させるべく注目曲を紹介。 大熊ワタルさんは、「アスファルトの下には宝物が埋まってる」と歌うおーまきちまき(同サイト)の「アスファルトをほりかえせ」(『月をみてる』)やイタリア・ナポリのサックス奏者、ダニエル・セペの「Bush e bugiardo(ブッシュは嘘つき)」(『Una banda di pezzenti』)を、二木信さんは、大阪・西成の町を歩くと見える風景をブラックユーモアで表現したSHINGO☆西成(同サイト)の「ゲットーの歌です(こんなんどうDeath?)feat.Vivi」を聴かせた。 さらに、「ノレの会」と韓国山本労組による歌とユルトン(律動)に続き、70年代の国鉄闘争で歌われた「闘いはいつも」が紹介され、会場の参加者と歌った。 映像紹介の部では、特別上映として『すべて消えろ』(フランス作品・ジャン=マルク・ムトゥ監督)と『労働者は奴隷か!〜住友大阪セメント残酷物語』(全日建運輸連帯労組制作)を上映。前者は、日本初公開でフランスの日雇い労働者の実態を描いた作品だ。半日雇いの細切れ労働で、弱い者を追い詰めるための仕事をさせられるのがやりきれない。 後者は、住友大阪セメントの下請け会社でセメントを運ぶトラック運転手が直面している過酷な現実を追ったもの。歩合給で月550時間働かされ、会社に異議を唱え労働組合に加入したところ、会社は暴力的な「会社関係者」を雇って労組脱退を強要し、入院に追い込む。撮影・編集した土屋トカチさん(写真下)は、「規制緩和により長時間労働が強いられているのはトラック業界だけではない。厚労省の労働政策審議会で話し合われている過労死促進法=日本版エグゼンプション(同サイト)ができて、残業代を払わない世の中になったら、労働者はさらに働き過ぎで殺されてしまう」と語った。 続いて3分間の自主制作ビデオ22本を一挙公開。フリーター全般労組(同サイト)などが呼びかけ逮捕者の出た「自由と生存のメーデー06」(同サイト)の反撃デモ(同サイト)を収録した『やられたままでは黙っていない』(小林アツシ)、業務請負会社の派遣労働者たちが、派遣、偽装請負、期間工の全国的な連帯を呼びかける『ガテン系連帯登場』(下写真・ガテン系連帯 同サイト)など、不安定雇用の若者の声を伝える作品が目立つ。 出演者や展示協力者が独断と趣味で選ぶ賞も贈呈された。井上修監督の『出草之歌』賞は、『場所を空けろ!』(都庁行動を闘う全野宿労働者実行委員会 同サイト)。都が2004年のホームレス地域生活以降支援事業の実施以降、対策を根拠に野宿者を公園から排除していることに抗議してハンストを開始する様子を記録したもの。もとは警察の弾圧対策の映像で、「これを撮ろうと狙って撮っていない、私の好きなドキュメンタリーのスタイル」(井上監督)。 ヨッシーとジュゴンの家賞は、会社で「当たり前」として押し通される不払い残業を「おかしい」とユニオンに相談し、交渉によって職場を変えるシミュレーション『ユニオンがあればこうなる』(均等待遇アクション21)。ムキンポ(同サイト)賞は、『場所を空けろ!』と自らのアルバイト経験を淡々と語って収録し、「これなら自分にも作れるのではないか」と参加者に思わせ来年の応募作品増に貢献したであろう『プレカリアートな日々』(攝津正)に贈られた。 韓国山本賞は、「闘いの状況が似ている」として『京ガス闘争100日』(但馬けい子・遠藤礼子)に。韓国山本の労働者は、韓国・馬山の株式会社韓国山本(同サイト)の工場閉鎖で解雇され、社長が行方不明になるなか170日にわたって工場を占拠し、本社の株式会社山本製作所(東京都板橋区清水町)に交渉を求めている。フェスタ実行委員賞は、今年3月に公立小学校を退職し「教育基本法改悪に反対する国会前の闘いを毎日映像で伝えた」(同サイト)作者の『学校を辞めます〜51歳の僕の選択』(湯本雅典)だった。 伊藤彰信さんは、7時間にわたるフェスタを「日本政府は、国家に国民は従え、資本家に労働者は従えという社会を作ろうとしている。労働契約法制や労働基準法の改正をはじめとする労働ビッグバンは、資本の論理だけで人間を商品としてみなす社会を作ること。私たちは、それに対して一人ひとりの命、生活、人生、生き方が大切だという声を挙げていかなければならない。今年は、偽装請負などの現場で苦しむ人が声を挙げ始めた。そういう人たちの文化をこれからも歌と映像で作っていきたい」と締めくくった。 来年のフェスタはどんなふうに振り返られるのだろう。私は、ストライキで電車が止まったという記憶がないまま大人になった。ストライキをしてまで世のため人のために闘う人がいることを肌身で感じる経験を来年はしてみたい。自分の給料を下げてでも、安すぎる非正規雇用の女性や若者の給料や待遇を上げようとする正規雇用労働者に出会いたい。声を挙げ始めた人もきっと元気づけられるに違いない。 Created by staff01. Last modified on 2006-12-19 01:30:45 Copyright: Default |